「アパシーがもたらす社会的危機を警告する映画」関心領域 Moiさんの映画レビュー(感想・評価)
アパシーがもたらす社会的危機を警告する映画
感想
人道的アパシー(無関心)は誰にでも、いつでも簡単に起こり得るのだと感じた。
我々日本人も全く他人事ではない。我々もいつ陥ってもおかしくない、ファシズムと共通する無関心の心理を客観的視点から警告し、強く戒しめている映画であると感じる。
ドイツ人は勤勉な国民性であると言われている。勤勉家であるが故、ナチス時代の徹底したアーリア人優生主義に基づく、選民思想教育を好意的に受け入れた事により、人道差別心理が強く多数の国民に浸透した。
人間一人一人が自分自身で、現状に対して常に検証や問題意識を少しでも持ち、疑問や問題を提起、発信出来て、かつ民主的に話し合い、解決策を導く事の出来る社会を創っていく事が重要である。複雑と思われがちな人種問題と多様性の問題は人類史レベルに関わる大問題と捉えるべきだと感じた。
ヘスの奥さんの考え方と行動が超胸くそ悪かった。壁一つ隔てた場所がアウシュビッツと思っただけで頭痛がした。
やはりA24が制作に関わると一筋縄ではいかない、強いインパクトを持った内容の映画が多いように感じる。
脚本・演出◎
ドキュメントタッチで最後まで続くと思いきや最後の階段の場面は現代とのシンクロもあり、ブラックなユーモアを感じた。場面転換の色については意味があるのだろう。自分はよくわからなかった。
効果音はリアルで、
劇中の何気ない生活の場面でも、音は散発的に聞こえる銃と思われる発射音や、ザワザワとした雑踏音、騒音が小さく流れており、夜、建物の2階から見れる焼却施設と思われる建物から出ている炎と煙。毎日定期的に壁の向こうに見える蒸気機関車のものと思われる煙、時代が経過してくると、昼間でも煙が上がるのを目視出来た。川では焼却後のガスの毒着きの灰が流されるなど、想像出来得る迫害の状況はビシビシと感じる。◎
音楽も転調に次ぐ転調で不安定な気持ちを唆り気持ち悪い印象に拍車をかけていた。◎
恥ずかしながら、正直に言うと映画の途中、あまりにもヘスの家族の会話と行動が普通すぎの描写のため、自分の頭が無関心領域を作り出して寝落ちした。それではいけないのだと!、途中から再度戒めモードを徹底させて現代のアウシュビッツの展示室の掃除の場面まではなんとか鑑賞した。
自分も口程にないアパシー野郎なのだと猛反省した。
⭐️4
コメントありがとうございます。
匂いについては外部、と言っても40キロ四方については関心領域であったかもしれませんが、脱臭装置みたいな物はあったのでしょうか?匂いにもガスの毒素が残れば、身体は何かしら汚染されたかもしれませんね。興味深いですね。
納得いくレビューを読ませていただきました。自分は映像に執着するタイプのようで、騒音はとても苦手なのにこの映画の不穏な音に関してはほぼ無関心状態でした。多分そうしないと耐えられないと思ったのかも知れない。そして匂いは絶対にたちこもっているだろうと想像しました