枯れ葉のレビュー・感想・評価
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枯れ葉舞う季節と時代をほのかな灯りで照らす
久々に我々のもとへ帰ってきたカウリスマキ。その作品はブランクを一切感じさせず、どこを取ってもトレードマークに満ちた、混じりっけなしのカウリスマキ映画だった。主人公は相変わらず孤独で、無口。それでいて心のどこかに譲れない想いや悩みを抱えていたりする。そんな中で出会った男女は、忘れえぬときを過ごした後、悲運が重なってなかなか再会できない・・・。このカウリスマキらしい運命の采配に翻弄される人々がおかしくて、愛おしくて、と同時に、再会を願う彼らの切なる眼差しにギュッと胸が締め付けられたりも。ラジオからは絶えずウクライナの戦争被害を知らせるニュース。二人の雇用も不安定で、日常生活は不確かさを増している。そんな時代の荒波の中で、二人の出会いは仄かな幸せの明かり。本作には彼らのみならず、観客の心に尊い光をもたらす優しさと温もりがある。辛い時、厳しい時こそ、人類にはカウリスマキ映画が必要なのかもしれない。
愛想少なめの人物らが醸す滋味。新作なのに懐かしいのもアキ・カウリスマキならでは
無表情というわけではないが、喜怒哀楽の感情が大きく表れることはない。アキ・カウリスマキ監督の映画に出てくる人々はたいていそうだ。引退宣言の6年後に発表した新作「枯れ葉」でもそれは変わらない。メインのアンサとホラッパはもちろん、酒場にいる客らまでもが寡黙で、憂いを帯びた瞳で自省するかのように存在している。劇中歌を演奏する姉妹デュオ、マウステテュトットもツンとした顔で淡々と歌う(コーラスワークがなかなか良い)。しかしだからこそ、彼ら彼女らの眼差しや口元のわずかな変化から感情の揺らぎがじわじわと染みるように観る側に伝わってくるのだろう。
日本通のカウリスマキ監督が昭和のすれ違い恋愛ドラマ「君の名は」を知っていたかどうかはわからないが、ロシアによるウクライナ攻撃のニュースがラジオから流れるこの1~2年の設定で、携帯電話もあるのになかなか再会できないでいる2人の緩やかに進行するストーリーは、合理化と効率化が追求され時間に追われて消耗した現代の大人を癒すノスタルジックなおとぎ話のようでもある。何かとあわただしい師走に日本公開されるのも良いタイミング。本編81分、ほっと一息つきたい時の鑑賞がおすすめの愛らしい小品だ。
時代が一瞬分からなくなる
配信にある!
淡々と話しは進む中で、二人の主人公の後ろに佇むエキストラのような動きのない役者に目がいってしまうw
そう言う演出が好きな監督なのかな?
とにかくワンコは癒しだし、大団円でホッとした。
スマートですっきりしたおしゃれ映画
カウリスマキ作品らしい淡々とした映画だった。公開期間終了のギリギリに映画館で見たが結構動員があった。フィンランドって幸福度高いのに映画は静かで、幸福感はあまり感じられないギャップがあるなとずっと感じている。
画角が固定されていたり、無駄なBGMがなかったりと舞台のような雰囲気もありつつ、少ないセリフがわざとらしくないのでリアリティもある。いわゆるエモとも言い難いが、好きな雰囲気だった。劇中のガールズバンドの曲が良かったな。
寂れた雰囲気があったので90年代とかの設定かな?と思っていたらウクライナの話が出て、これ現代なの?!と驚いた。
大人の恋と言ったら違うのかな?女性ははっきりした性格で物言いもコミカルに毒があってかなり好印象。男に関してはもっとちゃんとしろ!と思ってしまった。共感できる部分はなかった、まだまだ子供なので。セリフはクスッと笑えるユーモアがあって抑揚がない映像でも楽しめた。
枯れ葉という邦題もあるし、これからの時期にまた見たい。
枯れ葉が蘇った
ヨーロッパの渋い映像にラブストーリーも渋く秋にピッタリな映画だった。時間も短く、このストーリーにはちょうどよい。
駄目男の話しだったが、最後はいい感じだった。
ちょっと暗い感じの映画だったから、せめてストーリーだけでもハッピーな終わり方が素敵にみえた。
もどかしさがなく、とぼけ
ヘルシンキ。ロシアのウクライナ侵攻がラジオから聞こえる。一人暮らしの中年女性アンサは、スーパーで働いている。工事現場のホラッパは、隠れて酒を飲みながら働いていた。二人はカラオケバーで出会い、お互いが気になる。再会するも、それぞれが仕事を解雇され、その後すれ違い。
すれ違うんだけどもどかしさがあまりなく、とぼけた感じが楽しいです。初デートで観るのがゾンビ映画の「デッドドントダイ」、観てみよう。犬の名前が喜劇王、他映画愛もちりばめられ、いや散らかってるといったほうがいいかな。「男は壊れる鋳物」とは笑えます。酒が災いするホラッパのどこに、アンサは惹かれるのか。明るいラストもいいです。なんか名画のようなタイトルだな。
枯れ葉が散ってもまた新葉が芽生える
この映画が望むのはささやかな事だ。
カラオケで一緒に歌ってくれるような。
一緒にディナーしてくれるような。
初デートにゾンビコメディ見てくれるような。
一緒に犬の散歩してくれるような。
また会ってくれるような。
寄り添い合えるような。
これからを期待出来るような。
そんなささやかな日常の幸せと、不器用だけど温かい出会い。
例え孤独であっても。
不条理に仕事を辞めさせられても。
酒ばかり煽っても。
不慮の事故に見舞われても。
今も世界の何処かで、私たちと同じ一人一人が暴力に晒されても。
人一人一人の願いは変わらない。
何処か可笑しくて、
だけど温かい。
ウィンクが堪らなく愛おしい。
枯れ葉が散ってもそこからまた新葉が芽生える。
フィンランドの名匠が引退を撤回してまで、今に伝えたかった事。
その眼差しが優しい。
2014年11月3日、『ワールズ・エンド』にて1000本。
2018年2月19日、『男はつらいよ』にて2000本。
2020年11月13日、『悪人伝』にて3000本。
そして今回本作で、レビュー総数4000本到達!
次はいつ、どのくらい掛かるか分かりませんが、気長に5000本目指したいと思います。
(尚その時その時の作品は『男はつらいよ』以外はたまたまのチョイスです)
発見、アキ・カウリスマキ!
アキ・カウリスマキ監督の作品は初めてです。
映像美がどうとか言ったりする、いわゆる「通」好みの小難しい映画なのかな?という警戒感はありました。
しかし観始めると、なんか変で、何じゃこりゃ?って感じ。
普通の商業映画とは違う妙な違和感があったけど、それが徐々に「可笑しみ」に変わって行って、音楽(日本の古い子守歌にビックリ)もとても面白くて、いつの間にか主人公の二人を応援してて、最後にはすっかりアキ・カウリスマキワールドにどっぷりで「何や知らんけど面白いもん観たなあ」となりました。
「ノーカントリー」をきっかけにコーエン兄弟にはまったみたいに、今は、アキ・カウリスマキにハマってしまって、遡って昔の作品を観てます。
ちょっと(かなり?)変で、可笑しくて、面白い。
追記
ワンちゃんが救いになっていますね。ほかの映画も。
エキゾチックで可愛いラブストーリー
フィンランドの映画ということで、それだけでもなかなか楽しい。
暮らしぶりや感性の違いやらの日本との違いが観ているとわかるので面白くて。ゴミの捨て方の違いなんて、ダイレクトにかなり気になるポイント😂
ストーリーは、もっと渋く暗い内容かと思っていたら、なんのとことはない、見終わってみれば素朴で心が温まる、単純だけれど可愛らしい内容の映画だった。
最後の方、ここというときにトラムに飛ばされてしまうところは韓流の『冬のソナタ』のノリを思い出した。まぁ…あまり深く考えずに単純に楽しみたい作品だと思う。
ちょっと異国のもので疲れずに癒されたい人にお勧めできる。若い人が恋の成就に真剣になるところは万国共通。
なかなか洒落た、センスの良さを感じる映画でもあった。さまざまなジャンルの音楽がとても楽しく、映画館がストーリーのネックに据えられているところが粋だった。社会批判、世知辛さ、厳しさを、嫌でも感じさせられる片や、小さな幸せを育もうとする素朴さや明るさが浮き彫りになり素敵なことに思えてくる。
レトロ
ずいぶんレトロな雰囲気の映画でした
ウクライナのニュースが流れなければ
40~50年くらい前の映画と
勘違いしたかもしれません
最近観た
「かもめ食堂」や
「世界で一番幸せな食堂」などで
勝手にイメージしている
ヘルシンキの町や
フィンランドの人々とは
全く違う感じでした
若い春の時代の人だけでなく
年齢を重ねて
人生の秋や冬の時代になっても
誰かと一緒に生きていきたいと
願うものかもしれないなと思いました
地味にジワジワ来る映画
月に8回ほど映画館で映画を観る中途半端な映画好き。
なので専門的過ぎないライトな紹介を心掛けています。
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鑑賞から随分時間が経ってるので簡単に。
地味なルックなのだけど
鑑賞しているうちにジワジワ、可笑しみが湧いてくる映画。
映画中盤、男性が女性の自宅に訪ねてくると言うので
女性主人公は食器やカトラリーをホームセンターで買ってきて
食事は楽しく進んだのだけど、その後
男性の発言のちょっとした齟齬に幻滅して
男が帰った後、買ってきた食器やカトラリーを
そのままゴミ箱に突っ込んでしまう!
いや〜〜、セリフが少ないのに、妙に可笑しい〜〜
また、時々ラジオから流れるウクライナ戦争のニュースと
映画の中で映される映画の演目やカフェで流れる流行歌が
時代的には考えれば全く、関連が無いのですが、
なんか不思議な世界観を醸し出していて
全体ルックは、ふた昔前のヨーロッパの小国の話かな〜と思わせて
実は低賃金労働者の苦しい暮らしや
精神的に不器用な男女の交流と言う現代的な話だったりして
なかなかに奥が深いです。
ラジオのニュースと音楽のチカラ
心理描写と場面転換は歌(音楽)で、
アキ・カウリスマキ監督は64歳で、年老いる年齢ではないですね。
6年前には引退を宣言。
2017年の最後になる筈の映画『希望のかなた』はとても好きな映画
でした。
移民問題を扱った映画です。
長くなりますが、2018年7月に書いた覚書を引用させてもらいます。
当時シリア内戦によりシリア難民がヨーロッパ諸国に
多数押し寄せる世界情勢で、
フィンランド政府は押し寄せる多数のシリア難民に苦慮していた。
難民青年クーリドに老人は優しく寝床と仕事を与える。
そしてこの映画には愛らしいアキ監督の愛犬が登場している。
生き別れの妹を探すクーリドに苦難は続くのだが、
微かに希望を感じさせるラストは本作のラストとも繋がる。
ここで特筆したいのは、流行らない老人のレストランが、
日本風寿司レストランに変わること。
ハッピ、ハチマキ、日本酒、味噌汁、おまけに招き猫まで登場。
アキ監督の日本好きが偲ばれるシーン続出。
好感を持ちました。
フィンランドといえば、荻上直子監督の『かもめ食堂』が大人気だが、
この食堂ではアンサの食べる【シナモンロール】がメニューに
追加される。
アニメオタクの大学生の“トンミ・ヒルトネン“が、豚身昼斗念と
小林聡美と片桐はいりが影で呼ぶのだ。
何故アキ•カウリスマキは一度興味を失った映画制作の現場に
戻ってきたのか?
ひと昔前の日本の『君の名は』みたいなラブストーリー。
ひとえに何回も挿入されるラジオ放送。
ロシアのウクライナ侵攻のニュース。
これが聞かせたくて映画の撮影をしたのではないのだろうか?
古色蒼然としたストーリーに音楽がアクセントを付けリードしていく。
英語のロックンロールに始まり、一瞬聴こえるグリーグの組曲
「ペールギュント」や「竹田子守唄」そしてチャイコフスキーの「悲愴」
しかし特筆すべきは姉妹のシンセとギターデュオの“マウテテュトット“の
エレクトロポップ。
“目に見えない1000の錘(おもり)につぶされそう“
“自分の墓まで辿りつけるのか“
“私は囚人、永遠に“
“墓場すらフェンスだらけ“
題名は「悲しみを身にまとい、失望に身をまかせ」だ。
可愛い美人姉妹の恐ろしいほどの諦観にたじろぐ。
フィンランドの若者の心はこんなにも荒廃しているのか?
核戦争後の世界のようだ。
映像表現より一曲の歌の破壊力。
中年男女の無愛想でしかも無表情に求め合う【愛】は、
可愛い犬を連れた強い女と、それに従う松葉杖の男が
幸せそうに歩いて、
ラストで終わる。
ラジオから流れる音声から、監督の強い想いを感じ取りたい一作
ヘルシンキの片隅でひっそり生きるアンサ(アルマ・ポウスティ)とホラッパ(ユッシ・ヴァタネン)の、溌剌とはほど遠いけど、お互いの細くてもろい絆を懸命につなごうとする物語。
なのですが、アンサとホラッパが耳を傾けるラジオから流れる音声は、ロシアによるウクライナ侵攻の状況を伝えるニュースです。この音声は、それぞれの場所にいる二人のつながりを暗示するだけでなく、遠く離れた日本の観客をも結びつけます。本作は決してカウリスマキ監督が作り上げた架空のヘルシンキを舞台にしているわけではなく、明確に「今、現在」の世界を描いています。なぜカウリスマキ監督がラジオから流れる音声として「戦争」を選んだのか、そこに引退宣言を撤回してまでも本作を取り上げた監督の強い意志を感じました。
アンサもホラッパも、苦しい生活の中で屈託を抱えて生きており、それが彼らの表情の乏しさと、「諦観」を発散し続ける所作として現れています。二人は世界になんの希望も見出していないようなのですが、それでも二人は偶然に結びついた縁を何とか紡いでいこうと、それぞれのやり方で努力を重ねていきます。
争いがなくなるどころかますます激しくなる世界において、良いところも悪いところも知ったうえでそれでも人の「えにし」の可能性を信じる。カウリスマキ監督は本作を通じて、巨大な破壊の中ではあまりにも儚くはあっても、人が人を信じる気持ちを持つ限り、まだそこに希望はある、ということを実感させてくれました。
パラノイドってブラックサバスの?
それぞれ独りで生きる中年であろう男女の恋愛物語。
ラブストーリーってことで観なくても…と思っていたけれど時間潰しに今更観賞。
スーパーで働く女が賞味期限切れの廃棄するパンを持ち帰ろうとしてクビになり、働き始めた飲食店のオーナーが…という流れに、土建の現場で働く男が仕事中に飲酒してクビになり、飲みに行った店のオーナーが…と繋がって行く。
かなり色々と端折った様な見せ方で2人の中をみせていくし、それでいてそんな姿をみせられても?と、もしや2人共一目惚れだったのかと思わせる結論ありきの様な展開で、シンプルなのは良いけれど、シンプル過ぎてこれと言って感情移入する様なところはなかったかな。
携帯やネットカフェはあるし、ラジオから流れるニュースはウクライナ侵攻だけど、暮らしぶりやインテリアが日本だったら40〜50年ぐらい前の頃の様な感じで、そっちの方が気になった。
よく分かりませんが・・
久々の監督作品という事で、今迄自分が携わってきた“映画”にオマージュを捧げたような感じでしょうか? ビルマーレイが出て来た時はちょっと噴き出しそうでした。あと所々の歌がキーだったと思いました。
くすっと笑える所も多々、「君の名は」か? 意識不明だからちょっといい? どんどん3K化していくヒロイン(これは笑えないか)フィンランドの人はシナモンロール好きなー。
毎日飲みたいお味噌汁みたい
ラジオからウクライナのニュースが聞こえる中、それでも誰かの日常は淡々と続いていくリアルさ。
戦争も、仕事での理不尽なことも、同じ街ですれ違ってばかりで会えない誰かのことも、全部一緒くたに日々は進む。
(比較するの安易な気はするけど、カウリスマキ監督のテイスト、星野源の歌う日常とちょっと近い気がする)
今時スマホもなくガラケー番号のメモ無くして会えない状況、中々珍しいですが、待ち続けていた映画館の前に溜まった煙草の吸い殻がいとおしくって。
ふんだんに出て来る古い映画(ポスター含め)や懐かしい音楽や、これぞ!な感じの無表情で口数が少ない人々と照明の特徴的な当て方、素敵でした。
やっと観られた!うれしい!という気持ちと共に、すごーく地味だけど余計なものを使わずにお出汁を取ったお味噌汁みたいで、エンドロールの"枯れ葉"を聴きながらじわじわーっと心身に染みました。
映画館の暗闇とスクリーンの光は人間を癒し救うんだよな、と。
時代錯誤にアナログな恋模様
季節が巡っても、時が流れてもきっと変わることのないカウリスマキ流スレ違いロマコメ。作中ラジオから聞こえる音で伝えられるロシアによるウクライナ侵攻の情勢。そして、電話番号や電話帳などポケベル時代さながらにアナログですれ違う2人(けど作中見るのは『デッド・ドント・ダイ』)。相変わらず失業者や肉体労働者など貧しい人びとに目を向けるカウリスマキ調にデッドパンする中で収まりの良い画、構図の勉強に。ジェームズ・スチュワート似のアル中が、好きな人のために変わろうとする自分。人との関わりに何気ない幸せ、きっとこうやって誰かと他の誰かが知り合って家族や特別な関係になっていく。機械を極限まで介さずにこの不器用さや時間のかかるさまもまた、人が人である由縁とでもいうかなんとも素敵。今そこにいることが何よりも確かで大事。人生の中でかけがえのないもの、愛しい瞬間を真空パックするように、いついつまでも普遍的。やさしさに包まれて、しっかりと温度(とクセ)を感じる映画の魔法。
ぎこちないから、愛しい
コミュ障気味の中年の男女の労働者のささやかな愛の芽生えなのだが、そのぎこちなさが見ていて自分と重ねたり、応援したくなるような愛おしさがある。カラオケとラジオの下手ウマないしはクドイ歌がミュージカル歌謡のように効いていて、会話の幾つかも微笑を誘う。最後はチャップリンみたいな味もある。
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