「【”卯の花腐しの帰らない日々。”斜陽の一途にある、ピンク映画に関わった男二人と、女優志望の女の不思議な愛の物語。綾野剛さんと柄本佑さんは当たり前だが、良い俳優であるなあ。】」花腐し NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”卯の花腐しの帰らない日々。”斜陽の一途にある、ピンク映画に関わった男二人と、女優志望の女の不思議な愛の物語。綾野剛さんと柄本佑さんは当たり前だが、良い俳優であるなあ。】
ー ご存じの通り、今作の監督・脚本を務めた荒井晴彦氏は、若いころからピンク映画に関わり、その後数々作品の脚本を手掛けて来た方である。
今作で、エロティックなシーンが多いのは、私の勝手な憶測であるが、氏のピンク映画への隆盛を誇っていた郷愁ではないかなと思いながら観ていたものである。-
■斜陽の一途にあるピンク映画業界の監督である栩谷(綾野剛)は、金銭的な理由で5年も映画を撮れていない。
梅雨のある日、栩谷は大家から住人の立ち退き交渉を頼まれる。
その住人・伊関(柄本佑)はかつてピンク映画のシナリオを書いていた。
やがて2人の男の人生は、ある女優志望の女である桐岡祥子(さとうほなみ)とお互いに知らずに付き合っていた事が発覚し、交錯していく。
◆感想
・現代邦画界で、セックスシーンを美しく魅せる俳優No3。
<NOBU意見なので、文句言われても困ります。尚、順不同です。>
1.松坂桃李 <「娼年」を観れば一目瞭然である。猥雑感が全くないし、滑らかな女性を敬うが如き動きが素晴しい。>
2.綾野剛 <猥雑感はあるが、それが魅力。「日本で一番悪い奴ら」での、瀧内公美さん演じる女性警官とのシャブを歯茎に塗り込みながらの絡みはもう・・。良い子は観てはイケマセン!。>
3.柄本佑 <コミカルセックスシーンを演じさせたら、日本一だと勝手に思っている。今作でもその片鱗は垣間見える。因みに、「火口のふたり」での瀧内公美さんとの濃厚な絡みも、猥雑感なし。>
・・の3名のうち、2名が登場しているのであるから、今作は安心して観れます。R指定だけど。尚、私は、男が女性に暴力を振るう映画は大嫌いである。
で、この作品では、栩谷が自身の桐岡祥子と同棲していた時の喧嘩のシーンの脚本を書く時に一度は”殴って・・。”と書いたのを消して、”抱き合う。”と書き換えるシーンが、しっかりと映されている。
但し、それでもこの映画を嫌う人はいるんだろうなあ・・。
・多くの方が書いている通り、今作が上手いのは、桐岡祥子が桑山篤(吉岡睦雄)と
心中した現在パートと、過去パートがカラーとモノクロで分けられて、分かり易く描かれている所であろう。
だが、一つ気になったのは、何故に桐岡祥子が桑山篤と心中したのかが、良く分からない所かな。推測しろってことなんだろうけれど。
それに、今時、”心中”って言葉を使うかな。カラーパートの舞台は昭和という事だろうと解釈したよ。
■今作の魅力は、ヤッパリ現代邦画を牽引する演技スタイルが全く違う、綾野剛さんと、柄本佑さんが、一人の同じ女を愛するシーンが観れる事だと思う。
更に言えば、二人の桐岡祥子への愛し方が、全然違うんだよね。
白眉は、ヤッパリ過去シーンで栩谷が死んだ筈の浮遊するように歩く桐岡祥子を見るシーンだと思うな。栩谷の眼から流れる一筋の涙。綾野剛さんの、俳優としての円熟さを感じるシーンでもある。
<今作は、色々な見方があると思うが、私は荒井晴彦氏自身の斜陽になって行くピンク映画へのノスタルジーを描いた作品ではないかと思ったな。
でなければ、エンドのシーンで「さよならの向こう側」は使わないんじゃないかな。
これは、私の勝手な類推なんだけどね。>