「【”幻想を探す。”今作は墓に隠された財宝を見つける”幻想”に憑りつかれた墓泥棒達の物語であり、ダウジング能力を持つイギリス男の喪失と再生の物語である。】」墓泥棒と失われた女神 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”幻想を探す。”今作は墓に隠された財宝を見つける”幻想”に憑りつかれた墓泥棒達の物語であり、ダウジング能力を持つイギリス男の喪失と再生の物語である。】
ー アリーチェ・ロルバケス監督は「幸福なラザロ」を鑑賞して瞠目した監督である。そして、今作もどこかファンタジックでノスタルジックな作品であった。-
■英国人のアーサー(ジョシュ・オコーナー)は、地下に眠る古代エルトリア人の墓を木の枝で見つけるダウジングの能力を持っており、墓泥棒仲間から一目置かれている。
そして、彼は刑務所から出所した後、行方知れずのべニアミーナの事が忘れられず、彼女の母フローラ夫人(イザベラ・ロッセリーニ)の邸宅を訪ねる。
・・という粗筋だが、序盤は詳しくは語られないのでやや混乱するが、身を任せて鑑賞する。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・徐々に、英国人のアーサーが刑務所から出所しても浮かない顔である理由がぼんやりと分かって来る。
いづれにしても、何処かノスタルジックな雰囲気が漂う。
・アーサーは、掘立小屋の様な所に住みながら、二股に別れた木の枝を使ってダウンサイジング能力により古代エルトリア人の墓を見つけ、残された葬送品を掘り出し財宝販売で富豪になっているスパルタコ(アルバ・ロルヴァケル)に買って貰い日々を過ごすが、どの墓も暴かれたモノばかりで大した金額にはならない。
ー 子供の頃に読んだ「ツタンカーメン」の物語のカーター博士をふと思い出す。が、アーサーとその仲間は、カーター博士のように学術のために墓を掘っているのではない。-
・そして、徐々に彼が行方不明になったべニアミーナに思いを馳せている事が分かる。警察と鼬ごっこをしながら、墓を探すアーサー達。
序でに、フローラ夫人の元で下働きする”イタリア”と、アーサーとの関係が最初は良くは分からないが、”イタリア”が実は子供を二人密かに育てている事も分かって来る。
■ある晩、アーサー達は未盗掘の墓に出会い、その墓の中に会ったビーナス像の首を持ち帰る。だが、警察に通報されそのビーナス像はスパルタコの手にわたり、彼女は陽光降り注ぐ海の上のクルーザーの中でその像をオークションにかけるのだが、そこにアーサー達がやって来て、スパルタコの前でその首を海に投げ込んでしまう。何とも、寓話的だなあ。
<そして、アーサー達は再び墓を探し始め、墓を見つけるのだが最初に入ったアーサーは土砂崩れにより真っ暗になった墓の中を這い進むと、そこにスルスルと赤い紐が降りて来て陽光が差し込む穴を見上げると、アーサーとべニアミーナが楽しそうに糸を降ろしているのである。
今作は、ノスタルジックで神話性を漂わせた詩情あふれる作品なのである。
ラストのシーンの解釈は色々有るよなあ、と思いながら劇場を後にした作品でもある。>
<2024年9月1日 刈谷日劇にて観賞>