二つの季節しかない村のレビュー・感想・評価
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感動や衝撃とは一味違う不可解な人間模様に引き込まれる
かつてヌリ・ビルゲ・ジェイランの映画に魅了されてトルコを旅した経験のある筆者にとって、今回の新作はアナトリア東部の村に広がる雪景色にどっぷり身を浸しつつ、そこに立ち現れるクセの強い嫌なキャラクターに絶えず心をかき乱される3時間18分だった。面白いもので、その嫌なやつぶりが定着すると、徐々に自分の中の印象が「彼が」ではなく「人間ってやつは」に変わる。どんな場所でも、状況でも不満タラタラ。こんな人はどこにでもいるし、ある意味、私の内部にも確実に彼は存在する。そんな普遍的な写し鏡のようにすら思える状況がそこには刻まれ、主人公の身勝手さが上書きされるたび、対比的に壮絶な過去を持つヒロインの、後ろ向きではない生き様が際立っていく。決して感動や衝撃といったカタルシスではなく、それとは別次元のなんとも不思議で不可解な心模様に連れ込まれる異色作。後半でふと差し挟まれるちょっと思いがけない描写も楽しみたい。
厳しくも美しい大自然に対比させられた主人公の卑小さに魂が震える
映画のあちこちにアンバランスな二項対立が散りばめられている。自然と人間、教師と生徒、男と女、管理・監督する側とされる側、理想と現実、善と悪、個人と集団、若さと老い、夢と挫折感。そうした対立する要素が複雑にからみ合い、ストーリーに緊張感と推進力をもたらしている。
トルコの名匠と称されるヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督の直近3作品は、カンヌ国際映画祭パルムドール受賞作「雪の轍」、「読まれなかった小説」、そしてこの「二つの季節しかない村」と、いずれも3時間超の重厚なヒューマンドラマ。主要人物らによる現実的な話題や問題についての対話や論争から、「人間とは何か」「生きるとはどういうことか」といった哲学的・観念的なテーマが浮かび上がってくるのも共通点で、大長編の文芸作品を読み進めるのにも似た鑑賞体験と言える。
主人公の中年男性教師サメットは、自尊心が強くて村人を見下したようなところがあり、卑しくてずるい部分もある。ジェイラン監督は屈折したインテリの嫌なところをこれでもかと徹底して描き、観客の多くはサメットを好きになれないはずだが、隠しているつもりの自分の醜い内面を見透かされたようで、精神の深いところ、あるいは魂が震えているのではないかという気さえしてくる。本質的に近しい部分がいやおうなしに共振してしまうというか。
本編の約2時間半過ぎ、サメットとヌライの長い対話のあとで、構築された映画の世界を崩すような意表を突く演出がある。さまざまな解釈が可能な仕掛けだが、映画世界の虚構を見せることによって、自分から見えている世界に絶対的な真理はない(見えない裏側がある)ということ、言い換えるなら“主観の世界の相対性”を象徴しているではないかと個人的には感じた。
トルコ東部の、雪深い村の中。 小学校の先生や生徒たち、村のご近所さ...
トルコ東部の、雪深い村の中。
小学校の先生や生徒たち、村のご近所さん。
長い期間を雪に閉ざされて、行動半径も範囲が限定的になりがちな。
感じ方次第で、受け入れて楽しもうという人もいたり
または、閉塞や孤独を感じて、出て行きたいと言い続ける人もいたり。
景色といい人々といい、おらの郷里(日本の東北の豪雪地帯)に近い感じがします。
特に、普段みている世界の範囲の、狭さ/広さ。
良い悪いではなく、
冬は、限られた、その範囲を謳歌しよう、という人もいますし
外にあこがれる人もいますし。
慕われる先生、気に入られる生徒、もいれば
その逆もいたり。
慕われている人が、人格者とは限らなかったり。
崇高な志を持つ人が、別の事情で色眼鏡で見られていたりも。
見かた次第で、他人の印象はどうとでも変わるんだねと
気づきの場面も多数でした。
人々の会話が凄く多い映画、
意見がぶつかるのは普段当たり前にあり、それでも、険悪になることはあまりなく。
セリフの多さには、(いち鑑賞者として)体力をかなり持っていかれました。
不勉強ですいません、トルコって雪降るのね。
始まる直前に3時間!!と気付いた。
しかしそれほど長くは感じなかったよ。
田舎の教育問題、教員制度、コンプライアンス、ハラスメント的な話かと思ったらそれはどうやら表面的な事象でテーマはもう少し深い所にありそうだ。
並行して進む義足の教師と友人との三角関係とか、人との繋がり、関係の不確実さを二つの方向から描いてるって事かな?知らんけど。
トルコの田舎教師も大変だ。コンプライアンスに関しては日本なんかより進んでいるかも知れない。
ほぼトラップかよ案件、しかし力関係がはっきりしてる教師と生徒、男と女の世界だから昨今慎重にならないといけない訳だよ!という教訓として観た。
でまあ後半の方にある例の表現、するっと滑り込ませて上手い事やりやがってと思ったけど、何かの効果があったのかは疑問。「関心領域」の赤外線カメラと同じなくてもいんじゃね?という感想だった。
赤外線カメラより演劇的表現かな。
長尺だけど、個人的には良かったです❕小学校の先生三人(男2 女1)...
長尺だけど、個人的には良かったです❕小学校の先生三人(男2 女1)を中心に巻き起こる、恋愛 嫉妬 親子関係 障害者問題等々見所はかなりあった 主人公の男性教師は、ぺドフィリアちっくでありながら、足が無い大人の女性にもバイアグラ?を飲んでまで… 連帯感を嫌う孤独な自由主義者は、正に私の分身のようでもあった(共感できることが結構あった) あ、私はぺドフィリアではないけどね
有る意味一匹狼🐺的な主人公(男一人)と連帯感を感じたい二人に最後にはなってしまった 人生色々 自分の思ったとおりに生きたいな〰️
なんか、嫌な感じの男の人の話だった ライト消しに行って変な所に迷い...
なんか、嫌な感じの男の人の話だった
ライト消しに行って変な所に迷い込むシーン、
いきなりだったので、
気づかないうちに寝落ちしてたのかと思った
考えさせられる映画。一度観ただけでは理解出来ない。
予告編を見て、鑑賞したくなった。
パンフレットやシナリオを読まないと私には理解出来ない映画だった。3時間超えの上映時間なので、2回目の鑑賞は躊躇してしまう。
人間とは何か?
生きるとは何か?
世の中の不条理・理不尽にどう対処したらいいのか?
観る人に問う映画だ。
トルコが舞台でも主軸は普遍的な人生そのもの
主人公サメットは教師だからか思い込みも激しいが、この中年男の小さな心は誰しも自分や周辺に似た者を想像できる普遍的なものである。サメットとヌライの酔いながらの議論は、体制順応主義者と理想主義者のモデル的な対論でもあるが、もっと地べたの人生への諦観と希望の往復もある。クルドやテロの暗示にあるように選挙独裁の権威主義体制下にあるトルコでの対話であることを考えると、サメットの考えもただ平凡陳腐と切り捨てることもできない。トルコ映画には西欧映画にない社会のしがらみがしつこく描かれているものが多く、ちょっとアジア臭いところもある。
24-109
雪に覆われた長い冬と、
わずかな夏しかないトルコ東部の村。
大自然に比べ、
人間の暮らしや思考は実にちっぽけ。
いくら教養があり慕われている男といえど、
その姿は実に小さい。
猜疑心、虚栄心、嘘、噂、
どれもこれも取るに足らない存在のはず。
これらに飲み込まれる男が実にちっぽけ。
歴史は擦り切れた希望なんだろうか❓
65~70点ぐらい。釈然としなかったけど…
あらすじ読まずに、タイトルとポスターと、巨匠が作った映画って事、是枝監督が絶賛した事、それだけの情報で観ました。
真っ白な雪景色の中に止まる1台の車、どこへ向かうのか雪の中を歩き始める男…
このオープニングで引き込まれました。
ポスターの女の子が主役かと思ったら、この男性サメットが主役です。
とにかく、トルコ東部の自然が美しくて、それが強く印象に残ります。
この美しい村自体も、この映画の主役でしょう。
この村の住人や自然を写した写真が差し込まれる演出、激しい議論のあと入る斬新な演出、も良かった。
最後が意味深で、もしやサメットは…と思ったんだけど、ネットで調べてみると、やっぱ同じ事を思った方が他にもいました。
観たあと釈然とせずモヤモヤして消化不良、妄想だったのか?とか、とんでもない事まで考えてしまったけど、いろいろ調べてるうちに概ね理解できました。
198分の長尺ですが、体感では実際の時間ほど長く感じなかったです。
それどころか、もう1回観たい(笑)
この映画でヌライという女性を演じた事で、2023年のカンヌ国際映画祭で最優秀女優賞を獲得したメルヴェ・ディズダルが良いです。
その年の最優秀男優賞は『PERFECT DAYS』の役所広司さんですが、その縁でツーショットの写真も存在し、この2人は交流があるらしいです。
このタイトルとポスターにくすぐられる
主人公サメットの生臭い矮小さに対して
“本当はお前も似た者じゃないのか”
と、この長尺の中でずっと問いかけられているような気分にさせられる。トルコ初の女優賞を得た熱演も三角関係の機微も最後はぜーんぶ女子生徒サヴィムに持っていかれるのは、ある種、爽快で小気味よい。
チャイでも飲みましょう
サメットが教師としても人間としても嫌な奴で失笑した
豪雪か草木も枯れるような真夏の二つしか季節がない貧しい田舎の村での会話劇が面白くて夢中になって見た
ヌライとの白熱した会話の後のアレが観客の呼吸と気持ちを整える効果があって良かった
サメットを嫌な奴だと思うのと同時に自分にサメット成分が結構あると自覚しているので隠しながら生きていこうと思う
傲慢、偏見、色眼鏡
トルコ東部の辺鄙な村に赴任して4年の俺様教師の話。
一見すると生徒から慕われている様にみえるサメットが長期休暇が終わり雪の積もる村に戻ってきて始まっていく。
なんか意味があるのかな…と思わせる教師たちの朝のダベリに、からの優等生セヴィムとのやり取りになって、これといって何も起こらないこと…。
そして持ち物検査でやっと動き出したは良いけれど、お仕置き返しも無いそんな中途半端な流れで恋愛物語?しかもなんすかこのクソ野郎w
兎に角小物であることは伝わったけれど、ムダに感じる描写と余白たっぷりで、長〜い尺を使ってそれで終わり?もうちょいなんかなかったのかな…これなら半分の尺で充分。
トルコにこんな場所があったとは
冬が長く閉鎖的なトルコの村で日々退屈に暮らす美術教師を中心としたストーリー。
人としての器はお猪口以下であろう主人公のサメットはヌワイが指摘したように屁理屈と文句ばかりで常に他の何かのせいにしてる。イスタンブールに行ったとしてもきっと同じなんだろうなと思う。
それぞれのシーンが長尺で特にサメットとヌワイの会話のやり取りはとても文学的というか、印象に残りました。最初にサメットとヌワイが「合う」って言ったの誰だ?笑
それでも彼の言い分が共感とまでは行かなくても分からないわけでもなく、あそこまで迷わず自分の意見言えるならむしろあっぱれだとも感じました。
3時間に及びますが大自然は美しく、人間の粗が浮き彫りになって、学ぶことが多いと感じた作品です。
正しさを揺さぶられて
2023年。ヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督。トルコ東部の寒村に小学校教師として赴任している主人公は退屈な日々を過ごしている。組織批判、田舎批判を繰り広げながら具体的な行動は起こさずひたすら転勤を待つ日々。そんな中、目をかけていた少女から告発されてあやうく失職する目に遭ったり、ルームメイトのなかのよい男性教師とともに近くの女性教師とつるんで出歩くようになって関係が変化したり。「どう生きるべきか」を喧嘩腰で議論し合う人々と、その中心で信じていた正しさを揺さぶられる知識人である主人公の苦悩を描いている。
トルコやイランの映画を見ていると感じる「なんかわかる」感じがこの作品にもある。非西欧圏で生きる知識人の葛藤の感覚。しかし、それとは別に、子供または女性によって自らの正当性の感覚を問い直されていく姿も描かれている。理想と現実のギャップに苦しんでいればいいのではなく、そのギャップ自体が男の身勝手な妄想だろうと突き付けられる。突き付けられるけれどもそれはもうどうしようもない。最後に主人公はこの閉塞的な田舎から転勤していくのだが、反省して生まれ変わったり、希望を見出したりということはなく、ただただ季節が移り変わっていくだけだ。
途中で挿入される現地の風景とそこに暮らしていると思われる人々の写真が異様に生々しい。
どんなに擦り切れた希望でもないよりあった方がいい
真っ白でどこまでも続く雪に覆われた平らな大地。そこを歩く人間も鉄塔もオモチャみたいにとても小さい。こんな自然の中では人間も人間が作ったものもあまりに小さいので無意味なものに見える。それが、職員室であろうと教室であろうと人間の群れの中に入り込んだ途端にどこにでもある世界が繰り広げられる。傲慢、噂話、贔屓、嫉妬、見栄、憧れ、信頼、家庭の問題、貧富、「都市と農村」の構図。
主人公のサメットは利己的で独りよがりで人の話を自分の都合のいいようにとり、ずるくて自分が一番偉いと思って他人を見下す男、そして突然大声で怒鳴り物を投げつける、一番嫌いなタイプだ。でもその人間性のどれかは自分の中にもあるかも知れないと思い始めると今度は自分の心がざわつき不穏な気持ちに襲われる。
映画の冒頭や中頃に流れるのはヴェルディのオペラ「ラ・トラヴィアータ」、ヴィオレッタが一人悲しく絶望の中で歌うアリアのピアノ曲だ。そのメロディーはヌライの美しさ、賢さ、悲しさ、夢、苦しみそのものだった。ヌライとサメットのやりとりは行動する理想論者と言葉だけの現実肯定かつ逃避者のあれかこれか議論。迫力はあったが感情や心が伴っていなかった。「擦り切れた希望」の一言で討論は終わり欠けていたエモーショナルな側面を迎える。冬と夏しかない大地があれかこれかという思考形式を作っている訳ではないだろう。世界中がそうなっているのだから。
サメットがスマホやカメラで撮影したという設定の写真映像は、映画映像よりずっと多くを語り豊穣で逞しい人間を映し出していたことに皮肉を感じた。ヌライの家の場面でいきなり映画セットが置かれたスタジオ空間にサメットが入りまた映画空間に戻り入り込むシーンは面白かった。これは嘘と虚の世界なんだよ、と観客の嫌悪感や感情移入を拒み落ち着かせてくれるための効果なんだろうか。だからか、若い聡明なサヴィムの未来には希望があるようにと素直に祈ることができた。
素晴らしい映像
映像が素晴らしかった!古代遺跡、雪原や雪山など、トルコ東部の絶景が楽しめます。富士山にそっくりな山もあるんですね。こんな辺境に赴任したら気が滅入るのもわかりますが、主人公は心が歪んでいるというか、あまり共感できませんでした。。
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