劇場公開日 2024年5月24日

「人を選ぶ作品」関心領域 LCさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5人を選ぶ作品

2024年5月27日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

アウシュビッツ=ビルケナウ強制収容所に隣接する所長宅の日常を映したドラマ。
一見平和そうに見える一家を淡々と映し、映像的には刺激がほぼなく、退屈とさえ言えます。
ただし収容所の隣ということもあり、断続的にユダヤ人を"処理"しているような不穏な音が流れ続けていたり、奴隷のように家事をこなすユダヤ人や、時折虐殺の方法などについて仄めかしたりするような会話があります。
壁一枚を隔てて、幸せな一家と地獄が隣り合わせになっているという所を描きたいのだと思いますが、正直な所、奇を衒い過ぎている気がしなくもありません。
例えば収容所の惨状などは、三十年以上前に作られたシンドラーのリストのほうが余程直接的に訴えかけてくるし、固定された定点カメラで俯瞰して一家を描くこの撮り方であればドキュメンタリーのほうが良かったのではと思います。
少々期待値が上がり過ぎていた点もありますが、意味ありげな演出の映像を説明無しで挿入したり、間接的すぎる描き方はあまり見応えが無かったと言わざるを得ませんが、自分の好みではなかったと言えばそれまでかも知れません。

映像の好き嫌いは別として、この一家と同じく自分達も残酷な真実を知りながら時に目を背けたり、見て見ぬふりをしたり、或いは直視して悲しんだり罪悪感を覚えたりと言ったことを延々と繰り返しています。
人間に欲求やある目的の為に統率された思想がある限り、この星が平和になる事など無いという事は既に分かりきっており、今日こうした作品を観て暗澹たる気持ちになっても、週末にはマッドマックスやジャッキー・チェンを観て盛り上がる現実を考えた時、諦めて受け入れるしか無いのかなと思いました。

LC
LCさんのコメント
2024年5月30日

uzさん

>メッセージを届けるというより、表現方法を評価されるためというか

自分が言語化出来なかった点をまさにここに集約してくださっていると思いました。有難うございます。

LC
uzさんのコメント
2024年5月30日

知らない人には届きづらく、知っている人には必要性の薄い手法に感じました。
メッセージを届けるというより、表現方法を評価されるためというか…
まぁ、自分が無教養なので作品の意図や魅力を捉えきれていないのかもですが。

uz