枯れ葉のレビュー・感想・評価
全180件中、1~20件目を表示
枯れ葉舞う季節と時代をほのかな灯りで照らす
久々に我々のもとへ帰ってきたカウリスマキ。その作品はブランクを一切感じさせず、どこを取ってもトレードマークに満ちた、混じりっけなしのカウリスマキ映画だった。主人公は相変わらず孤独で、無口。それでいて心のどこかに譲れない想いや悩みを抱えていたりする。そんな中で出会った男女は、忘れえぬときを過ごした後、悲運が重なってなかなか再会できない・・・。このカウリスマキらしい運命の采配に翻弄される人々がおかしくて、愛おしくて、と同時に、再会を願う彼らの切なる眼差しにギュッと胸が締め付けられたりも。ラジオからは絶えずウクライナの戦争被害を知らせるニュース。二人の雇用も不安定で、日常生活は不確かさを増している。そんな時代の荒波の中で、二人の出会いは仄かな幸せの明かり。本作には彼らのみならず、観客の心に尊い光をもたらす優しさと温もりがある。辛い時、厳しい時こそ、人類にはカウリスマキ映画が必要なのかもしれない。
愛想少なめの人物らが醸す滋味。新作なのに懐かしいのもアキ・カウリスマキならでは
無表情というわけではないが、喜怒哀楽の感情が大きく表れることはない。アキ・カウリスマキ監督の映画に出てくる人々はたいていそうだ。引退宣言の6年後に発表した新作「枯れ葉」でもそれは変わらない。メインのアンサとホラッパはもちろん、酒場にいる客らまでもが寡黙で、憂いを帯びた瞳で自省するかのように存在している。劇中歌を演奏する姉妹デュオ、マウステテュトットもツンとした顔で淡々と歌う(コーラスワークがなかなか良い)。しかしだからこそ、彼ら彼女らの眼差しや口元のわずかな変化から感情の揺らぎがじわじわと染みるように観る側に伝わってくるのだろう。
日本通のカウリスマキ監督が昭和のすれ違い恋愛ドラマ「君の名は」を知っていたかどうかはわからないが、ロシアによるウクライナ攻撃のニュースがラジオから流れるこの1~2年の設定で、携帯電話もあるのになかなか再会できないでいる2人の緩やかに進行するストーリーは、合理化と効率化が追求され時間に追われて消耗した現代の大人を癒すノスタルジックなおとぎ話のようでもある。何かとあわただしい師走に日本公開されるのも良いタイミング。本編81分、ほっと一息つきたい時の鑑賞がおすすめの愛らしい小品だ。
時代が一瞬分からなくなる
配信にある!
淡々と話しは進む中で、二人の主人公の後ろに佇むエキストラのような動きのない役者に目がいってしまうw
そう言う演出が好きな監督なのかな?
とにかくワンコは癒しだし、大団円でホッとした。
スマートですっきりしたおしゃれ映画
カウリスマキ作品らしい淡々とした映画だった。公開期間終了のギリギリに映画館で見たが結構動員があった。フィンランドって幸福度高いのに映画は静かで、幸福感はあまり感じられないギャップがあるなとずっと感じている。
画角が固定されていたり、無駄なBGMがなかったりと舞台のような雰囲気もありつつ、少ないセリフがわざとらしくないのでリアリティもある。いわゆるエモとも言い難いが、好きな雰囲気だった。劇中のガールズバンドの曲が良かったな。
寂れた雰囲気があったので90年代とかの設定かな?と思っていたらウクライナの話が出て、これ現代なの?!と驚いた。
大人の恋と言ったら違うのかな?女性ははっきりした性格で物言いもコミカルに毒があってかなり好印象。男に関してはもっとちゃんとしろ!と思ってしまった。共感できる部分はなかった、まだまだ子供なので。セリフはクスッと笑えるユーモアがあって抑揚がない映像でも楽しめた。
枯れ葉という邦題もあるし、これからの時期にまた見たい。
枯れ葉が蘇った
ヨーロッパの渋い映像にラブストーリーも渋く秋にピッタリな映画だった。時間も短く、このストーリーにはちょうどよい。
駄目男の話しだったが、最後はいい感じだった。
ちょっと暗い感じの映画だったから、せめてストーリーだけでもハッピーな終わり方が素敵にみえた。
観た後はほのぼの
ああ、また、救いのない話なんだろうか、と思いながら観始めた。
虚ろな目をした中年男女の、嫌な雇い主のいる毎日の労働、質素な暮らし。
女性の室内は簡素ながらも、青や赤が抑えられた色調ながらも、素敵な、レトロモダンな感じ。これって70年代やそこらの共産圏が舞台?と勘違いしていたが、ラジオからはロシアのウクライナ攻撃のニュースが途絶えることがない。じゃあ、今の話なのか。フィンランドって北欧=素敵イメージしかなかったが、意外と庶民は質素なんだなと少し驚いた。
そしてどこに行っても、老人しかいない。日本だけでないんだな、老齢化の社会。
カラオケがもう日本語で世界共通なんだな。でも歌下手な人にも、みんな優しい。
カラオケで最後のほうに歌っていた二人組の女性の音楽が良かった。ちょっと懐かしいシンセサイザーだけど、なんか新しい。
これから悲劇が起こる予感しかない。ああ、でも観なくちゃ、と思って、少しハラハラしていたが、確かに悲しいことが次々と起こった。
犬が出てきた頃からほっとした。犬はやっぱり素晴らしい。良き友になってくれる。
最後の場面で、ここで終わってくれと願ってたら、そのまま終わって良かった。
不幸なラストは観たくない。観終わった後はじんわりとした。
いろいろ悲惨なことが起こる世界(背景のラジオがずっと突き付けてくる)、つまらない、どころか、生まれてからもこの先もずっとついていない人生の予感の中に生きている人も、
こんな風に人と交わり、自己変化していくことができる。ささやかな幸せにほっとする映画。
市井の人
アキ・カウリスマキ監督の映画は私の心のなかを温めてくれるだけでなく、彼の映画を数本見ているから彼のユーモア・コメディタッチが(例えば、犬を拾ったり、その名前をつけなかったり、二人の主人公の名前もすぐわからないように設定されている。あと、急に列車事故などの突発的なシーンの導入など)心に残る。数あるカラオケのシーンも、歌詞とストーリーが一致してるし、微笑みの少ないシーンもカウリスマキ監督の作品だと感じさせる。フィンランドという地域性もあるとは思うが、暗いイメージの中にいきる人々の中で、ほんのわずか微笑む二人の主人公。それが特に、印象的で、人生にもっと微笑みを与えてあげたいと思う。これからきっともっとあると思う。
カウリスマキ監督が富豪を描いた映画を見たことがない。社会の端っこでやっと生きている人々が主だ。アルコールに溺れていても、いきていると感じる人の姿に共感するし、そういう人たちを無視しがちになったり、存在すら忘れてしまったりする現実社会の中で、スーパーの守衛やボスには賞味期限の切れた食べ物を捨てるなら必要な人に分け与える心も持って欲しいと思う。守衛の規則の中でがんじがらめになる必要性にも疑問を感じる。私たち、皆が、一生懸命生きているんだ。こんな私たちも社会の一員だから忘れないでほしいというカウリスマキ監督の心いきを感じざるをえない。
アンサ(アルマ・ポウスティ)ホラッパ(ユッシ・バタネン)を通して、我々視聴者に共感を与える。アンサの自立している姿。そして、首になってもなっても立ち上がって行って、自分ができる仕事を見つけていく。そして、犬にも憐憫を与え、面倒を見る。それに、自分の家族の多くはアル中でなくし、その深い苦しみで母親も亡くなったことをホラッパに直接、話す。このシーンは自分を譲らない大切なシーンだと思う。
ホラッパもアンサへの愛のために酒を止める決心をする。アル中で仕事をクビになったり、事故を起こしたりしても、やめられなかったアルコール。それが、四苦八苦し、アルコールを諦めるシーンはとてもいい。
好きな映画だ。
一つ疑問:なぜ、ロシア・ウクライナの問題をニュースにして作品に導入したのか。この相次いで起きていることがラジオニュースに流れているが
歴史的順番は正しいのか疑問に思ってfact check をする必要があるように思えた。それに、2023年にNATOに加入できる前は国民に恐怖感がより募っていたと思うからニュースにして導入したのかもしれないし、より暗い不安定なイメージを増させるための技法かもしれない。しかし、飲み仲間やどこかで民がちょっとでもこの事件を話題にしないとコネクションが悪くなってしまっているように思う。こじつけのように感じる。
噛めば噛むほど系の人間哀歌的映画
映画館にてエメラルドグリーンのシンプルなチラシを観て、気にはなっていたがこれまで観られず。今回、U-NEXTにて鑑賞。
1回目鑑賞時には、「不機嫌そうな男女が淡々と生活する」だけの退屈な映画に見えました。
しかし、2回目鑑賞時には、ゴールが見えておりその中で主人公2人の表情(大半は無表情)や仕草で人間らしい部分が垣間見えます。そして、そこがこの映画の醍醐味であり、だんだんと2人が可愛らしく、人間らしく見えてくるのです。
最終的なオチも素朴ですがほっこりする良作でした。
もどかしさがなく、とぼけ
ヘルシンキ。ロシアのウクライナ侵攻がラジオから聞こえる。一人暮らしの中年女性アンサは、スーパーで働いている。工事現場のホラッパは、隠れて酒を飲みながら働いていた。二人はカラオケバーで出会い、お互いが気になる。再会するも、それぞれが仕事を解雇され、その後すれ違い。
すれ違うんだけどもどかしさがあまりなく、とぼけた感じが楽しいです。初デートで観るのがゾンビ映画の「デッドドントダイ」、観てみよう。犬の名前が喜劇王、他映画愛もちりばめられ、いや散らかってるといったほうがいいかな。「男は壊れる鋳物」とは笑えます。酒が災いするホラッパのどこに、アンサは惹かれるのか。明るいラストもいいです。なんか名画のようなタイトルだな。
男は女のために
女、スーパー勤務、
期限切れの廃棄品を持ち帰りチンしたが捨てた。
🧌ウクライナニュース🧌
男、防護服着て汚れ落とし?
🧌ウクライナニュース🧌
男、友人とオシャレしてカラオケへ
🎶ナナカマドの秋を歌う友人、
見つめ合う男と女、
女、廃棄物処分せずにクビになる、友達が加勢。
男、遅刻して注意される。勤務中に酒飲み。
🧌ウクライナニュース🧌
女、電気代の督促状、パソコンで仕事探し、
すぐパブの皿洗いの仕事
🎵ヘイマンボイタリアーノ🎶の歌
店の主人、怪しい。
男、うつだと言う。
女、バス停で眠る男発見するが起きないので女バスに乗る。
店の主人捕まる。男、女を誘う。
女が立った隙にコーヒーに酒を入れ飲む男。
映画観た後、男が会いたいと言う。
女、電話番号教える。
男、番号書いたメモ失くす。
🧌ウクライナニュース🧌
男、仕方なく映画館前で待つ。
女、通りかかる。
男、ケガ、飲酒、クビ、友達と酒場へ。
女、溶接や機械部品の工場。
🎵男の心情歌った歌🎶
男、建設現場、また飲む。
やっと二人出会う、
女の家に誘われる、
女、酒小瓶、皿フォークなど買う。
男、花持って、女、赤いドレス。
酒小瓶開けて食前酒と言う女。
食事後、会話、
🧌 ウクライナニュース🧌
酷い戦争‼️
男、酒を催促するが断られ自分のを飲む。
見ていた女、アル中はごめんよ、と言う。
男、怒って帰る。女、皿洗わず直す。
男、酒場へ行って飲み直し。
気持ちを歌う歌。枯れる〜
男、建設現場でクビ。
女、友人と男の愚痴、
男はブタよ、ブタは優しい。
男、飲みつぶれベンチで寝る。
女、犬🐕を飼う、
女の気持ち?????の歌、若い子が。変?
男もいた、酒は飲まない。
ホステルに泊まり酒捨てる、一人何を思うか?
🎵枯れ葉散る〜🎶季節
歳月経ち男から電話、
酒を断ったと言う男、女と会う約束。
マシな上着を借りに行く。
事故❗️
来ない男を可愛いワンピース着て待つ女。
女、ツナギ着て力仕事。
散歩中、男の友人から、トラムに轢かれたと。
名前はホラッパ。
見舞い、気づかせる為横で雑誌を読む。
看護師トーニャから目覚めたと電話。
男、キスしたら目を開けた。😄
退院、男、トーニャから元夫の服を貰う。
待つ女、二人仲良く帰る。
チャップリンという飼い犬。
🎵枯れ葉の歌🎶
何回もラジオからウクライナ🇺🇦のニュースが流れます。監督の思いでしょうか。
また、この男、断酒できましたが、喫煙が増えていそう。友人にも注意されているのに。
枯れ葉が散ってもまた新葉が芽生える
この映画が望むのはささやかな事だ。
カラオケで一緒に歌ってくれるような。
一緒にディナーしてくれるような。
初デートにゾンビコメディ見てくれるような。
一緒に犬の散歩してくれるような。
また会ってくれるような。
寄り添い合えるような。
これからを期待出来るような。
そんなささやかな日常の幸せと、不器用だけど温かい出会い。
例え孤独であっても。
不条理に仕事を辞めさせられても。
酒ばかり煽っても。
不慮の事故に見舞われても。
今も世界の何処かで、私たちと同じ一人一人が暴力に晒されても。
人一人一人の願いは変わらない。
何処か可笑しくて、
だけど温かい。
ウィンクが堪らなく愛おしい。
枯れ葉が散ってもそこからまた新葉が芽生える。
フィンランドの名匠が引退を撤回してまで、今に伝えたかった事。
その眼差しが優しい。
2014年11月3日、『ワールズ・エンド』にて1000本。
2018年2月19日、『男はつらいよ』にて2000本。
2020年11月13日、『悪人伝』にて3000本。
そして今回本作で、レビュー総数4000本到達!
次はいつ、どのくらい掛かるか分かりませんが、気長に5000本目指したいと思います。
(尚その時その時の作品は『男はつらいよ』以外はたまたまのチョイスです)
発見、アキ・カウリスマキ!
アキ・カウリスマキ監督の作品は初めてです。
映像美がどうとか言ったりする、いわゆる「通」好みの小難しい映画なのかな?という警戒感はありました。
しかし観始めると、なんか変で、何じゃこりゃ?って感じ。
普通の商業映画とは違う妙な違和感があったけど、それが徐々に「可笑しみ」に変わって行って、音楽(日本の古い子守歌にビックリ)もとても面白くて、いつの間にか主人公の二人を応援してて、最後にはすっかりアキ・カウリスマキワールドにどっぷりで「何や知らんけど面白いもん観たなあ」となりました。
「ノーカントリー」をきっかけにコーエン兄弟にはまったみたいに、今は、アキ・カウリスマキにハマってしまって、遡って昔の作品を観てます。
ちょっと(かなり?)変で、可笑しくて、面白い。
追記
ワンちゃんが救いになっていますね。ほかの映画も。
Syntynyt suruun ja puettu pettymyksin 悲しみにまみれ失意を纏う?
『ナナカマドの秋』で話が始まる。
『ソプラノダネッ。レコードでも作れよ』と主人公はカラオケ男に話す。
『シューベルト』の『セレナーデ』
が良かったのかなぁ?
酔いつぶれた主人公に会う女性主人公。
Tchaikovsky: Symphony No. 6がバックに流れる。
『男はみんなブタよ。』
『違うわ。ブタは賢くてやさしい。』
『言えてる。ブタに乾杯ね。』
『Syntynyt suruun ja puettu
pettymyksin』
“悲しみに生まれ、失望を身にまとう”
『Maustetytöt』が良かった。この姉妹ディオ♥ハモってる。凄い。
この女性はボロボロの野良犬と、この主人公を同一視している。
すれ違いドラマとメロドラマと大団円。しかも、ウクライナの戦争。
そして、日本人好みの映画ばかり。
ここまで、凝縮されちまうと、演出する者の考えが丸見え。
さて、それを映像の魔術と見るか見ないか。なのだが。
このウマシカ男をロシアにたとえているのかなぁ?
しかし、最後は『モダン・タイムス』をリスペクトしつつ、苦しみは、まだまだ、続くつう事だなぁと思った。
追記 魔術はあった。最初の場面に出てくるカレンダーが2024年の7月以降のカレンダーゆえにこの出来事は未来の出来事だと言う事だと思うが。男がアル中を克服するにしても、時間はかかる。なんか時間が合わない。
今日は2024年7月4日アメリカ独立記念日。
追追記 このカレンダーよく見ると、7月4日が日曜日つまり、2024年のカレンダーじゃないと分かる。調べてみると、1976年7月以降のカレンダーになる。つまり、アメリカ独立200周年の年。日本は昭和51年。この年生まれた子供は就職氷河期。さて、さて、読み好きか?
エキゾチックで可愛いラブストーリー
フィンランドの映画ということで、それだけでもなかなか楽しい。
暮らしぶりや感性の違いやらの日本との違いが観ているとわかるので面白くて。ゴミの捨て方の違いなんて、ダイレクトにかなり気になるポイント😂
ストーリーは、もっと渋く暗い内容かと思っていたら、なんのとことはない、見終わってみれば素朴で心が温まる、単純だけれど可愛らしい内容の映画だった。
最後の方、ここというときにトラムに飛ばされてしまうところは韓流の『冬のソナタ』のノリを思い出した。まぁ…あまり深く考えずに単純に楽しみたい作品だと思う。
ちょっと異国のもので疲れずに癒されたい人にお勧めできる。若い人が恋の成就に真剣になるところは万国共通。
なかなか洒落た、センスの良さを感じる映画でもあった。さまざまなジャンルの音楽がとても楽しく、映画館がストーリーのネックに据えられているところが粋だった。社会批判、世知辛さ、厳しさを、嫌でも感じさせられる片や、小さな幸せを育もうとする素朴さや明るさが浮き彫りになり素敵なことに思えてくる。
レトロ
ずいぶんレトロな雰囲気の映画でした
ウクライナのニュースが流れなければ
40~50年くらい前の映画と
勘違いしたかもしれません
最近観た
「かもめ食堂」や
「世界で一番幸せな食堂」などで
勝手にイメージしている
ヘルシンキの町や
フィンランドの人々とは
全く違う感じでした
若い春の時代の人だけでなく
年齢を重ねて
人生の秋や冬の時代になっても
誰かと一緒に生きていきたいと
願うものかもしれないなと思いました
地味にジワジワ来る映画
月に8回ほど映画館で映画を観る中途半端な映画好き。
なので専門的過ぎないライトな紹介を心掛けています。
====================
鑑賞から随分時間が経ってるので簡単に。
地味なルックなのだけど
鑑賞しているうちにジワジワ、可笑しみが湧いてくる映画。
映画中盤、男性が女性の自宅に訪ねてくると言うので
女性主人公は食器やカトラリーをホームセンターで買ってきて
食事は楽しく進んだのだけど、その後
男性の発言のちょっとした齟齬に幻滅して
男が帰った後、買ってきた食器やカトラリーを
そのままゴミ箱に突っ込んでしまう!
いや〜〜、セリフが少ないのに、妙に可笑しい〜〜
また、時々ラジオから流れるウクライナ戦争のニュースと
映画の中で映される映画の演目やカフェで流れる流行歌が
時代的には考えれば全く、関連が無いのですが、
なんか不思議な世界観を醸し出していて
全体ルックは、ふた昔前のヨーロッパの小国の話かな〜と思わせて
実は低賃金労働者の苦しい暮らしや
精神的に不器用な男女の交流と言う現代的な話だったりして
なかなかに奥が深いです。
ラジオのニュースと音楽のチカラ
心理描写と場面転換は歌(音楽)で、
アキ・カウリスマキ監督は64歳で、年老いる年齢ではないですね。
6年前には引退を宣言。
2017年の最後になる筈の映画『希望のかなた』はとても好きな映画
でした。
移民問題を扱った映画です。
長くなりますが、2018年7月に書いた覚書を引用させてもらいます。
当時シリア内戦によりシリア難民がヨーロッパ諸国に
多数押し寄せる世界情勢で、
フィンランド政府は押し寄せる多数のシリア難民に苦慮していた。
難民青年クーリドに老人は優しく寝床と仕事を与える。
そしてこの映画には愛らしいアキ監督の愛犬が登場している。
生き別れの妹を探すクーリドに苦難は続くのだが、
微かに希望を感じさせるラストは本作のラストとも繋がる。
ここで特筆したいのは、流行らない老人のレストランが、
日本風寿司レストランに変わること。
ハッピ、ハチマキ、日本酒、味噌汁、おまけに招き猫まで登場。
アキ監督の日本好きが偲ばれるシーン続出。
好感を持ちました。
フィンランドといえば、荻上直子監督の『かもめ食堂』が大人気だが、
この食堂ではアンサの食べる【シナモンロール】がメニューに
追加される。
アニメオタクの大学生の“トンミ・ヒルトネン“が、豚身昼斗念と
小林聡美と片桐はいりが影で呼ぶのだ。
何故アキ•カウリスマキは一度興味を失った映画制作の現場に
戻ってきたのか?
ひと昔前の日本の『君の名は』みたいなラブストーリー。
ひとえに何回も挿入されるラジオ放送。
ロシアのウクライナ侵攻のニュース。
これが聞かせたくて映画の撮影をしたのではないのだろうか?
古色蒼然としたストーリーに音楽がアクセントを付けリードしていく。
英語のロックンロールに始まり、一瞬聴こえるグリーグの組曲
「ペールギュント」や「竹田子守唄」そしてチャイコフスキーの「悲愴」
しかし特筆すべきは姉妹のシンセとギターデュオの“マウテテュトット“の
エレクトロポップ。
“目に見えない1000の錘(おもり)につぶされそう“
“自分の墓まで辿りつけるのか“
“私は囚人、永遠に“
“墓場すらフェンスだらけ“
題名は「悲しみを身にまとい、失望に身をまかせ」だ。
可愛い美人姉妹の恐ろしいほどの諦観にたじろぐ。
フィンランドの若者の心はこんなにも荒廃しているのか?
核戦争後の世界のようだ。
映像表現より一曲の歌の破壊力。
中年男女の無愛想でしかも無表情に求め合う【愛】は、
可愛い犬を連れた強い女と、それに従う松葉杖の男が
幸せそうに歩いて、
ラストで終わる。
【生き方が不器用な男女の恋の行方を、アキ・カウリスマキ監督ならではの独特のタッチで描いた作品。「希望のかなた」のプロモーション中に引退宣言をした監督が新作を製作してくれた事が嬉しき作品でもある。】
<Caution!内容に触れています。>
ー フィンランドの名匠、アキ・カウリスマキ監督が描く孤独な男女のラブストーリー。-
■賞味期限切れの食品を持ち帰ろうとして仕事を失ったアンサ(アルマ・ポウスティ)と、酒を呑みながら仕事をしたために鉄工所を馘首されながらもどうにか工事現場で働いているホラッパ(ユッシ・ヴァタネン)。
ある夜、2人はカラオケバーで出会い、互いの名前も知らないまま惹かれあう。
だが、ホラッパはアンサから貰った電話番号を記した紙を無くし、更には漸くアンサの部屋で夕食を摂るも酒の飲み過ぎで関係は不安定になる。
故に、ホラッパは断酒し、アンサに会いに行こうとするもトラムに撥ねられる。
◆感想
・冒頭から、アンサの家のラジオからはロシアによるウクライナに対する非道な行為の状況が流される。”マリウポリの病院が爆撃された・・、”と。
そして、今作ではロシアによるウクライナ進攻のニュースがアンサの家のラジオから度々流れる。
ー アキ・カウリスマキ監督の現代の世界状況を憂慮した、反戦思想が如実に出ているシーンである。-
・ホラッパがアンサを誘って映画を観るシーン。二人が見ているのはジム・ジャームッシュ監督の「デッド・ドント・ダイ」である。
ー アキ・カウリスマキ監督の「レニングラード・ゴー・アメリカ」にはジム・ジャームッシュ監督が出演していた事を思い出す。親交のある監督の作品をさり気無く挿入するところが粋である。-
・因みにホラッパとアンサと言う名前も、劇中では中盤以降しか出て来ない。故に前半は名は分からないが、男がカラオケ場で女を見初めた事が徐々に分かって来る展開が、嬉しい。
■ホラッパもアンサも、貧しい。これはアキ・カウリスマキ監督の”敗者三部作”でも描かれているように、監督の視線はあくまで弱者に優しいのである。
■今作で新鮮なのは、劇中にエレクトロポップを演奏するガールズ・バンドが出て来ることだろう。ワンシーンだけであるが。ご存じのように北欧はエレクトロポップが盛んであるが、アキ・カウリスマキ監督作品としては、珍しい。
<アンサがホラッパと共にカラオケ屋に行った”カラオケ王”からホラッパが何故にアンサの家に来なかったかを聞いて、アンサはホラッパが入院している病院へ行き、意識不明の彼に雑誌を読んだりしてあげるのである。
そして、目を開けたホラッパは”俺は死んだのか。君と結婚届けを出す夢を見ていた。”と言うのである。
今作は、アキ・カウリスマキ監督ならではの、ノスタルジックな風合の中、時折描かれるユーモアに溢れている。
何より、貧しさに負けない哀愁漂う骨太のキャラクター、アンサとホラッパの姿が印象的な作品である。>
ラジオから流れる音声から、監督の強い想いを感じ取りたい一作
ヘルシンキの片隅でひっそり生きるアンサ(アルマ・ポウスティ)とホラッパ(ユッシ・ヴァタネン)の、溌剌とはほど遠いけど、お互いの細くてもろい絆を懸命につなごうとする物語。
なのですが、アンサとホラッパが耳を傾けるラジオから流れる音声は、ロシアによるウクライナ侵攻の状況を伝えるニュースです。この音声は、それぞれの場所にいる二人のつながりを暗示するだけでなく、遠く離れた日本の観客をも結びつけます。本作は決してカウリスマキ監督が作り上げた架空のヘルシンキを舞台にしているわけではなく、明確に「今、現在」の世界を描いています。なぜカウリスマキ監督がラジオから流れる音声として「戦争」を選んだのか、そこに引退宣言を撤回してまでも本作を取り上げた監督の強い意志を感じました。
アンサもホラッパも、苦しい生活の中で屈託を抱えて生きており、それが彼らの表情の乏しさと、「諦観」を発散し続ける所作として現れています。二人は世界になんの希望も見出していないようなのですが、それでも二人は偶然に結びついた縁を何とか紡いでいこうと、それぞれのやり方で努力を重ねていきます。
争いがなくなるどころかますます激しくなる世界において、良いところも悪いところも知ったうえでそれでも人の「えにし」の可能性を信じる。カウリスマキ監督は本作を通じて、巨大な破壊の中ではあまりにも儚くはあっても、人が人を信じる気持ちを持つ限り、まだそこに希望はある、ということを実感させてくれました。
全180件中、1~20件目を表示