「社会構造を坦々とした日常的な視点で描き、感覚が麻痺してくる」関心領域 ひでぼーさんの映画レビュー(感想・評価)
社会構造を坦々とした日常的な視点で描き、感覚が麻痺してくる
特徴的なのは、監視カメラのようなカメラワーク。
人物の移動に伴って視点がコロコロ変わるのは、ゲームのバイオハザードを想起させられ、映画であることを忘れさせる。
塀の向こうの音が聞こえてくる一方で、赤子の泣き声にかきけされ観客も最初よりは次第に気にしなくなってくる。
なにより印象的なのが、
家庭と職場でのやりとりが、日本のサラリーマンのそれとほぼ同じであることである。
アウシュビッツの司令官でも中間管理職の境遇と、プレッシャーと、家庭と、愛人と。
ユダヤ人迫害においてタスクが細分化されることで、当事者意識が薄れるというのはある話だが、それがより公私という面でも顕著に描かれている。
しかし、その坦々さだけで終わらせない、ところどころにある、衝撃とも不快ともいえる演出。忘れるな、と言わんばかりのメッセージである。
歴史と人間社会を考えさせられる100分あまりであった。
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