劇場公開日 2023年12月15日

枯れ葉のレビュー・感想・評価

全180件中、1~20件目を表示

4.0枯れ葉舞う季節と時代をほのかな灯りで照らす

2023年12月28日
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久々に我々のもとへ帰ってきたカウリスマキ。その作品はブランクを一切感じさせず、どこを取ってもトレードマークに満ちた、混じりっけなしのカウリスマキ映画だった。主人公は相変わらず孤独で、無口。それでいて心のどこかに譲れない想いや悩みを抱えていたりする。そんな中で出会った男女は、忘れえぬときを過ごした後、悲運が重なってなかなか再会できない・・・。このカウリスマキらしい運命の采配に翻弄される人々がおかしくて、愛おしくて、と同時に、再会を願う彼らの切なる眼差しにギュッと胸が締め付けられたりも。ラジオからは絶えずウクライナの戦争被害を知らせるニュース。二人の雇用も不安定で、日常生活は不確かさを増している。そんな時代の荒波の中で、二人の出会いは仄かな幸せの明かり。本作には彼らのみならず、観客の心に尊い光をもたらす優しさと温もりがある。辛い時、厳しい時こそ、人類にはカウリスマキ映画が必要なのかもしれない。

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牛津厚信

4.0愛想少なめの人物らが醸す滋味。新作なのに懐かしいのもアキ・カウリスマキならでは

2023年12月14日
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鑑賞方法:試写会

悲しい

幸せ

無表情というわけではないが、喜怒哀楽の感情が大きく表れることはない。アキ・カウリスマキ監督の映画に出てくる人々はたいていそうだ。引退宣言の6年後に発表した新作「枯れ葉」でもそれは変わらない。メインのアンサとホラッパはもちろん、酒場にいる客らまでもが寡黙で、憂いを帯びた瞳で自省するかのように存在している。劇中歌を演奏する姉妹デュオ、マウステテュトットもツンとした顔で淡々と歌う(コーラスワークがなかなか良い)。しかしだからこそ、彼ら彼女らの眼差しや口元のわずかな変化から感情の揺らぎがじわじわと染みるように観る側に伝わってくるのだろう。

日本通のカウリスマキ監督が昭和のすれ違い恋愛ドラマ「君の名は」を知っていたかどうかはわからないが、ロシアによるウクライナ攻撃のニュースがラジオから流れるこの1~2年の設定で、携帯電話もあるのになかなか再会できないでいる2人の緩やかに進行するストーリーは、合理化と効率化が追求され時間に追われて消耗した現代の大人を癒すノスタルジックなおとぎ話のようでもある。何かとあわただしい師走に日本公開されるのも良いタイミング。本編81分、ほっと一息つきたい時の鑑賞がおすすめの愛らしい小品だ。

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高森 郁哉

3.5時代が一瞬分からなくなる

2024年9月26日
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鑑賞方法:VOD

幸せ

配信にある!
淡々と話しは進む中で、二人の主人公の後ろに佇むエキストラのような動きのない役者に目がいってしまうw
そう言う演出が好きな監督なのかな?
とにかくワンコは癒しだし、大団円でホッとした。

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りゅう

3.5スマートですっきりしたおしゃれ映画

2024年9月25日
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カウリスマキ作品らしい淡々とした映画だった。公開期間終了のギリギリに映画館で見たが結構動員があった。フィンランドって幸福度高いのに映画は静かで、幸福感はあまり感じられないギャップがあるなとずっと感じている。

画角が固定されていたり、無駄なBGMがなかったりと舞台のような雰囲気もありつつ、少ないセリフがわざとらしくないのでリアリティもある。いわゆるエモとも言い難いが、好きな雰囲気だった。劇中のガールズバンドの曲が良かったな。
寂れた雰囲気があったので90年代とかの設定かな?と思っていたらウクライナの話が出て、これ現代なの?!と驚いた。

大人の恋と言ったら違うのかな?女性ははっきりした性格で物言いもコミカルに毒があってかなり好印象。男に関してはもっとちゃんとしろ!と思ってしまった。共感できる部分はなかった、まだまだ子供なので。セリフはクスッと笑えるユーモアがあって抑揚がない映像でも楽しめた。
枯れ葉という邦題もあるし、これからの時期にまた見たい。

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ヤマキ

3.5枯れ葉が蘇った

2024年9月23日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

寝られる

ヨーロッパの渋い映像にラブストーリーも渋く秋にピッタリな映画だった。時間も短く、このストーリーにはちょうどよい。
駄目男の話しだったが、最後はいい感じだった。
ちょっと暗い感じの映画だったから、せめてストーリーだけでもハッピーな終わり方が素敵にみえた。

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ノブ様

4.0観た後はほのぼの

2024年9月16日
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鑑賞方法:VOD

幸せ

寝られる

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てらちと

5.0市井の人

2024年9月9日
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鑑賞方法:DVD/BD
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Socialjustice

4.0噛めば噛むほど系の人間哀歌的映画

2024年9月8日
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鑑賞方法:VOD
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ちはや

3.5もどかしさがなく、とぼけ

2024年9月3日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

楽しい

幸せ

 ヘルシンキ。ロシアのウクライナ侵攻がラジオから聞こえる。一人暮らしの中年女性アンサは、スーパーで働いている。工事現場のホラッパは、隠れて酒を飲みながら働いていた。二人はカラオケバーで出会い、お互いが気になる。再会するも、それぞれが仕事を解雇され、その後すれ違い。
 すれ違うんだけどもどかしさがあまりなく、とぼけた感じが楽しいです。初デートで観るのがゾンビ映画の「デッドドントダイ」、観てみよう。犬の名前が喜劇王、他映画愛もちりばめられ、いや散らかってるといったほうがいいかな。「男は壊れる鋳物」とは笑えます。酒が災いするホラッパのどこに、アンサは惹かれるのか。明るいラストもいいです。なんか名画のようなタイトルだな。

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sironabe

3.5男は女のために

2024年8月30日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
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りか

3.5枯れ葉が散ってもまた新葉が芽生える

2024年8月27日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

悲しい

知的

幸せ

この映画が望むのはささやかな事だ。

カラオケで一緒に歌ってくれるような。
一緒にディナーしてくれるような。
初デートにゾンビコメディ見てくれるような。
一緒に犬の散歩してくれるような。
また会ってくれるような。
寄り添い合えるような。
これからを期待出来るような。
そんなささやかな日常の幸せと、不器用だけど温かい出会い。

例え孤独であっても。
不条理に仕事を辞めさせられても。
酒ばかり煽っても。
不慮の事故に見舞われても。
今も世界の何処かで、私たちと同じ一人一人が暴力に晒されても。

人一人一人の願いは変わらない。
何処か可笑しくて、
だけど温かい。
ウィンクが堪らなく愛おしい。

枯れ葉が散ってもそこからまた新葉が芽生える。
フィンランドの名匠が引退を撤回してまで、今に伝えたかった事。
その眼差しが優しい。

2014年11月3日、『ワールズ・エンド』にて1000本。
2018年2月19日、『男はつらいよ』にて2000本。
2020年11月13日、『悪人伝』にて3000本。
そして今回本作で、レビュー総数4000本到達!
次はいつ、どのくらい掛かるか分かりませんが、気長に5000本目指したいと思います。
(尚その時その時の作品は『男はつらいよ』以外はたまたまのチョイスです)

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近大

4.0発見、アキ・カウリスマキ!

2024年8月21日
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鑑賞方法:VOD

アキ・カウリスマキ監督の作品は初めてです。
映像美がどうとか言ったりする、いわゆる「通」好みの小難しい映画なのかな?という警戒感はありました。
しかし観始めると、なんか変で、何じゃこりゃ?って感じ。
普通の商業映画とは違う妙な違和感があったけど、それが徐々に「可笑しみ」に変わって行って、音楽(日本の古い子守歌にビックリ)もとても面白くて、いつの間にか主人公の二人を応援してて、最後にはすっかりアキ・カウリスマキワールドにどっぷりで「何や知らんけど面白いもん観たなあ」となりました。
「ノーカントリー」をきっかけにコーエン兄弟にはまったみたいに、今は、アキ・カウリスマキにハマってしまって、遡って昔の作品を観てます。
ちょっと(かなり?)変で、可笑しくて、面白い。
追記
ワンちゃんが救いになっていますね。ほかの映画も。

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ぜんじん

4.5Syntynyt suruun ja puettu pettymyksin 悲しみにまみれ失意を纏う?

2024年7月4日
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マサシ

3.5エキゾチックで可愛いラブストーリー

2024年7月3日
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鑑賞方法:VOD

フィンランドの映画ということで、それだけでもなかなか楽しい。
暮らしぶりや感性の違いやらの日本との違いが観ているとわかるので面白くて。ゴミの捨て方の違いなんて、ダイレクトにかなり気になるポイント😂

ストーリーは、もっと渋く暗い内容かと思っていたら、なんのとことはない、見終わってみれば素朴で心が温まる、単純だけれど可愛らしい内容の映画だった。
最後の方、ここというときにトラムに飛ばされてしまうところは韓流の『冬のソナタ』のノリを思い出した。まぁ…あまり深く考えずに単純に楽しみたい作品だと思う。
ちょっと異国のもので疲れずに癒されたい人にお勧めできる。若い人が恋の成就に真剣になるところは万国共通。

なかなか洒落た、センスの良さを感じる映画でもあった。さまざまなジャンルの音楽がとても楽しく、映画館がストーリーのネックに据えられているところが粋だった。社会批判、世知辛さ、厳しさを、嫌でも感じさせられる片や、小さな幸せを育もうとする素朴さや明るさが浮き彫りになり素敵なことに思えてくる。

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あま・おと

3.0レトロ

2024年6月16日
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ずいぶんレトロな雰囲気の映画でした
ウクライナのニュースが流れなければ
40~50年くらい前の映画と
勘違いしたかもしれません

最近観た
「かもめ食堂」や
「世界で一番幸せな食堂」などで
勝手にイメージしている
ヘルシンキの町や
フィンランドの人々とは
全く違う感じでした

若い春の時代の人だけでなく
年齢を重ねて
人生の秋や冬の時代になっても
誰かと一緒に生きていきたいと
願うものかもしれないなと思いました

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アツコ

3.5地味にジワジワ来る映画

2024年5月24日
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鑑賞方法:映画館

笑える

萌える

月に8回ほど映画館で映画を観る中途半端な映画好き。
なので専門的過ぎないライトな紹介を心掛けています。
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鑑賞から随分時間が経ってるので簡単に。

地味なルックなのだけど
鑑賞しているうちにジワジワ、可笑しみが湧いてくる映画。

映画中盤、男性が女性の自宅に訪ねてくると言うので
女性主人公は食器やカトラリーをホームセンターで買ってきて
食事は楽しく進んだのだけど、その後
男性の発言のちょっとした齟齬に幻滅して
男が帰った後、買ってきた食器やカトラリーを
そのままゴミ箱に突っ込んでしまう!

いや〜〜、セリフが少ないのに、妙に可笑しい〜〜

また、時々ラジオから流れるウクライナ戦争のニュースと
映画の中で映される映画の演目やカフェで流れる流行歌が
時代的には考えれば全く、関連が無いのですが、
なんか不思議な世界観を醸し出していて
全体ルックは、ふた昔前のヨーロッパの小国の話かな〜と思わせて
実は低賃金労働者の苦しい暮らしや
精神的に不器用な男女の交流と言う現代的な話だったりして

なかなかに奥が深いです。

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星のナターシャnova

4.0ラジオのニュースと音楽のチカラ

2024年5月19日
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心理描写と場面転換は歌(音楽)で、
アキ・カウリスマキ監督は64歳で、年老いる年齢ではないですね。
6年前には引退を宣言。
2017年の最後になる筈の映画『希望のかなた』はとても好きな映画
でした。
移民問題を扱った映画です。
長くなりますが、2018年7月に書いた覚書を引用させてもらいます。

当時シリア内戦によりシリア難民がヨーロッパ諸国に
多数押し寄せる世界情勢で、
フィンランド政府は押し寄せる多数のシリア難民に苦慮していた。
難民青年クーリドに老人は優しく寝床と仕事を与える。
そしてこの映画には愛らしいアキ監督の愛犬が登場している。
生き別れの妹を探すクーリドに苦難は続くのだが、
微かに希望を感じさせるラストは本作のラストとも繋がる。
ここで特筆したいのは、流行らない老人のレストランが、
日本風寿司レストランに変わること。
ハッピ、ハチマキ、日本酒、味噌汁、おまけに招き猫まで登場。
アキ監督の日本好きが偲ばれるシーン続出。
好感を持ちました。
フィンランドといえば、荻上直子監督の『かもめ食堂』が大人気だが、
この食堂ではアンサの食べる【シナモンロール】がメニューに
追加される。
アニメオタクの大学生の“トンミ・ヒルトネン“が、豚身昼斗念と
小林聡美と片桐はいりが影で呼ぶのだ。

何故アキ•カウリスマキは一度興味を失った映画制作の現場に
戻ってきたのか?
ひと昔前の日本の『君の名は』みたいなラブストーリー。
ひとえに何回も挿入されるラジオ放送。
ロシアのウクライナ侵攻のニュース。
これが聞かせたくて映画の撮影をしたのではないのだろうか?
古色蒼然としたストーリーに音楽がアクセントを付けリードしていく。
英語のロックンロールに始まり、一瞬聴こえるグリーグの組曲
「ペールギュント」や「竹田子守唄」そしてチャイコフスキーの「悲愴」
しかし特筆すべきは姉妹のシンセとギターデュオの“マウテテュトット“の
エレクトロポップ。
“目に見えない1000の錘(おもり)につぶされそう“
“自分の墓まで辿りつけるのか“
“私は囚人、永遠に“
“墓場すらフェンスだらけ“
題名は「悲しみを身にまとい、失望に身をまかせ」だ。
可愛い美人姉妹の恐ろしいほどの諦観にたじろぐ。
フィンランドの若者の心はこんなにも荒廃しているのか?
核戦争後の世界のようだ。
映像表現より一曲の歌の破壊力。

中年男女の無愛想でしかも無表情に求め合う【愛】は、
可愛い犬を連れた強い女と、それに従う松葉杖の男が
幸せそうに歩いて、
ラストで終わる。

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琥珀糖

3.5【生き方が不器用な男女の恋の行方を、アキ・カウリスマキ監督ならではの独特のタッチで描いた作品。「希望のかなた」のプロモーション中に引退宣言をした監督が新作を製作してくれた事が嬉しき作品でもある。】

2024年5月16日
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鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

幸せ

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NOBU

4.0らしい映画

2024年4月29日
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鑑賞方法:映画館

独特のユーモアが散りばめられた監督らしい映画。
鑑賞後はやっぱり温かい気持ちになった。

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ひかりすぎ

4.0ラジオから流れる音声から、監督の強い想いを感じ取りたい一作

2024年3月23日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ヘルシンキの片隅でひっそり生きるアンサ(アルマ・ポウスティ)とホラッパ(ユッシ・ヴァタネン)の、溌剌とはほど遠いけど、お互いの細くてもろい絆を懸命につなごうとする物語。

なのですが、アンサとホラッパが耳を傾けるラジオから流れる音声は、ロシアによるウクライナ侵攻の状況を伝えるニュースです。この音声は、それぞれの場所にいる二人のつながりを暗示するだけでなく、遠く離れた日本の観客をも結びつけます。本作は決してカウリスマキ監督が作り上げた架空のヘルシンキを舞台にしているわけではなく、明確に「今、現在」の世界を描いています。なぜカウリスマキ監督がラジオから流れる音声として「戦争」を選んだのか、そこに引退宣言を撤回してまでも本作を取り上げた監督の強い意志を感じました。

アンサもホラッパも、苦しい生活の中で屈託を抱えて生きており、それが彼らの表情の乏しさと、「諦観」を発散し続ける所作として現れています。二人は世界になんの希望も見出していないようなのですが、それでも二人は偶然に結びついた縁を何とか紡いでいこうと、それぞれのやり方で努力を重ねていきます。

争いがなくなるどころかますます激しくなる世界において、良いところも悪いところも知ったうえでそれでも人の「えにし」の可能性を信じる。カウリスマキ監督は本作を通じて、巨大な破壊の中ではあまりにも儚くはあっても、人が人を信じる気持ちを持つ限り、まだそこに希望はある、ということを実感させてくれました。

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yui