劇場公開日 2024年5月17日

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「人間を見事に描いた傑作です」ミッシング バリカタさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0人間を見事に描いた傑作です

2024年6月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

言葉での説明が少ない作品大好きです。
映像でしっかり語ってくれる映画は心地良い
です。

うーーむ、現時点で邦画のベスト級の
作品でした。

吉田さんって、なんていうんでしょ。
人間の心の声が聞こえる方なんでしょうか?
空白、Blue、神は見返りを~などなど、
過去作品でも、周辺や不特定の人間たちの
本心(悪意?)に翻弄される
姿を見事に描き、それがまぁ腹の中が
ズゥゥゥンと重くなるんですよね。
だって現実世界だってきっとそうだから
人間の嫌ぁぁぁぁな、どす黒さを
リアルに滲み出してくるんですよね。

なんだろうなぁ。。。会社などの人間関係
の中で聞きたくもない陰口を耳にした
時のような感じに似てるかなぁ・・・。

ほんのちょっとの善意と大量の悪意に
包まれているこの世の中をこれほどまでに
見事に描けるなんてすばらしい。
そして、変わっていく周辺の人間たちの
当事者たちとの関わり方、興味の温度差が
産み出していく違和感と不協和。
あぁ。。。居心地が悪い描写の連続で
ひりひりする。
・・・やってること同じなのに、世間との
意識のズレは当事者に狂気に感じてしまうなんて。

けど、これが世間、人間社会なんだと思います。

困っている人が追い込まれていく、マイノリティが
生きにくい、決して悪いことをしているわけでは
ないのに。
それが今の世の中なんでしょうね。

徐々に徐々に追い込まれていく様は胸が
締め付けられていきます。ラスト近く、
朗報を受けて警察署に駆け込んだ主人公が
受ける仕打ちと後ろ姿に涙が止まりません。

人間が巻き起こす様々なネガティブを
これでもかと巧みに描いてくれた本作ですが
でも最後は人間の強さを信じたい・・・という
メッセージを感じるエンディングでした。
不条理に立ち向かう強さ。

扇風機のブルブル音にさえ反応していた沙織が
見せるラストシーンの姿にそれが表れていると
おもいます。
どうかどうか、彼女らに心の平穏が訪れますように。

傑作です。必見です。
あ、石原さとみさん、熱演です。
これまでの評価変わりました。
実生活でも母になったからかなぁ?
素晴らしかったです。

バリカタ