「モノクローム」花腐し ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
モノクローム
シネコンではもうほぼ見られず、単館公開でしか観られなくなったピンク映画。自分はピンク映画の全盛期は全く知りませんし、これまで観たピンク映画は数えるくらいです。
今作はピンク映画に携わっていた栩谷と伊関という2人の男と、互いが過去に付き合っていた祥子という女性との話という切り口はだいぶ重めじゃないかなと思いましたが、全体的に見ると笑えるところもあった面白い作品でした。
序盤の栩谷の友人の監督の通夜のシーン、この導入の時点ではあまり期待できないなという入りでした。弔う場所で言い争うシーンがある映画の大半はそのノリを引き継いでしまう作品が多かったなと思ったので、大丈夫かなと思いましたが、アパートの立ち退きの件で偶然出会った栩谷と伊関のアパートの一室の話し合いから一気に面白くなりました。
過去に付き合った女を思い出し、それが全く同じ女だった事を途中まで気づかず、未練タラタラな事を酒とタバコとツマミと共に語っていく過去の話が今作のメインストーリーになっており、過去はカラーで描写され、現在はモノクロで描かれるという対比も良いなと思いました。
童貞の喪失や酔いの勢いで及ぶ行為と、当時の2人の価値観が行為に出ているのが印象的でした。
今作はしっかりと性行為を映す作品なので、それが苦手な方(そもそもR18+の作品は観に来ないと思いますが)はずっと目をそらさなきゃいけない作品です。
役者陣の動きや息遣いがリアルで、濡れ場の細部を事細かく映しており、最上級のAVを見ているかのようでした。
AFをするシーン、普通なら見るに耐えないものになるはずなんですが、マーガリンを塗って無理くり挿れてしまえ!というノリでやる事によってコメディになっていたのが面白かったです。
そこからは2人が別れた流れを描いており、仕事がうまくいかない様子や募り募った不満だったりと、別れ方に特別なものはありませんでしたが、2人とも子供ができたというところが共通しており、父親になる事の責任だったりは覚悟ができない人にとっては重荷すぎるんだなと思いました。
ラストシーン、アパートを徘徊する栩谷が長く映されますが、長いなーと口に出てしまいそうなくらいには長かったです。小説の修正シーンで割と終わりそうな雰囲気があったのに、これを追加したのは冗長だなと思ってしまいました。
エンドロールではほなみさんと綾野剛さんとのデュエットでの歌唱、しかも超全力でやってくれて、暗く沈みそうなラストシーンを払拭するかのような迫力がそこにありました。
エロスの塊のような作品で、現代ならではのピンク映画を楽しむことができました。上品なアレンジが効いてるので、本来のピンク映画に挑戦する勇気はいまだに出ませんが、いつかは見にいけたらなと思います。
鑑賞日 11/27
鑑賞時間 12:45〜15:10
座席 D-13