枯れ葉のレビュー・感想・評価
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カラオケシーンがすごく好き
陰惨な戦争報道がBGMのように流れる中で、新自由主義的に生活が追い詰められていく主人公たちの冴えなくも愛おしい人間模様。
現在性に基づいた陰鬱さと、人の営みの普遍的な可笑しさ。
「オンリー・ゴッド」や「シャンチー」、「みんなのヴァカンス」「悪いやつら」とか外国映画の中のカラオケシーンって本当に好きだな。
帰って来たカウリスマキ。
やれ北欧家具がおしゃれとか、国民が政府を信頼してる福祉大国とか、とかく昨今我が国では持ち上げられがちな「北欧」の片隅で、地味にスタイリッシュで、有体にいえばお金のない若くもない市井の人を見事に描き切ってくれた。
ジム・ジャームッシュへのオマージュもボーナスカットでした。
おもしろうて、やがて哀しき哉、でも希望の灯をありがとう。
そういえば、途中、主人公の女友達が「男なんてみんな同じ型からできた鋳物みたいなもの」みたいなセリフが。ちょっと アップデイトされたカウリスマキを見た気分。
こういう映画を見た後は、電車の車内でもレジのお姉さんに対しても、みんなそれぞれの人生をぼちぼち生きてるんだよね、っていう人類愛を自ら感じてしまいます。
ウクライナのラジオ放送、実に佳き伴奏者だったと思います。
音楽の使い方が秀逸。
フィンランドのKARAOKKE、マダムのMC付きで、店中の人の前でのど自慢なんて、なんて素敵!笑。
どん底でも愛があれば幸せになれる
スーパーで働くアンサと建設現場で働くアル中のホラッパ。
決して豊かとはいえない生活を送っている二人は、ある夜カラオケバーで知り合いお互いに惹かれるものを感じる。
しかし二人は視線を交わすだけだ。
その後、アンサは廃棄予定の食料品を持ち帰ろうとしたところを見咎められ、理不尽にも解雇を言い渡される。
新しく始めた皿洗いの仕事も、店主が違法薬物の売買によって逮捕されてしまったことであっという間に失ってしまう。
そんな彼女をたまたま現場に居合わせたホラッパはカフェに誘う。
彼はコーヒーをご馳走した後に、彼女を映画館に連れて行く。
作品はジャームッシュの『デッドドントダイ』。
映画館から出てきた二人組の男は「ロベッソンの『田舎司祭の日記』を思わせる」「いや、ゴダールの『はなればなれに』だ」と謎の言葉を交わす。
アンサはホラッパに電話番号を書いたメモを渡す。
しかしホラッパはそのメモをすぐに失くしてしまう。
お互いに名前も仕事も住んでいる場所も知らない。
ホラッパは映画館でアンサを待ち続けるが、お互いにニアミスをするばかりで出会えない。
そうこうしているうちに、ホラッパは現場で怪我をした際にアルコール検査で引っかかってしまい解雇を言い渡される。
それでも映画館で粘り強く待ち続けたホラッパはアンサと感動的な再会を果たす。アンサはホラッパをディナーに招待するが、彼がアル中だと分かった途端に二人の関係は途絶えてしまう。
そしてアルコールを断つことの出来ないホラッパは新しく始めた仕事も失ってしまうのだった。
これもカウリスマキ監督の敗者三部作の延長線上に位置する作品なのだろうか。
美男美女は出ないし、エネルギッシュな若さもないし、相変わらず登場人物はポーカーフェイスばかり。
労働者に対して無慈悲な社会を描いた辛辣な作品でもあり、決して明るい内容ではないのだが、ユーモラスな会話のセンスもあり、観ていて思わず心がほぐされてしまう映画でもあった。
カウリスマキ監督のコメディセンスはより研ぎ澄まされたようにも感じる。
どうしてもアンサを忘れられないホラッパはついに断酒を決意する。
そんな簡単にアルコールは断てないだろうが、とにかく彼は電話でその決意をアンサに伝える。
ホラッパを忘れられないのはアンサも同じで、彼女はすぐに会いに来てと彼に返事をする。
しかし彼女の家に向かう途中で、ホラッパはトラムに轢かれて意識不明状態になってしまう。
病院のベッドで眠り続ける彼の隣で、一方的に喋り続けるアンサの姿が、シリアスな状況ながらとても滑稽だ。
やがてホラッパは目を覚ます。
ラストに公園を歩くアンサとホラッパ、そして彼女が殺処分寸前で救った愛犬のチャップリンの姿に心が暖まった。
ここで描かれるドラマは決して明るくはない。
しかしそれでも彼らはハッピーエンドを迎えることが出来た。
一方、劇中で何度もラジオが伝えるロシアとウクライナの戦争は未だに続いている。
どれだけ生活が苦しくても、人と人とが殺し合う戦争に比べればきっとずっと幸せなことなのだろう。
相変わらず劇中に流れる音楽のセンスも素晴らしかった。
ザンドラ・フラー/希望の灯り似???
観始めてすぐに、アンサ(アルマ・ポウスティ)の働くスーパーマーケットの場面で、2019年にBunkamura ル・シネマで観たドイツ映画「希望の灯り」を思い出していた。
既視感ってやつである。
アルマ・ポウスティの2020年のTOVE/トーベは見逃している。残念!
女優さんもちょっと似た雰囲気のような気がした。サンドラ・フラーとアルマ・ポウスティ。全然似てないとも言えないような。だって、どっちにせよ実際の彼女らに会ったわけではないのだから。所詮、私の脳内妄想の世界なのだから。
アキ・カウリスマキ作品名には希望のかなた(2017)、街のあかり(2006)があるから題名も余計にまぎらわしい。
竹田の子守唄が二番目の劇伴に流れた。
アキ・カウリスマキ監督は小津安二郎などの日本映画好きらしい。鋳物工場はキューポラのある街か。第15回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品された浦山桐郎作品も当然観ているだろう。
ウイスキーボトルをいつも上着の裏ポケットに忍ばせ、ビールをチェイサーにウオッカをカパカパ呑むホラッパ。
ユッシ・バタネンの老けメイク。
ちょっとトニー・レオン似のいい感じだった。
おいらもすっかり"枯れ葉"になっちまった。(すっかり酔ってる)
このどうしようもないせつない感じは若い奴らにはわかるまい。
(完全に酔ってる)
禁酒しよう。キセキはおこる。
第76回カンヌ国際映画祭の審査員特別賞作品。
パルムドールはアナトミー・オブ・ア・フォール。
来年2月日本公開。
主演女優はなんとザンドラ・フラー。
グランプリはゾーン・オブ・インタレスト。
主演女優はこちらもザンドラ・フラー。
私の既視感(脳内妄想)もなかなかすごいかも。
これはキセキといってもいいだろう。
恐ろしいぐらいだ。
ガラス玉を買って、インチキ占い師でもはじめようかな。
第76回カンヌ国際映画祭男優賞の役所広司のパーフェクトデイズは明日から公開。
(番宣してどうするんだよ)
人恋しくなる季節、孤独を抱えた男と女
セリフでなく、カメラに喋らせる展開
まるで、絵画のようなショット。
まずは、対象物にカメラをあてる。
しばしの沈黙。
その後にセリフが続く。
このパターンで、物語はながれてゆく。
まるで、ゆったりとした川の流れのように。
沈黙のショットは、まるで行間の想像力をかきたてるように。
計算された表現だろうか。
この連続が、どくとくの映像美と展開を生む。
フィンランドという、極東の私達には、縁遠い世界を見せてくれる。
下層階級に生きる、中年男女
男は、肉体労働者。
高等教育は、受けていないようで。
肉体労働に。
アルコール中毒。
酒なしでは、生きて行けない、仕事中だろうと。
それが原因で、失業したりもする。
本人は、酒をあおるのは、うつのせいだと。
多分本当なのだろな。
起用でもなく、社会の底辺でうごめきながら、なんとか日々を過ごしている。
そんな感じが、伝わってくる。
女は、非正規労働者。
スーパーを些細なことで解雇になったり。
その後は、肉体労働で、つつましく生きる。
生きる歓び
この映画のテーマだろうか。
大げさな言い方だけど。
物語は、至ってシンプルで。
二人共、人生の野望とか無縁にみえる。
そんなことより日々の生活を送ることで、手一杯。
もう、夢を追いかけるには、二人共歳を取りすぎたのか。
そのあたりは、よくわからない。
ただ、ひたむきに生きる二人の姿は、けなげだ。
そう、人生は生きるだけでも大変。
そんな言葉が聞こえてきそうな作品。
そんな二人の恋は実るのだろうか。
映画館でお確かめください。
年末の忙しさ、新年をどう迎えようか。
そんな時期にピッタリの作品。
期待の新作に平凡さが滲む。
アキのもつ独特のペーシングに支配されながら、出演者の微かな表情、沈鬱な舞台、作品全体に滲む閉塞感などなど、どれも影を薄め、気持ち作品のペースも早く、ウクライナ情勢を伝える露骨なラジオ放送、色を感じるシーンなど、どこか俗っぽく、平べったい印象で残念に感じた。
机に残されたゼリーの画がなんかすごく好き。
リベンジ✨しました
【12.19✩⃛初回観賞】 評価:-
【12.24✩⃛2度目観賞】 評価:3.5
玄関開けたら2分でラジオ📻
今時ラジオ?でもそれがアンサっぽくてなんか良い✨
フィンランドのカラオケは司会のおばちゃん付き🎶なんならもっとノセてくれたらいいのにw
恋する気持ちに浮かれる人と、ラジオから聞こえてくる哀しいニュース。
愛する人が意識不明の病院から帰る電車内の後方座席でイチャつくカップル。
世の中ってそんな陰と陽の絶妙なバランスで成り立ってる🌞
『キートス』ってフィン語の『ありがとう』なんだね💜マウステテュトットの作中歌も可愛い❤ ❤ ❤
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ごめんなさい!
気付けば9割方寝ちゃってました!!
でも決して映画がつまらないから、ということではなく睡眠不足に起因するものです!!!
作品に罪はないのと、レビュアーさん達の評価が高いのでやっぱり気になるのと、観ていた1割でもとにかくワンコが可愛かったので、今回は星無し無評価として近々もう一度リベンジ試みます🙏
タイトルなし(ネタバレ)
フィンランドの首都ヘルシンキ。
大型スーパーマーケットで働くアンサ(アルマ・ポウスティ)。
賞味期限切れの商品を持ち帰ったことが原因で解雇されてしまう。
一方、廃品工場で粉塵にまみれて働くホラッパ(ユッシ・バタネン)は、度重なる遅刻や職場での飲酒が原因で、これまた解雇されてしまう。
ホラッパは工場の年配の同僚(ヤンネ・フーティアイネン)が誘ったカラオケバーで出逢い、名も知らぬままに惹かれ合う。
その後、ふたたび偶然再会し、一度映画を一緒に観たものの、残念なことから連絡が途切れてしまう。
失業が蔓延して、どことなくやるせないモダンタイムスなヘルシンキのラジオから繰り返し流れるはウクライナでの戦闘の様子で、やるせなさは高まっていく・・・
といった内容で、近作では移民問題が前面に出た社会派的な作品が多かったアキ・カウリスマキ監督だが、監督復帰に選んだ題材は『パラダイスの夕暮れ』など初期作品に近い労働者の物語。
ウクライナ情勢を背景にしているので、社会のやるせなさ、厭世的気分は強調されることになるが、それでも最終的には「愛ある未来」に決着する。
全編を、日本の「竹田の子守歌」をはじめとする歌曲が彩っているが、マイナーコードの曲は画面のカラフルさとは対比的。
太陽の日差しの乏しい北欧では、目には鮮やか、耳には寂しさ、というのが王道なのだろう。
「愛ある未来」を示すラストショットは、往年の名画へのオマージュ。
いつものカウリスマキ映画、変わらぬカウリスマキ映画。
社会は変わるが、カウリスマキの映画は変わらない。
変わらない良さというものある。
選曲の妙を楽しむ異色のラブコメディ
本作はフィンランド映画でした。フィンランド映画と言うと、今年3月に観た「コンパートメント NO.6」がありましたが、あちらはフィンランド人がロシアに留学した際のお話であり、舞台がロシアだった上、時代設定もソビエト崩壊直後の1990年代だったのに対して、こちらの舞台は現代のフィンランドでした。そういう意味では、現代のフィンランドを舞台にした映画としては初めて観た作品となりました。ただ画面の感じが現代調ではなく、いかにも1970年代と言った創りになっていた上、登場人物たちの自宅や職場、酒場の様子が前時代的な雰囲気でした。唯一本作が現代を舞台にしていることが認識できたのは、旧式のラジオから流れるニュースで、ロシアのウクライナ侵攻を伝えていたことと、スマートフォンを使っていたことくらいでしょうか。
そんな現代フィンランドを舞台にした作品でしたが、序盤から中盤にかけて、登場人物たちがとにかく無表情で、喋り方も平板な感じであり、とにかく無機質な創りになっていてちょっと驚きました。主人公のアンサは、最低賃金でスーパーマーケットで働いており、もう一人の主人公であるホラッパも金属工場で働いていて、言ってみれば低所得者の2人。しかも交友関係も限られている感じで、非常に暗い雰囲気で滅入ってしまう内容だったのですが、登場人物同士のやり取りや行動が実は結構滑稽で、本作がコメディ要素たっぷりのラブストーリーだったんだと気付いてからは、笑えるようになりました。
また、ラジオだったりカラオケだったりバンドの演奏だったりと、場面場面に挿入される多彩な音楽が、主人公たちの心情を見事に表した曲で、その点も感心させられました。何せ「竹田の子守唄」からチャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」まで、洋の東西を問わない選曲は見事。特に本作の主題歌と言っていい「Syntynyt suruun ja puettu pettymyksin(悲しみに生まれ、失望を身にまとう)」は出色の出来。フィンランド語なので今聞いても内容はさっぱりですが(映画ではちゃんと字幕が出てました)、悲しい感じでありながらもアップテンポで未来に希望が繋がる感じの曲で、まさに本作に嵌る唄でした。
最終盤になり、無表情だったアンサの顔にも笑みが見られるようになり、とっても幸せな感じで映画館を後にすることが出来る作品でした。
そんな訳で本作の評価は★4とします。
映画通向?穢れた私には遠かった
堀越好みの逸品。
さっぱりシンプルで多くは語らないラブストーリー
時間が空いていたのでたまたま鑑賞🎥
この監督の作品は初めてだったんだけど
め〜ちゃくちゃ惹き込まれて面白かった!
度々挿入される歌も最高にあってるし、
笑う要素もちょこちょこあってニヤっとしちゃう😂
個人的にはカラオケでテノールで歌ってスっと帰ってくるフオタリとか、病院でバラバラ死体のニュースを読み聞かせするヒロインとか、あと犬が可愛い🫶🏻
主人公の2人の人柄やそれを取り巻く周囲の人のパーソナルも難しくないし、没入はしやすいです!
淡々と進んでいき、大きい音響がなかったのもあり、
横に座っていたおじいちゃんが寝ていました😂
他の作品もアマプラで見れそうなので
見てみようと思います!!!!
愛がなくちゃね
素朴だけど味わい深い
なぜ北欧ってこう無愛想で、冷めていて、テキトーで、面白いことなんて何もないみたいな世界なのか分からないけれど、そんな無機質な世界にも愛は素朴に生まれて、誰かと誰かをなんとなく結んでゆくのだという風景がしっかり描かれたステキな映画。
登場人物が言葉少なで寡黙な分、ヘルシンキの情景が雄弁であり、色彩豊かに人物の心情描写を助けてくれているように見える。
音楽がほぼ全編鳴りっぱなしで、ある種音楽映画の趣きがある。選曲はどれもレトロで、少し感傷的だけど好き。人によっては痛々しい使い方にも見られるだろうけど、演技が抑えてあるのでそんなに気にならない。
電話のメモのところとか、2023年の物語とは思えないくらい焦れったい展開だけれど、一方でウクライナ戦争のニュースは日々流れ続けている。その時代錯誤的な感覚が、日本人からすると新鮮でありつつもゾッとする部分で、フィンランドには住みたくない感が否が応でも増す。
ただ、映画としてはそんなシュールな雰囲気がたまらなく魅力的であり、男女の粗野な関係性も本当に愛おしくなる。誰もが日常に耐えているという、当たり前のバックグラウンドがごく自然に描かれていて、ものすごく好印象。もっとも、アル中がそんな簡単に治るはずがないので、そこは違和感あったけれども…。
なんにせよ美しくて、詩的で、人生を肯定しようと戦う人たちの映画。今日見た中では一番良かった。
ラジオから流れるウクライナ情勢 カウリスマキでも避けて通れないほど...
復活!
アキ・カウリスマキが帰って来た。ささやかな愛であっても、それが最も重要で普遍的な強烈なメッセージを携えて、美しい映像美に更なる磨きを掛けて、人の最後に残る信じる気持ちを希望として、素晴らしい作品を見せてくれた。最早、巨匠として認知される監督だが、彼の目線は絶えず大きくは出れない人たちへと向けられる。小津安二郎をブラッシュアップし、多くはない独特の台詞とユーモアを無表情な役者たちに語らせ、ライティングと小道具と色調のメリハリで現実感のあるファンタジー世界を創り出す妙味は職人技もここに至って極まっている。その上、使われるサントラまでもが雄弁に語り、ストーリーを見せて来れる。アキ・カウリスマキの作品がマイムラグ無しで今鑑賞出来る僥倖に感謝したい。人を選ぶ作品かもしれないが、誰彼問わず鑑賞して欲しい。派手さのカケラもないが、人であるがためのドラマをそこに見出せる稀有な作品である。「絆」といったコマーシャルな不実なものではない。蜘蛛の糸のように切れやすいものを少しづつ、ゆっくりと手繰り寄せるような繋がりが現実であり、真実なのだ。
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