劇場公開日 2024年5月24日

「淡々としてて苦手だが考えさせられる」関心領域 kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0淡々としてて苦手だが考えさせられる

2024年5月25日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

毎年何本も作られるナチス映画。あの手この手で作る制作側のアイデアにいつも驚かされるが、本作も結構な衝撃だった。アウシュヴィッツ強制収容所の外側で幸せに暮らすナチスの家族を描いた物語。
壁の向こうで行われていたユダヤ人の虐殺は全く描かれない。あくまで収容所の所長家族の日々を淡々と描く。収容所の中で何が行われているのかは、壁の上から見える煙や聞こえてくる声と音でしか感じることができない。このおぞましさ。壁で隔たれた向こう側で何が行われているのかを想像したらあんなに幸せそうに生活はできない(個人的にはそう思う)。あの家族は収容所のことを知らないでいるのかと思っていたが、ちゃんと理解していることが後半示される。夫の権力を傘に怒鳴り散らす妻の態度もかなりおぞましかった。ちゃんと知ってんのか。そりゃそうだろうけど。気持ち悪い。
それなりに小さな出来事は起こるし、夫婦のお互いの不貞を匂わせるシーンもあったり(夫のはほぼ決定的だけど)。他にも些細なことであの環境の異常性がわかるシーンもあった。そう、スクリーンからは伝わらない匂いの問題だ。だからこそあそこにとどまりたいと考えることの異常性が際立つんだよな。また収容所の所長として、いかにユダヤ人を「効率的に」殺して灰にしていくのかを検討するシーンも印象的だった。「ヒトラーのための虐殺会議」に通じるビジネス感覚だ。
でも、全体に映画としてどうだったかというと微妙な感想になってしまう。淡々すぎるから。個人的にはあまり得意ではない部類の映画ってこと。リアリティ・ショーを見せられている気分になる。事実に基づくとこういう描き方になるのも仕方ないか。面白かったとは言えないが、かなり考えさせられた映画だった。点数は本来2くらいだが、考えさせられた点を踏まえて3にしておく。

kenshuchu
かばこさんのコメント
2024年5月28日

「臭いの問題」あるでしょう、と私も思います。

かばこ