劇場公開日 2024年5月17日

「何かできることはありますか。」ミッシング グレシャムの法則さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0何かできることはありますか。

2024年5月18日
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鑑賞方法:映画館

『特段歪んだ思想や強い憎しみを抱いているわけでもないごく普通の人間でも、自ら考えることを停止し、上から言われるがまま命令に従えば、巨大な悪を成し遂げてしまうことがある。』

これは、悪の凡庸さ(陳腐さ)というキーワードで表現されるアイヒマン(第二次世界大戦中、ユダヤ人大量殺戮において重要な役割を果たした男…1960年、潜伏先のアルゼンチンでモサドにより、拉致、逮捕され絞首刑となった)についての叙述である。

悪意しか感じられない書き込みを行っている人たちも、〝上からの命令〟という部分が〝炎上圧力〟とか〝悪ノリ〟に置き換わるだけで、自らの思考停止に気付かないまま(或いは気付かない振りをしたまま)巨悪に加担していることでは、変わらない。

面白おかしく伝えるのが使命だと勘違いしたメディア関係者も、極めて凡庸な人たちなのに、巨悪を成してしまうということでは同じ。

愛する人や大切な人を理不尽な事故や事件で失うことの傷みは、どれだけ深いのか。
当事者が負う罪悪感や取り返しのつかないことへの後悔や絶望感。
当事者ではないものができることは、少しでもその傷みを理解しようと努めること、無力なのは分かっていても、決して傷つける側の人間にはならないでいること。

そういう思いがあれば、たった一言であってもどれだけ救いとなるのか。とても心に沁みました。

自分にできることは何かありませんか?

グレシャムの法則
トミーさんのコメント
2024年5月22日

コメントありがとうございます。
監督の意図する所だったんだと今にして思います。自分はすっかり消耗してしまいました・・。

トミー
トミーさんのコメント
2024年5月22日

共感ありがとうございます。
無意識の内に、悪気は無くて、と良く言われますが、コンビニの輩や待ち合わせすっぽかし、イタ電は悪意しか感じられない。一方的に攻撃される悔しさ、無力感に自分もダメージ受けました。

トミー
トミーさんのコメント
2024年5月22日

自分がああなったらどう? 本当にそんな目に遭わないと理解や想像出来ないのか、と怒りを覚えました。夫が号泣してしまったのは緊張が一瞬ほぐれたんでしょうね。

トミー
ゆきさんのコメント
2024年5月21日

おはようございます。
とても考えさせられるレビュー噛みしめました。
個人的に少々うがった見方をした所もあった本作でしたが、グレシャムの法則さんの仰っているように、私も人を傷つける側の人間にならないように生きていきたいと思いました。
そして、実際に起きているこの様な失踪事件、事件ならば尚更!
犯人は決して逃げられないんだ!という事を、日本の警察には証明して欲しい!必ず逮捕して欲しいとも思いました。
被害者の方々の元に1日でも早く希望の虹がかかる事を祈らずにいられません。

ゆき
みかずきさんのコメント
2024年5月18日

共感ありがとうございます

いつもながら、論理的に深い持論を主張するレビュー、
冴え渡っています。

本作、当初は、沙織里、豊夫妻は、我が子の失踪事件の両親として孤立していたと思います。

しかし、同様の失踪事件が起きた時、我が子の失踪事件と関係すると判断し沙織里たちは、事件解決のためにビラ配りという行動をします。
結果として、事件は解決し、母親から、沙織里たちの思想事件への協力申し出があった時、気が付いたと思います。

悲劇の主人公では駄目で、自分達の苦悩を他者にさせないために、自ら行動することの大切さを。

仰る様に被害者への周りからの声掛け、寄り添いは大事だと思いますが、被害者自身が自ら立ち上がる意志を持ち行動することが、
被害者の再生、再起には不可欠だと感じました。

長文で失礼します。
では、また共感作で。

ー以上ー

みかずき