「◯兄◯」花腐し いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
◯兄◯
かなり品性を疑う題名になってしまうので、ある程度ボヤかしたのだが、それでも下劣な表現、先ずは陳謝
そんな内容(セクシャル表現)は抜きにしても、何処にも救いようのない、未来も希望もない「夢の島」なんていう皮肉にも程がある場所に埋められる類の話であり、私の大好物な″類友″のジャンルである 難しい哲学的なモチーフはなく、台詞には学のある単語が散りばめられるが何一つそれが生活に役立つ訳でもなく、インテリゲンチャの教養振りをひけらかす兄弟達wのマウント合戦を繰り広げているだけの不毛な知識の垂れ流しであり、だからこそ″腐敗臭″漂う映像の爛れを益々色濃く足らしめているのである
現代パートをモノクロ、過去パートをカラーに色分けしている所も分かりやすく情緒を吐露している 悪徳家主の爪弾く♪君は天然色♪は正に今作品の色設計を明示してみせたメッセージであろう
しかし、これだけの熟成表現のプロットを果敢に参加したキャスト陣に先ずは称賛を送りたい 柄本兄はこういった作品のお馴染みであり、今作は義父との共演(シーンは異)だが、綾野剛はここ迄″汚れ″を演じた事は無かったであろう さとうほなみに至っては、今年の映画界一番、身体を張った俳優魂を観客に届けてくれた稀有で貴重な演技として大変素晴らしい、手放しで歓ぶ出来栄えである ″ゲス極″でのプログレな変拍子とパワフルさ、JAZZドラマーとしても充分通用する確かなテクニックを持ち併せていながら、堂々たる演技も又、観客を魅了していく 勿論、躊躇無く披露する肢体や、その年齢に見合う健康的肉体の造形も目を奪われるのだが、ドラミングの如く性愛描写の逞しさ、勇ましさには舌を巻く 較する事自体、ナンセンスだが、同じ柄本兄が相手役ということでの北香那のそれとは、色合いの違いがハッキリしていて大変興味深い 方や秘めた"白"だとすると、さとうは、"青い炎"のような鋭さを抱かずにはいられない 芝居俳優からのピンク女優への変遷が、その蓮っ葉さが良い具合に演技に艶っぽさを纏わせていて、決して言われたとおり演技する以上の情念を訴えかけてくる事に唯々驚くばかりだ
ドラマの方だが、確かに他のレビュアーさんのご指摘の通り、なんで無理心中を図らなければならないのかの明確な理由を描いていない為、2人の兄弟が単に昔を懐かしみ、伴すれば同じ女性を評するような構図になってしまうことに、男という性の醜い部分が鼻をつく物語になっていることは否めない 身体の特徴等や、プレイの中身迄共有してしまうことに、同性としても居心地が悪いのは正直だ
ただ、前提としてこの二人はもう未来がみえていない 完全に腐ってしまっていてそれこそクリエイティヴな仕事からの排除される立場なのである その先に待っているのもカタギの仕事等はもうマトモじゃない二人にしてみれば異世界だ 実際、違法薬物を扱っているのもとっくに片足を突っ込んでいる証拠 子供迄こさえたのに、一人は堕胎で、一人は流産 家族を形成できないという致命的欠陥(勿論、二人の主観的思想なので、一般的ということではない)が心に魚の骨のように突き刺さって取れない"原罪"として生き続けるしかないのである
そんな二人が唯一幸福だった一瞬 それが"祥子"という女神だったのである 二人ともそれ程人を愛するということに不器用というか、愛情という資質が著しく欠けてしまっていたからこそ、そのふり返りが映像としてカラーに映る程、鮮明に気付かせてくれているのであろう 「愛して」いたんだと・・・
二人が韓国居酒屋から戻った部屋では中国人留学生の女性が友達を連れてきておっぱじめている いつだって女性の方が逞しくしなやかだ 男は眺めるだけ、又は性愛の道具としての価値でしかない ビデオカメラを撮る側から撮られる立場への屈辱 なんで親友と一緒に昔の小説みたいに手首を縛り合いながらの心中なんて古くさいことをしでかしたんだ、じゃ、自分もこの女の首を絞めながら一緒に死ぬことを頼んだら、女からは「もう死んでるじゃない」とにべもない始末・・・ 幻となって現れたクライマックスシーンは、もう浮き上がることはない、腐敗した部屋での、想い出だけに縋る悲しい未来を暗示させる、しかし二人にとってはそれが幸せなのかもしれない、なんとも救いようのない腐敗臭が漂うバッドエンドであり、決して人生には輝かしさだけではない、香ばしさを教えてくれる作劇であった
コメントありがとうございました。冒頭に近いあのシーン。いまおかしんじは特徴あるのですぐわかりました。殴りかかったのはたぶん川瀬陽太です。あまり意識してませんでした。おっさんのケーフェイ、天然☆生活、激怒など主演作はだいたい観ております。あんまりいろんな映画で見るもので、もう近所のオジサンとか親戚の従兄弟のような感じです。その他にもピンク映画出身監督が友情出演という名の脅迫オファーで出ていたみたいですね。