キャロル・オブ・ザ・ベル 家族の絆を奏でる詩(うた)のレビュー・感想・評価
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一定の理解がないと理解がハマる映画なので注意。
今年228本目(合計879本目/今月(2023年7月度)14本目)。
(参考)前期214本目(合計865本目/今月(2023年6月度まで))。
1日に4本見た中で、すべて違う映画館というのも珍しい気がします。
いわゆる世界大戦の間の、ウクライナ・ポーランド、ユダヤ人どうしの関係、および、その戦争に積極的に関与したソ連、ドイツ等が絡んでくる映画です。お話自体は架空のものですが、参照されているソ連・ドイツ等は当然史実通りですし、映画内で示されている、3民族どうしの対立等も史実通りであるので、「ドキュメンタリー映画、史実ものではないが、それに準じる」扱いを受けるのかな、というところです。
ユダヤ人の迫害に関しては多くの方が知っていると思いますが、ウクライナとポーランドも実は仲が良くなく(ウクライナ・ポーランド戦争)、それは映画内でも示されます。ただ、それは(世界大戦といった規模とは比べ物にならない、ある程度の)民族間対立といったものから生じたものであり、そこに忍び寄るソ連(現ロシア)、ナチスドイツに対抗するために団結していく姿等が論点になってきます。
映画内では特定の語はそれほど出てこず、歴史に関して深い知識は求められませんが、この3民族は程度の差はあってもお互いに嫌いあっていたし、それは領土問題であったり宗教問題であったり(映画内でもカトリックかどうか(換言すれば、言及はないが、プロテスタントかどうか、ということ?)といった宗教論的なお話も出ます)するところ、それらの説明がかなり少ないので、パンフレット購入必須かな…という気がします。
一方で、やはり史実通りに取れば、この時期(日本では、7~9月頃)に多く、ナチスドイツものの映画は放映されますが、ある程度ナチスドイツに関しては知っている方も多く、一般論的な見方ができますが、ソ連のそれ(侵略)に関してはそれほど高校世界史までも含めても扱わず(当然、ポウクライナ・ポーランド戦争等も出てこない)、ここで、リアル世界を見渡すと、確かにロシア(旧ソ連)に対する嫌悪感というのがあるのは程度の差はあっても事実ですが、いかんせんこのソ連の「当時の」扱いについては高校世界史でもそれほど学習せず、ソ連パートの部分は理解が困難です(ただ、ソ連にせよロシアにせよ、結局は侵略目的だっし、映画内でも描かれるように、原始的、あるいはソ連式の共産党がどうこう、といった、ソ連(ロシア)、中国等で見られるいわゆる「共産党もの」である点は理解が可能です)。
※ 日本共産党はその影響を多少は受けつつも、人権侵害を是としているものではない、という当然の理解にも注意は必要。
これらの説明が大半ないので、まぁドイツパート、ユダヤ人迫害の部分は十分理解ができても、ソ連に関してはやや発展知識だし、ましてウクライナ・ポーランド戦争にいたっては知っている方は少ないのではなかろうか、と思えます(私も知らなかったので、いろいろ大阪市立科学館のネットサービスで調べてやっとわかったくらい)。
これらまで考えると、やや(リアル世界の情勢なども勘案して)チョイスされたのだろうという点は理解可能ですが、やや説明不足にすぎる点もあり、難しいところです(事前にいろいろ調べたり、「大人のための世界史」といったたぐいの復習本を読んでいるだけでも違います)。
採点に関しては以下を考慮したものです。
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(減点0.3/一部の字幕・描写がどうしてもわかりにくい)
ウクライナ・ポーランド戦争に関してはそれほど一般常識とは言えないし、カトリックうんうんは、結局「カトリック」という語が出ることの裏返しとしてプロテスタント教義との信仰対立等があったのだろうと思いますが、この説明が何もないので、相当知識があるかある程度推測してみる必要が生じます。
幸いにもシネマートでは見る前の時間つぶしとして映画の概要を紹介する壁紙ポスター等が張られていたので何とかなりましたが、それは映画館のサービスであり、すべての映画館がそうであるとは限りません。
ただ、日本で高校世界史で扱う範囲では(通常)ないという理由のみで日本公開版だけ差し替えたり説明を入れることも著作権の関係からできず、減点幅はこの程度です。
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無垢
【”ウクライナ魂。”第二次世界大戦時に旧ソ連、ナチスに占領されたウクライナで一組の夫婦が多大な犠牲を払いながらも行った崇高な行為を、美しいメインテーマで彩った哀しみと仄かな未来を感じさせる作品。】
ー ご存じの通り、ウクライナは第二次世界大戦を挟む6年間、ポーランド、ナチス、旧ソ連に占領されていた。
今作は、1939年のポーランド領スタニスワブフ(現、ウクライナのイバノフランコフスク)のユダヤ人一家の家に店子としてやって来たウクライナ人一家、ポーランド人一家が最初は違和感を感じつつ、徐々にウクライナ人の主婦でありピアノの先生でもあるソフィアが催した食事会を切っ掛けに親しい交流が始まる所から、物語は始まる。-
◆感想
・ウクライナ人夫婦、ミハイロとソフィアの娘を筆頭にユダヤ一家の娘、ポーランド一家の娘が奏でる”ウクライナ民謡”をベースにした、幸せが来るという”キャロル・オブ・ザ・ベル”の哀愁を帯びた美しき歌のアンサンブルが素晴しい。
・ユダヤ人夫婦は、ナチスに連れていかれ娘をソフィア夫婦に託し、ポーランド人夫婦も旧ソ連に連行される際に娘を託す。
そして、ソフィア夫婦は自らの二人の娘と共に更に二人の異国の娘を我が子のように匿うのである。命の危険や少ない食料の中ナカナカ出来る事ではない。
・ソフィアの下の娘はずっと家に居る事に飽きて、外に出ようとするが鼠に噛まれ、父が町医者に必死に依願するもクスリすら貰えず、絶命するシーン。
ー あんなに小さいのに、余りに可哀想で、もう涙腺が・・。ー
・ナチスが一々点検に来ると、ソフィアたちはユダヤの娘ティナとポーランドの娘、テレサを大きな時計の裏に作ってあった金庫に入れ匿う。
ー アンネの日記を思い出す、ハラハラシーンの連続である。-
■そして、ミハイロはある日ナチスに政治犯として銃殺されてしまう。
その風景を見たソフィアは、家に戻り涙を流しつつ、自分や娘達の服を洗濯板で洗うのである。何かしていないと、オカシクなりそうな気持が強く伝わって来る。再び、涙腺が・・。
・ナチスが撤退後、旧ソ連が再びやって来る。ナチス夫婦はどこかに連行されたようで、ソフィアが歌を教えていた少年が、家に戻って来る。その時、ソフィアはその少年も匿うのである。
ー 人間としての器の大きさ、心の温かさ、寛容さに深く頭を垂れる。抗議する娘達にソフィアが言った言葉。”この子に罪はないんだよ。”-
■だが、ソフィアたちも旧ソ連の収容所に連行されてしまう。ドイツの少年を情け容赦なく撃ち殺す旧ソ連兵。
そして、娘達とソフィアは離れ離れに。
娘達が、旧ソ連の高官たちの前で合唱を披露するシーンで、ソフィアの娘が毅然として手を上げ”キャロル・オブ・ザ・ベル”を歌う。ティナとテレサも声を出して歌う。だが、ソフィアの娘ヤロスラワは何処かに連れられて行ってしまう。
そして、荒れ果てた強制収容所内で、一人ベッドの下のフレームをピアノの鍵盤に見立て、音無きピアノを弾くソフィアの姿が切なすぎるのである。
<今作は、観ていて非常に悲しいシーンが多いが、中盤から挟み込まれる1970年代のNYの空港でのシーンに、仄かな未来を感じるのである。
そしてラスト、旧ソ連に粛清されたと思っていたヤロスラワが、ティナとテレサと再会するシーンには、もう・・。
今更ながら、戦争は哀しみと憎しみしか生まない事を再認識した作品でもある。>
■今作は、ウクライナ出身の女性監督、オレシアさんが、現在の状況を予言したかのような作品でもある。
どうかこの世界から戦争がなくなって平和な世の中になりますように
祈りにも似た思いで、この映画を見終えた。
世界中の人々がこの映画を見て、同じ思いを持ってくれたらと願う。
人間は何度同じ過ちを繰り返せばいいのだろうか。
追記(2回目を見て)
この映画は、今、見て欲しい映画です。
私がこのレビューを書いているこの瞬間にも、この映画と同じようなことが行われていることでしょう。
多分、このレビューを読んでいるみなさんたちは、映画好きの人が多いと思います。この映画やレビューを見てくださった方々が、この映画の紹介をしてくださって、この映画が一人でも多くの人々に届いてくれればと願っています。
追記の追記
ヤロスラワ役やテレサ役の女の子たちは、ロシアの侵攻後は、ポーランドやドイツに逃れて元気に暮らしているそうです。
子供らよ!
揺るがないウクライナのアイデンティティ
第二次大戦下のポーランド(現ウクライナ)を舞台に、ウクライナ、ポーランド、ユダヤ人の家族を描く。あまりの救いの無い展開に気が滅入ってしまう。タランティーノに『イングロリアス・バスターズ』をセルフリメイクしてもらって、再度映画の中で虐待者を殲滅してほしいと心底願ったほど。
ウクライナほど戦禍に見舞われた国はない。ソ連やドイツによる迫害を受け続けた三か国の人々。彼らの唯一の癒しで生きる希望の糧となるのが、ウクライナ民謡「シェドリック」。この歌は、ロシア侵攻を受けている現ウクライナ人達のアイデンティティの証となっている。いくら住まいを破壊されようと、いくら虐待されようと、そのアイデンティティは揺るがない。
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