「信仰心は親子の繋がりよりも強い」エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命 らんさんの映画レビュー(感想・評価)
信仰心は親子の繋がりよりも強い
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厳粛な信仰心や、日常の祈りや感謝、教会の空気。
そういうものが随所に散りばめられて、と言うかむしろ、ほぼ全編がユダヤ教とカトリックの信仰に基づいた画面で、没入感が期待以上。
特に、ユダヤ教とカトリックの祈りが同時進行するシーンは、神秘的だった。
誘拐され、「神は心の中も見ている」と教えられても、本音ではカトリックに改宗しきれないエドガルド。
カトリックへの改宗を条件に息子を返すと言われても、信仰が揺らがない母親。
この二人の葛藤が、クライマックスに向けて丁寧に描かれている。
信仰は、親子の愛情すらも上回る、という明確なメッセージが強烈だ。
一方で、地位や権力や闘争に振り回されて揺れ動く教会、教皇、父親などは、その強固な二人と対比されている。
家族や信仰について、考えさせるストーリーは素晴らしく、実際の事件が世間の耳目を集めたのも理解できる。
一方で、ユダヤ教徒が被害者という立場でカトリックにはやや批判的、という内容のため、世界の映画市場、と考えたときに、誰をターゲットに採算を狙うのか?と訝ってしまった。
少なくとも、日本で配給されたことは奇跡的だと感じた。
「一番大切なのは宗教だ」
ある時そう聞かされて依頼、特にヨーロッパや中東はそういう世界なのだろうと思っている。
キリスト教、ユダヤ教、イスラム教はもともと一つの宗教であったことを考えれば、十億単位の人がどこかで共通の価値観を分かち合っていることを、羨ましくも感じる。
自分の日常では感じることのできない、素晴らしい信仰の世界を味わえる二時間だった。
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