劇場公開日 2023年12月15日

「引き算の美学」枯れ葉 TSさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0引き算の美学

2025年6月8日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

幸せ

癒される

先月末に観た「ナイト・オン・ザ・プラネット」のヘルシンキ編でアキ、ミカの名前が出て思い出した作品。我が町のミニシアターで掛かっていたのは超短期間。絶対観ようとチェックして、ドタバタしているうちに見逃しまった(このパターンで観てない映画多数😭)。

月曜から仕事関係で忙しくなるから、今観ないとずっと観ないことになりそうな気がして、配信で観ました(「国宝」の余韻に浸っていたいんだけど、気持ちを切り替えないと!)

アキ・カウリスマキ監督の名前は知っていたけど、その作品を観るのは初めて。
ミニシアターのポスターを観て、直感で観たい!と思った作品だったけど、直感を信じて良かった。実に自分好みの映画。

余計なものは映さない。余計なものに光を当てない。余計な音は入れない。余計な人物は登場させない。余計な台詞は言わせない・・・。
映画を構成する上で必要な要素だけに絞った引き算の美学。

待った時間は、タバコの吸い殻の数で。
二人の心の距離は、ソファの座り位置で。
断酒の決意は「好きだけど耐えられない」という歌詞で。
充分伝わる。
でも、その意味を受け止められるのは、多分自分がそれなりに色々経験して歳をとったから。学生時代に観ていたら分からなかっただろう(観ることすらなかったと思うけれど)。

ほとんど表情を変えない無口な登場人物たちが時折放つシニカルな台詞、ちょっとスベったシュールな台詞にクスッと笑う。

ラジオから流れるロシア・ウクライナ戦争のニュースは、フィンランドがロシアと国境を接する国だということを知らせてくれる。でもそれは、この映画においては中年の2人の冴えない日常の一部以上の意味を持たない。
冴えない日常に追い打ちをかけるような突然の解雇も、事故も、生きるために淡々と乗り越えていく。
そこに静かな力強さと、小さな希望が見える。

晩秋の夜に観るのがピッタリな作品。
監督の他の作品も観てみよう(いつになるかわからないけど😭)

TS
かばこさんのコメント
2025年6月8日

何か、良いんですよね。
中年からだって咲く花もあるんです。
と思うワタシも良いお年です。
竹田の子守唄がしみしみしました。

かばこ
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