ポトフ 美食家と料理人のレビュー・感想・評価
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とにかく美しい調理シーンだったなぁ
小学生の頃(昭和)、給食が食べられずひとり残される辛い日々でした。そのせいか、大人になってからフレンチのコース料理は苦手意識しかなかった。フレンチはお皿の上を全部食べないと次が出てこないし(フォークとナイフを揃えれば残しても下げてくれるとは知らんかった)、食べたかどうかをギャルソンにチェックされる視線が痛くて。
そんな私でも冒頭の調理シーンには目を奪われました。最低限の指示+阿吽の呼吸、手際良い進めっぷりに「どんな料理ができるのかな」とワクワクしました。映像が美しく、小鳥やネコの鳴き声が聞こえるのもいいですね。
ドーンと大きい銅製の鍋。これって何人分?30人分くらい?と思っていたら、たったの6人分!美食家の皆さんの食べる量はすごいのね・・・。仕上げのデザート(ノルウェー風オムレツ)もワンピースの量が多いことにびっくり。なぜノルウェー?ってことより、そんなに食べられる?と思ってしまいましたよ。美味しそうでしたが。
それにしても何度もオーブンに入れたり、何度も漉したりと、フレンチは本当に手をかけて料理をしているのだと改めて感心して観ていました。
新しい料理人の面接の時、ドダンの説明が文学的かつ抽象的で美しい表現でした。それを理解してお皿に具現化できるウージェニーは天才ですね。ジュリエット・ピノシュは「ショコラ」同様に魅力的な女優で「Winterboy」も観たいです。
流麗カメラによる圧巻映像を堪能
これぞ映画です! 映画の持てる利点をフル活用、めくるめく映像体験を静逸に仕上げたトラン・アン・ユン監督は流石の名匠である事を証明した。彼のそぎ落とした流儀をわきまえた撮影監督のジョナタン・リケブールがまた圧巻です。
冒頭の30分に及ぶ調理のシーン。無理に無理を重ねたノーカットではないけれど、人物の動きに寄り添い複数の人物に次々と乗り換え追うカメラ。人物から料理へ、鍋の中まで覗き込むスムースな移動撮影。しかもカメラマンが追う事による画面ブレが一切ないのが驚愕です。多分、一挙の撮影の上で無駄な余白はカットしたのでしょう、あの調理場の中だけで30分を費やす暴挙をやってのけ、それが映画的カタルシスまで昇華しているのですから凄いとしか言いようがありません。
この方の前作を調べましたらなんとフランス版「キャメラを止めるな!」の撮影をなさっていたとか、あの地獄の撮影が本作で実を結んだと言って構わないでしょう。しかしそれにしても湯気でカメラが曇らないのも素晴らしく、食材の色彩の変化、調理の音、食器の音、外から聞こえる鳥の鳴き声までも収める。しかも19世紀末の設定で照明も最小限に絞った自然のまま。
なによりキッチンのど真ん中に鎮座する巨大なテーブル然とした何口もあるコンロ? あの分厚い鉄板の下は薪?石炭? あの全面が熱いのか丸く印のある所のみが熱くなるのか? まるで分かりません。少なくとも日本の「かまど」とは大分様相が違いますね。いずれにしましても変な例えですが、日本の部屋毎暖房に対し、欧米ではセントラルヒーティングの贅沢と一緒ですね。
対する役者さんも凄い意気込みで感服です。ジュリエット・ビノシュはもちろん、超イケメンも老けてしまったブノワ・マジメルもフランスを代表する大スター。普段はきっとあんな料理をいつも召し上がっているのでしょうが、ここでは調理する側に挑戦です。一歩間違えれば大火傷やケガのリスクを乗り越えての役者魂には感動すらしてしまいます。そしてさらに美少女が機敏に調理のサポートをする、「青いパパイヤの香り」の無垢な少女を否応なく連想させる。セリフは最小限で、総ては料理に奉仕のスタンスだからこそ成し得た領域でしょう。
お話はなんてことなく、美食家の神髄極めに尽きますが、ラストで圧巻のカメラの回転(パン)撮影により、主人公2人の結びつきに収斂させる技は素晴らしい。多分貴族の末裔なのか、大金持ちなのは確かで、領土内の菜園やら家畜を抱え、自然の恵みを最大限に活かす。まるで素材と対話するが如く。その自然の命を頂く人間の崇高なまでの探求心こそが本作のテーマでしょう。
ソースを一口味見して、その沢山の素材から調味料までも言い当てるなんざ人間業とは思えない。よく言いますよね「日本人の繊細な舌に・・」なんて言う日本人の優越感をくすぐる低能な表現。フランス人の極めもとんでもないレベルなんです、ワインやらシャンパンへの蘊蓄も日本人の理解を超えている。すなわちどんな民族でもそれぞれの味覚を有する当たり前を、受け入れリスペクトしたいものです。
食と人生の悦び
食と人生の悦び、そして喪失と回復(の予感)を美しい映像で描き切った作品だった。
冒頭のシーンから4人でまるでダンスするように料理し、映像からもゲストたちの表情からもその愉悦と官能を堪能できる。上映時間長いなと、見る前は思ったがこれならいつまでも観ていたい。
その官能はウージェニーのための食事のシーンで最高潮に。洋梨のコンポートの官能的な様といったら…(パンフで見たら「ベル・エレーヌ」という料理でした…)
まだ幼いポーリーンの美しさにも恐れ入ったが、ジュリエット・ビノシュはもう神懸かってましたね。女性の美を若さばかりに求めないフランスの面目躍如、って感じ。
あと素晴らしかったのが撮影で、現代化されていないフランスの光景はとにかく美しいし、料理や屋内のシーンは被写界深度をごく浅くして回りを美しくボカしているにも関わらず、その都度必要なところにビシッとピンが決まってて技術的にも素晴らしかった。
コレもっと宣伝して広く観て貰うべき傑作だった。お薦め。
料理は爆発💥だ‼️
洋梨とジュリエットビノッシュのオシリ
東洋思想とフランス流ガストロミが融合した奇妙な味わい
エスコフィエが38歳、というセリフが出てくるので1884年か1885年の設定ということが分かる。
清仏戦争がありベトナムがフランスに割譲された頃。ひょっとしたらトラン・アン・ユンは意図してこのセリフをはめ込んだのかもしれない。
冒頭、延々と美食家と料理人が友人たちとの午餐のための料理をするシーンが続く。スープからデザートまでコース一式が出てくる。場内ではいびきかいてる人もいたし後でロビーでそこが長いって文句を言ってる人もいたけどここは料理の個性というか思想を紹介しようとしているところなので映画の肝になりますね。ただ年代的には当然なのだけど、彼らの料理はトラディショナルなフランス料理の範疇で、バター、クリームとフォンを多用した重厚なものであることは変わりはない。新鮮な野菜をドッサリ使っているところとフォンが魚ベースであるところが魅力なのかな。
ユーラシア皇太子(これがどこの人なのかよく分からない。モンゴル人っぽいから中央ユーラシアのウズベキスタンとかトルメキスタンあたりか?)のお招きのメニューのバルザック流というか満漢全席のえげつないものに比べればモダンなんだけど。ちなみにユーラシア皇太子にポトフを供するプランは料理人が死んだので実現しません。もしやってたらちゃぶ台ひっくり返されていたかも。
美食家が最後の方で、自分の料理について、言葉で説明をします。これが調和に重きをおく東洋的な思想に彩られているようでした。最後の「料理人か妻か」っていう問いも禅問答みたいですね。
ヨーロッパでは絵とか音楽が19世紀末に東洋の影響を受けたことは確かです。でも料理までそのような流れがあったのかどうか。多分にトラン・アン・ユンの創作によるものとは思いますが。そういう意味では、この映画は「バベットの晩餐会」や「ショコラ」のようなガストロミ(食文化)系というよりは「ディーバ」とか「キッス・オブ・ドラゴン」などと同じフランスを舞台とした東洋趣味の作品だと思うのです。(長々書きましたが私は嫌いではありません)
料理は文化だ、芸術だ
妻?料理人?ポワール?
19世紀末のフランスの田舎町で女性天才料理人のウージェニーと共に暮らす美食家のドダンの話。
使用人のヴィオレタが連れてきた少女ポーリーヌの資質がなんちゃら言いながらコース料理の調理と食事の様子から始まって行くけれど、なんだか料理のシーンが長い。
その後も突然具合が悪くなりつつも料理を続けるウージェニーとか、ユーラシア皇太子の晩餐会招待とかみせていくけれど、やはり一つ一つのシーンが長かったり、そもそもこれいりますか?なシーンがあったり。
いよいよポトフまでも非常に長いし、と思っていたら、あっという間に…。
ストーリー自体は悪くないけれど全体的に長くて冗長気味だし、最後はそんな中途半端な…。
もう30分短くて良かったかな。
映画はいいが、タイトルで誤解する
寝落ち……
予備知識ほぼゼロでしたし、劇場の静けさやほんのちょっぴりの暖かさが加わったし……
言い訳ばかりになりますが、冒頭部分寝落ちしてしまいました。
その結果、時代背景や主人公二人の置かれている社会的な地位を理解できず、それなのに眼に飛び込んでくる映像は極上の美味であることをビンビンと伝えてくる。
でも、でもですよ、きっとあの二人は有り余る予算を料理にかけられているはず。だとしたら美味しくって目に麗しくって当り前じゃないの!
ウージェニーがこの世を去ってからあれだけ沈み込んでいたドダンがやる気をもたげてきたモチベーションは何だった?
なんて、自分が寝てしまって観られなかったくせにちょっとスネてみました。
フランスを舞台に、民間初のレストランを創り上げた「デリシュ!」の爽快感とは全く異なる作品ですが、ワタシの個人的好みはデリシュだなぁ。
それはそうと、コロナ以後、撮影の問題や俳優組合のストなども影響しているのか、ハリウッド作品を鑑賞する機会が減って、フランス映画やインド、中東地域のものを目にすることが増えたのは寂しい反面自分の視野が広がった気もして嬉しい事なのかもしれませんね。
さあて、来年も(まだ今年ももう少しあるけれど)映画にドキドキ・ワクワクしようっと🎵
美しく、優しい映画。
皇太子を迎えることがメインかと思った…
わたしはあなたの妻?それとも料理人?
美味しいものが分かるだけでなく、料理が作れてワインに詳しくて、言葉で表現するのに長けて、営業的政治もできる。それが美食家。
美食家と料理人の関係ってプロデューサーとディレクターに似てる。お互いをリスペクトしつつ、お互いを補完し合う。まさにパートナー。
料理シーンはワンカット、bgmの音楽もなし。料理の音と自然の音が背景として映画を引き立ててる。
美しい自然の中のお城で、探究心のままに料理を考案し、作り、食べる。そんな幸せな時間をただただ眺めていられる。
「人は持ってるものを求め続けることが幸福なんだ」
「わたしはあなたの妻?それとも料理人?」
「料理人さ」
最後の回想で流れてきたこの会話がずっと頭にこびり付いてる。パートナーとしての最高の関係を崩したくない、一方でそれを超えた関係を望む。その両方を求めたくなる相手といれることが幸せなんだろう。
物語的には、もう少しポーリーを引き立てたり、ストーリーを設けても良かったのではって思うけど
この料理の数々が観れただけで満足です。
罪作りな映画だ。観客は見ているだけで食べられない
正直な私の感想。延々と美味しい料理が作られる描写の連続で、私は2回眠ってしまった。それで、ユーラシア大陸皇太子に招待された晩餐会を見ていない。その他重要な場面があったかもしれない。しかし、人間によるドラマ部分が少なくて感動することが出来ない。この監督は描いていない部分は、想像してくださいと言っているみたいだ。まぁ、そんな作り方があってもいいと思う。わかる人はカンヌ国際映画祭で監督賞も納得だろう。だが、私みたいな凡人には理解できない。
映画ではフランス人のフランス料理に対するプライドを感じる。私は年に片手ぐらいしかフランス料理を食べる機会がない。この映画の料理を監修したピエール・ガニェールは食べたことがあり、えらい繊細な味だった。ディナー3人で料金は15万円くらいだった。
20年間も求婚しながら、何故拒み続けるのか。また、なぜ受け入れたのか。最期に美食家は妻ではなく料理人だと発言するのか。考えると面白いかもしれないが、見ているだけで美味しい料理が食べられないなんて、罪作りな映画だと思う。よって、0.5減点した。ちなみに、今日は二本の映画のハシゴで、昼食はセブン・イレブンで買ったおにぎりだ。減点は仕方がないと思う。
料理は芸術であることを教えてくれた作品
東京国際映画祭でも公開されたが、映画館で実際観ルト素晴らしかった。
料理は芸術であると教えてくれたし、フランス料理の奥深さを知った。
ストーリーも見事だし、文句なし。
来年のアカデミー賞外国語作品賞候補に入るのではと言われているが、まず候補作になる。
日本映画PERFECTDAYにとっては強敵だろう。
今年ももうすぐ終わるが、2023年ベスト映画作品候補に入れてもおかしくない作品。
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