「【生き方が不器用な男女の恋の行方を、アキ・カウリスマキ監督ならではの独特のタッチで描いた作品。「希望のかなた」のプロモーション中に引退宣言をした監督が新作を製作してくれた事が嬉しき作品でもある。】」枯れ葉 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【生き方が不器用な男女の恋の行方を、アキ・カウリスマキ監督ならではの独特のタッチで描いた作品。「希望のかなた」のプロモーション中に引退宣言をした監督が新作を製作してくれた事が嬉しき作品でもある。】
<Caution!内容に触れています。>
ー フィンランドの名匠、アキ・カウリスマキ監督が描く孤独な男女のラブストーリー。-
■賞味期限切れの食品を持ち帰ろうとして仕事を失ったアンサ(アルマ・ポウスティ)と、酒を呑みながら仕事をしたために鉄工所を馘首されながらもどうにか工事現場で働いているホラッパ(ユッシ・ヴァタネン)。
ある夜、2人はカラオケバーで出会い、互いの名前も知らないまま惹かれあう。
だが、ホラッパはアンサから貰った電話番号を記した紙を無くし、更には漸くアンサの部屋で夕食を摂るも酒の飲み過ぎで関係は不安定になる。
故に、ホラッパは断酒し、アンサに会いに行こうとするもトラムに撥ねられる。
◆感想
・冒頭から、アンサの家のラジオからはロシアによるウクライナに対する非道な行為の状況が流される。”マリウポリの病院が爆撃された・・、”と。
そして、今作ではロシアによるウクライナ進攻のニュースがアンサの家のラジオから度々流れる。
ー アキ・カウリスマキ監督の現代の世界状況を憂慮した、反戦思想が如実に出ているシーンである。-
・ホラッパがアンサを誘って映画を観るシーン。二人が見ているのはジム・ジャームッシュ監督の「デッド・ドント・ダイ」である。
ー アキ・カウリスマキ監督の「レニングラード・ゴー・アメリカ」にはジム・ジャームッシュ監督が出演していた事を思い出す。親交のある監督の作品をさり気無く挿入するところが粋である。-
・因みにホラッパとアンサと言う名前も、劇中では中盤以降しか出て来ない。故に前半は名は分からないが、男がカラオケ場で女を見初めた事が徐々に分かって来る展開が、嬉しい。
■ホラッパもアンサも、貧しい。これはアキ・カウリスマキ監督の”敗者三部作”でも描かれているように、監督の視線はあくまで弱者に優しいのである。
■今作で新鮮なのは、劇中にエレクトロポップを演奏するガールズ・バンドが出て来ることだろう。ワンシーンだけであるが。ご存じのように北欧はエレクトロポップが盛んであるが、アキ・カウリスマキ監督作品としては、珍しい。
<アンサがホラッパと共にカラオケ屋に行った”カラオケ王”からホラッパが何故にアンサの家に来なかったかを聞いて、アンサはホラッパが入院している病院へ行き、意識不明の彼に雑誌を読んだりしてあげるのである。
そして、目を開けたホラッパは”俺は死んだのか。君と結婚届けを出す夢を見ていた。”と言うのである。
今作は、アキ・カウリスマキ監督ならではの、ノスタルジックな風合の中、時折描かれるユーモアに溢れている。
何より、貧しさに負けない哀愁漂う骨太のキャラクター、アンサとホラッパの姿が印象的な作品である。>
共感ありがとうございます。
「男はつらいよ」には、いつも詰まらない指摘やコメントですいません。また、何か気がつきましたらコメントさせて頂きます。では。