「ローマ教皇を市民が平気で攻撃できる空気感にビックリした。」エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命 60代の男ですさんの映画レビュー(感想・評価)
ローマ教皇を市民が平気で攻撃できる空気感にビックリした。
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(60代男です)
僕には宗教の無意味さを描いたものに見えた。
主人公は6歳の時の拉致さえなければ、両親の教え通りユダヤ教を信じていたはずだ。
それがバチカンで育てられたから、キリスト教徒になった。
もしチベットで育てられれば? バグダッドで育てられれば?
つまりそれは、周囲の人間による洗脳にすぎない。
誰に洗脳されたかの違いによって、対立し、憎み合う。
どうしてそれが人間にとって大切なことだ、などと思う人がいるのだろう?
本作は社会派の問題作だが、作者は娯楽作品の作り手なのがいい。
ただリアルなだけの退屈な作品にはなっていない。
演技も演出も、娯楽映画として面白く観れるように作られているのが長所。
無駄なセリフもなく、非常に分かりやすい。
ただ、終盤で、教皇の遺体が運ばれるのを市民が襲撃するという場面で、必死に遺体を守ろうとしていた主人公が、なぜか途中から一転し、市民と一緒になって、こんな教皇の死体は川に捨てろとわめき始める、その心変わりの理由がまったく分からなかった。
しかもそこでキリスト教と決別したのかと思いきや、そのあとも敬虔なキリスト教徒のままだったので、なおさら分からない。
こんなに娯楽的に作られた作品なのに、その点を分かるようにしてくれていないことだけが、僕には不満。
主人公の少年エネア・サラが異常にかわいいのも引き込まれて観れる重要な要因だった。
それと、本作ほど、ローマ教皇を普通の俗っぽい人間として描写した作品は初めて見た。実在した人なのに、カトリックから抗議されないのかな。
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