「痛いほど共感できる両親の心の機微を突きつけられ『空白』以上に緊張せざるを得ない作品でしたね。」ミッシング 矢萩久登さんの映画レビュー(感想・評価)
痛いほど共感できる両親の心の機微を突きつけられ『空白』以上に緊張せざるを得ない作品でしたね。
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今年最後の目黒シネマさんにて『~光と影のはざまで息をする~』(12/26(木)~12/28(土))と題した『ミッシング』『あんのこと』2本立て鑑賞。
(ネタバレ有)
『ミッシング』(2024)
『犬猿』(2018)『空白』(2021)の𠮷田恵輔監督最新作。
娘の失踪事件に翻弄される母親・沙織里(演:石原さとみ氏)と夫・豊(演:青木崇高氏)をはじめとするその家族と、視聴率至上主義との板挟みのなか誠実に取材を続ける地元テレビ局記者・砂田(演:中村倫也氏)の姿が描かれる作品。
誰かの人生を追体験できるのが映画の魅力でもありますが本作は真逆。
親としては絶対に経験したくない娘の失踪、痛いほど共感できる両親の心の機微をこれでもかと2時間突きつけられ、同監督『空白』以上に緊張せざるを得ない作品でしたね。
中村倫也氏、青木崇高氏、森優作氏の演技も素晴らしかったのですが、とにかく石原さとみ氏のお嬢様イメージから脱却した人間の本能むき出しの体当たりの演技は圧巻、女優として一皮も二皮も剥けましたね。
もう一つの話の軸になる視聴率至上主義の局上層部の意向で偏向報道の指示に抗う砂田氏と匿名SNSによる誹謗中傷という社会問題もうまく織り込まれ訴えかけていましたね。
映画としては娘の生存を暗示、仄めかすラストも個人的には期待しましたが、それを敢えてしなかった監督の強い意志と思いは、印象強く作品をさらに昇華させましたね。
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