「何かと文句をつけたがる人たち」ミッシング 山の手ロックさんの映画レビュー(感想・評価)
何かと文句をつけたがる人たち
吉田恵輔監督が「空白」に続き、オリジナル脚本で今の日本社会の不寛容さを描く。
石原さとみの演技が評判になっているが、喚き、暴れる姿は、共感を拒むほどに強烈。警察署のシーンは見ていて辛い。パブリックイメージを捨てて汚れ役を演じるというのでなく、本当にその境遇にあるかのよう。
同性としては、父として夫としての青木崇高、叔父としての森優作、組織人としての中村倫也それぞれに共感できた。特に青木崇高の煙草のシーンとラストの嗚咽は、胸に響いた。
あと、クレジットを見て、刑事役が柳ユーレイだったことに気づいて驚いた。
物語はシンプル、ストレートで、変なギミックはない。謎解きサスペンスではないので、ああいう展開しかないだろう。それでも生きていくという、救いらしきものは感じられて、後味は悪くない。
物語の後景になっているが、スーパーで、警察署で、商店街で、大声で文句をつける人が登場する。吉田監督ならではのオフビートなユーモアを感じさせるシーンでもあるが、対面にしろ、ネット上にしろ、何かと文句をつけたがる今の日本社会の姿を見せられて、身につまされる。中村倫也の同僚たちが居酒屋で市長のスキャンダルで盛り上がっていたが、かつては内輪の飲み会の話題程度のものが、そのまま世の中に垂れ流されてしまいかねないのが今の日本社会。
あらためて、知らない人にも優しくしたいね、と自戒を込めて。
コメントする