「星はいつも三つです。」メイ・ディセンバー ゆれる真実 フェルマーさんの映画レビュー(感想・評価)
星はいつも三つです。
タイトルの「メイ・ディセンバー」とは「ものすごく年の離れたカップル」のことだそうです。
36歳の女性ジュリアン・ムーアが13歳の少年と関係し出産するという、実際にあった話をもとにした作品。20年後、その女性を主人公にした物語を映画化するというので役作りのために取材に訪れた女優ナタリー・ポートマンが、周囲の人々に話を聞いていく。
二大女優が共演するときのお約束で髪の色も対照的です。
当時36歳だった女性ももう還暦近くなっている。少年と夫婦になり穏やかで楽しい暮らしをしているように見える。ホームパーティーの準備の最中に女優が訪れるところから始まるのだが、さりげないところで怖い。
冷蔵庫の食材を確かめ「ホットドックがない」と呟く女性。腕をあらわにした服装で、ぶよっとした二の腕や口元によった皺が容赦なく映しだされる。
わざとざらつかせたような粒子の粗い画面から目が離せない。女性の生活がこの画面のようにざらついているのではないかと思わされます。
ベルイマンの作品を思わせるようなN・ポートマンとJ・ムーアの正面からの2ショットが何度も登場する。鏡まで使われ、ふたりの関係が濃厚に示唆されます。
冒頭から登場する希少種の蝶は幼虫からサナギを経て孵化していく。
当時少年だった夫はこっそりとSNSで、今の生活から逃げ出したいと見知らぬ女性に訴えたりする。
情事が行われたペ
ットショップの倉庫を訪れた女優は、ためしに「エア情事」をしてみる。女優は苦笑いをするが、取材を進めるうちに余裕はなくなっていく。女性とその周辺に息苦しいほどに絡めとられていく。
映画の撮影が始まる。
「真実などというものはなく、ただそこにあるだけがすべてだ」とでもいうかのように、カメラの前でドラマを演じていく女優。
ワンカットずつ語っていきたくなる上質な映画。
一点、この映画は音楽の使い方がトリッキーで、その点も高く評価されていますが、私には音楽が過多に感じられました。