二つの季節しかない村のレビュー・感想・評価
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このタイトルとポスターにくすぐられる
主人公サメットの生臭い矮小さに対して
“本当はお前も似た者じゃないのか”
と、この長尺の中でずっと問いかけられているような気分にさせられる。トルコ初の女優賞を得た熱演も三角関係の機微も最後はぜーんぶ女子生徒サヴィムに持っていかれるのは、ある種、爽快で小気味よい。
チャイでも飲みましょう
サメットが教師としても人間としても嫌な奴で失笑した
豪雪か草木も枯れるような真夏の二つしか季節がない貧しい田舎の村での会話劇が面白くて夢中になって見た
ヌライとの白熱した会話の後のアレが観客の呼吸と気持ちを整える効果があって良かった
サメットを嫌な奴だと思うのと同時に自分にサメット成分が結構あると自覚しているので隠しながら生きていこうと思う
傲慢、偏見、色眼鏡
トルコ東部の辺鄙な村に赴任して4年の俺様教師の話。
一見すると生徒から慕われている様にみえるサメットが長期休暇が終わり雪の積もる村に戻ってきて始まっていく。
なんか意味があるのかな…と思わせる教師たちの朝のダベリに、からの優等生セヴィムとのやり取りになって、これといって何も起こらないこと…。
そして持ち物検査でやっと動き出したは良いけれど、お仕置き返しも無いそんな中途半端な流れで恋愛物語?しかもなんすかこのクソ野郎w
兎に角小物であることは伝わったけれど、ムダに感じる描写と余白たっぷりで、長〜い尺を使ってそれで終わり?もうちょいなんかなかったのかな…これなら半分の尺で充分。
トルコにこんな場所があったとは
冬が長く閉鎖的なトルコの村で日々退屈に暮らす美術教師を中心としたストーリー。
人としての器はお猪口以下であろう主人公のサメットはヌワイが指摘したように屁理屈と文句ばかりで常に他の何かのせいにしてる。イスタンブールに行ったとしてもきっと同じなんだろうなと思う。
それぞれのシーンが長尺で特にサメットとヌワイの会話のやり取りはとても文学的というか、印象に残りました。最初にサメットとヌワイが「合う」って言ったの誰だ?笑
それでも彼の言い分が共感とまでは行かなくても分からないわけでもなく、あそこまで迷わず自分の意見言えるならむしろあっぱれだとも感じました。
3時間に及びますが大自然は美しく、人間の粗が浮き彫りになって、学ぶことが多いと感じた作品です。
正しさを揺さぶられて
2023年。ヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督。トルコ東部の寒村に小学校教師として赴任している主人公は退屈な日々を過ごしている。組織批判、田舎批判を繰り広げながら具体的な行動は起こさずひたすら転勤を待つ日々。そんな中、目をかけていた少女から告発されてあやうく失職する目に遭ったり、ルームメイトのなかのよい男性教師とともに近くの女性教師とつるんで出歩くようになって関係が変化したり。「どう生きるべきか」を喧嘩腰で議論し合う人々と、その中心で信じていた正しさを揺さぶられる知識人である主人公の苦悩を描いている。
トルコやイランの映画を見ていると感じる「なんかわかる」感じがこの作品にもある。非西欧圏で生きる知識人の葛藤の感覚。しかし、それとは別に、子供または女性によって自らの正当性の感覚を問い直されていく姿も描かれている。理想と現実のギャップに苦しんでいればいいのではなく、そのギャップ自体が男の身勝手な妄想だろうと突き付けられる。突き付けられるけれどもそれはもうどうしようもない。最後に主人公はこの閉塞的な田舎から転勤していくのだが、反省して生まれ変わったり、希望を見出したりということはなく、ただただ季節が移り変わっていくだけだ。
途中で挿入される現地の風景とそこに暮らしていると思われる人々の写真が異様に生々しい。
どんなに擦り切れた希望でもないよりあった方がいい
真っ白でどこまでも続く雪に覆われた平らな大地。そこを歩く人間も鉄塔もオモチャみたいにとても小さい。こんな自然の中では人間も人間が作ったものもあまりに小さいので無意味なものに見える。それが、職員室であろうと教室であろうと人間の群れの中に入り込んだ途端にどこにでもある世界が繰り広げられる。傲慢、噂話、贔屓、嫉妬、見栄、憧れ、信頼、家庭の問題、貧富、「都市と農村」の構図。
主人公のサメットは利己的で独りよがりで人の話を自分の都合のいいようにとり、ずるくて自分が一番偉いと思って他人を見下す男、そして突然大声で怒鳴り物を投げつける、一番嫌いなタイプだ。でもその人間性のどれかは自分の中にもあるかも知れないと思い始めると今度は自分の心がざわつき不穏な気持ちに襲われる。
映画の冒頭や中頃に流れるのはヴェルディのオペラ「ラ・トラヴィアータ」、ヴィオレッタが一人悲しく絶望の中で歌うアリアのピアノ曲だ。そのメロディーはヌライの美しさ、賢さ、悲しさ、夢、苦しみそのものだった。ヌライとサメットのやりとりは行動する理想論者と言葉だけの現実肯定かつ逃避者のあれかこれか議論。迫力はあったが感情や心が伴っていなかった。「擦り切れた希望」の一言で討論は終わり欠けていたエモーショナルな側面を迎える。冬と夏しかない大地があれかこれかという思考形式を作っている訳ではないだろう。世界中がそうなっているのだから。
サメットがスマホやカメラで撮影したという設定の写真映像は、映画映像よりずっと多くを語り豊穣で逞しい人間を映し出していたことに皮肉を感じた。ヌライの家の場面でいきなり映画セットが置かれたスタジオ空間にサメットが入りまた映画空間に戻り入り込むシーンは面白かった。これは嘘と虚の世界なんだよ、と観客の嫌悪感や感情移入を拒み落ち着かせてくれるための効果なんだろうか。だからか、若い聡明なサヴィムの未来には希望があるようにと素直に祈ることができた。
素晴らしい映像
映像が素晴らしかった!古代遺跡、雪原や雪山など、トルコ東部の絶景が楽しめます。富士山にそっくりな山もあるんですね。こんな辺境に赴任したら気が滅入るのもわかりますが、主人公は心が歪んでいるというか、あまり共感できませんでした。。
この環境ならではの人間関係
トルコの長い冬と短い夏。
自然の大きさと人間の小ささを対比させている作品。
遠回しで探り探りの対人関係に頷く場面もあり。
膨大なセリフ量で繰り広げられる言い合い合戦は圧巻の12分超。見応えのある198分。
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