「無常の人生と不変の人間の本性、性格」PERFECT DAYS みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)
無常の人生と不変の人間の本性、性格
カンヌ映画祭で役所広司が主演男優賞を受賞した作品なので2024年映画鑑賞初めとして鑑賞した。トイレ清掃員としてルーティン化された清貧生活を送る主人公の姿を通して、人生の無常と人間の不変性を浮き彫りにした秀作だった。
台詞を極力減らすことで、ドキュメンタリーのような、主人公の日常を切り取った雰囲気を出している。台詞の密度が高く意味深で人生訓のように心に響く。
本作の主人公は平山(役所広司)。彼は、東京でトイレ清掃員として寡黙で規則正しい毎日を過ごしていた。通勤時に車の中でお気に入りの音楽を聴き、常時携帯しているカメラで木漏れ日を取り、休日に買った古本を読み、馴染みのスナックでママ(石川さゆり)と何気ない会話を交わし、彼の毎日は小さな喜びに満たされていた・・・。
平山は過去を捨てて清貧生活を始めた。彼の過去は謎だが、姪と、母親=平山の妹の登場&台詞で、かなり裕福な環境にいたこと、父親と確執があったことが推察できる。経済的環境の激変は精神的にかなり厳しい。しかし、冒頭から平山の表情に気負い悲壮感はない。自然体であり開放感がある。父親との確執の壮絶さを物語っている。
故に彼は父親の件を踏まえ、濃密な人間関係を避け寡黙になる。最小限の人間と最小限の会話を交わし最小限の人間関係を作り人間関係の長所を捨て短所を消そうとする。暫くの間、この彼の思惑は成功し細やかながら満たされていく。
しかし、親族の登場で小波が起こる。そして、相棒の若手社員(柄本時生)の突然退社、スナックのママの元夫・友山(三浦友和)の登場で、平山の思惑、頑なに守ってきたルーティンは崩れる。
“結局、変わんないですよね”という友山の台詞が心に強く残る。人生は無常だが、人間の本性、性格は変わらない。人間は無常の人生を変わらぬ性格で生きていく。その辛さをラストシーンで役所広司が泣き笑いだけで表現している。
本作はフィクションだが、平山の人生の好転を祈らずにはいられない名演技だった。
こんばんは。メッセージ本当にありがとうございます。こちらのコメント欄にお返事させていただきます。
自分で応募しておきながら自分で驚いて、それならみかずきさんはじめ、他にもいいレビューいっぱいあるのに!などと思っていたところです。
メッセージをくださったみかずきさんのお気持ちがとても嬉しいです。
今後も、映画の楽しさをゆるく共有していきましょう。
フォローありがとうございます。
私の方からもフォローさせて頂きます。
私、10年位前から、キネマ旬報、kinenote、Yahoo検索などに映画レビューを投稿しています。現在の目標は二回目のキネマ旬報掲載です。
宜しくお願い」します。
ー以上ー
みかずきさん、共感ありがとうございます。
平山=役所広司は、「変わらない」と言う三浦友和に対して「変わらないはずはない」と言いますよね。
だから平山は変われることを信じている男だと思いました。
でも、自分自身は、妹から父親に会いに行けと言われて拒否しましたね。
人は変わろうと思えば変われる、だけど変わらない選択もある…という思いなのでしょうか。
それとも、やはり変われないと彼も思っているのでしょうか、自分みたいに。
どちらにしろ、彼は過去の因縁とは決別しても、決して世の中とは決別していません。
これからも、他人とは適度な距離感で関わり続け、ときに深い人生訓をサラリと与えてやったりするのでしょうね。
みかずきさん
はじめまして♪
私もの拙いレビューに共感頂き、ありがとうございます。その後時間が空いてしまって失礼しました汗
平山さんは、深い苦しみに満ちた過去を断ち切って、あの平穏な毎日を作り出したのですよね、、、みかずきさんのおっしゃるとおり、壮絶な過去を経ても、苦しみに沈んでしまわずに日々を大切に生きる平山さんは、開放感に満ちていて、私もまた今後の幸せを祈る気持ちです^_^
おはようございます。
みかずきさんがおっしゃる無常の人生を変わらぬ性格で生きていくという言葉を反芻しながら、自分自身や父や母のことにあてはめ頷いています。
そして時間ができるたびみなさんのレビューを繰り返し読み、平山さんのことを考えています。穏やかな空気の作品の中にあるそれだけの影響力を改めて思います。
みかずきさん
コメントありがとうございます。
しみじみといい映画でしたね。
でも最近、自分の生活を見直してみたら
内容は違えど、同じ様にルーティーンをこなす
私の生活もかなり平山さんに近い気がしました。
みかずきさんコメントありがとうございます
無常の人生を変わらぬ性格で生きていく、それが辛いことなのか、それでしか生きられないのか
あの泣き笑いの意味を鑑賞後に度々思い出して考えてしまいます
みかずきさん、お久しぶりです。
悶です。コメントいただき、嬉しく思っています。
興味深く、読ませていただきました。
コメントを読んでいて、ちょっと自分のレビューが説明不足と感じたので、補足します。
私生活、仕事、人間関係。多くの方はそのすべてについて、毎日充実させることを、理想的な生活と考えるだろうと思われます。だから、「こんなふうに生きていけたなら」というキャッチフレーズがついているのでしょう。
でも、それを実現するなら、24時間しかない一日の中に、バランス良く配置するしかないです。
それがうまくいくとき、そこに「心の平安=パーフェクトな日々」が実現できるだろう。
私のレビューの表題はそのような意味で掲げました。
でも、このバランスを保つことがいかに困難かということは、みかずきさんがご指摘のとおり。
人間関係は、自分だけのペースでは進められない。
仕事も同じで、同僚が突然辞めたりすると、バランスは崩れる。
バランスが崩れれば、その日の自分の私生活での時間は削られてしまう。
それでは、そうしたバランスの取れた日々を、人は諦めるしかないのか。
そんな思いを込めて、平山の生き方を「豊かな人生を歩むためのヒント」と書きました。
「ヒント」なので、平山に共感したのなら、同じような生き方を選ぶことも出来るし、違う人生があると判断したなら、別の生き方を選ぶことも可能です。
>このままならぬ人間関係と上手に向き合わうことが大切だと感じました。そうなれば、DAYSはLIFEになるのだと思います。
この映画が示す、人生の選択肢として、重く受け止めました。
パーフェクト・デイズならぬ、パーフェクト・ライフとなるように、自分の人生について考えを巡らせていきたいと思いました。
今年も、共感作でお会いしましょう。
新年のご挨拶に代えて。
それでは、また。
みかずきさん、フォローとコメントありがとうございます。ご指摘の通り、LIFEでなくDAYSというところが、揺らぐ木漏れ日の陰が、重なったり離れたりするように、その時々のうつろいに目を向けた描き方とつながりますね。
これからもよろしくお願いします。
みかずきさん、丁寧なコメントありがとうございます。
想像力を掻き立てる平山さんの半生ですね。これも役所広司さんの演技が深く豊かな御かげと思います。ヴェンダース監督は平山のモデルの一人として30代に禅に傾倒したレナード・コーエンというシンガーソングライターを挙げていますね。肉体的には俗世間に居ても、平山さんは精神的には出家した僧侶のような規則正しい生活をしています。その曖昧さと不思議さが、役所広司さんによって不思議な魅力ある男性に表現されていると思います。それと老いた私も、若い頃の後悔の記憶が時々夢に出てくるようになりました。今では何の思い残しも無いと割り切っていたつもりですが、歳を重ね衰えるとこうなるんですね。あの木漏れ日の夢の中に平山さんも後悔の記憶が再生されている様に感じました。イングマル・ベルイマンの「野いちご」では、もっと怖い夢が出てきますが、この作品の夢のショットは不可解でも美しい。
みかずきさん、明けましておめでとうございます。共感&コメントありがとうございます。私も本作が本年1本目でした。
これだけセリフを削ぎ落とした映画も珍しいけど、役所広司の演技が全て物語っていて、素晴らしかったと思います。
人生は無常だが、本性は変わらない。
何気に鋭いひとことですね。私は孤高という言葉に、漠然とした憧れがあるのですが、現代社会では無理があります。昔はある種の達観を得た人にも遠からず死が訪れました。寿命が伸びた現代では体力的、認知的に〝孤高〟が保てなくなっても、なかなか死ねない。平山だって体力的に弱ってしまえば父親(家族)の財力に頼らざるを得なくなる。自分でコントロールできない無常の時間を覚悟しなければならない現代では、孤高を維持するにも時間的限界があるのですよね。
ご挨拶が遅れてすみません。
どうか本年も宜しくお願い致します。
みかずきさんのレビューを読ませていただき、
とても心の整理がつきました。平山は、日々の小さな喜びに満たされている。しかしそれは過去の苦しみや人間関係の確執を忘れる方法でもある。
このあたり耳が痛いです。
人間の本性、性格は変わらない。
分かります。
捻くれた人は捻くれたままですね。
でも平山には、優しさが溢れていますね。
人生の敗者かも知れないけれど、
でも社会的成功なんか、虚しいものですよ。
役所さんが本当に素晴らしく、日本人スタッフに
ここまで愛されるヴィム・ヴェンダース監督。
2人ともいい仕事をしたと思います。
ありがとうございました。
みかずきさん
コメントありがとうございました!
洋楽は聞きますが、この映画で使われている曲は一世代は上です。幸い多少英語が聞き取れるので、ニーナシモンも鑑賞後に歌詞からネット検索しましたw
父親(実家)との関係を示唆するものが一つあって、パトリシア・ハイスミスの「11の物語」の中にある「すっぽん」でした。ニコは家に連れ戻されるとき、母親を刺してしまう「ヴィクターみたいになっちゃうかも」と言い残します。この件、彼と父親との関係を示唆している様でもあり。その後、古本屋で同じ本を買うところから、実は彼は読んでいなかったんじゃないかとも思えます。いずれにしても、彼の夢の件も含め、不描写の具合が心地良くって好きです!
みかずきさん 共感コメントありがとうございます( * ॑꒳ ॑*)⸝
ラストの役所さんの泣き笑い、ものすごく深いなぁと思いました。
役所さんの表情だけで、こんなにも自分自身の思いが巡らされるとは、すごいとしか言いようがないと感じました。
コメントありがとうございます。
平山の今は、何かを捨て、何かを諦めた先の生活なのだと感じました。
人との接し方や子供を見つめる視線からも、人嫌いとは思えない。
最後の表情も、三浦友和に父を重ねたからかもしれず、決して憎しみだけの関係ではないのでしょう。
“日々”だけでなく、いつか“人生”ごと肯定できるようになりたいものです。
コメントありがとうございます。
平山はただ呑気にあの生活に満足しているわけではなくて、小さい発見やルーティンによって自分の心を必死に守っているようにも見えました。だから、タカシが突然辞めてルーティンを崩されたことで唐突にも見えるあの剣幕だったのかなあと。
平山の苦悩と、それに抗うような笑顔が交錯するラストは見事でした。
コメントありがとうございます。
自分に置き換えても、今後起こりそうな事が容易に想像出来ますね。あのAPの取り壊しとか、体調の問題、父の死に伴う相続問題とか・・そう考えると平山はふわふわとした感覚の中で暮らしていたのかもしれません。
みかずきさん、今晩は。
拙い私のレビューに共感して頂きまして、ありがとうございます。
このサイトは、みかずきさをはじめ、素晴らしい、映画愛に満ちた方々が多く、私は拙いながらも、たまにちょっと顔を出す程度です。
鑑賞していないものに共感タグは押せないですが、今後、みかずきさんのレビューを楽しみに拝見致します。
こんにちは。無事にご覧になられたようで!安心しました。
〉人間関係の長所を捨て短所を消す。。
とても衝撃的な一文でした!
痺れました!
私は本来出不精で、1人でいるのが好きなので、時間を全部自分のために使える平山さんが羨ましく思う反面、生きていく上で他者と関わらず生きる事は無理な訳で。。
生きていくって、奥深いですね。