「TV・SNSの闇に立ち向かうには」ミッシング ヘルスポーンさんの映画レビュー(感想・評価)
TV・SNSの闇に立ち向かうには
吉田恵輔監督と白石和彌監督の映画が同日公開というバチバチの劇場にてこちらを先に観賞。
石原さとみさんが自ら吉田恵輔監督に直談判したということで、何という母親役を選んだんだという驚きと、自身が母親になって初めて挑む作品が子供が失踪して心身共にズタボロになっていく母親役って...青木崇高じゃないけど、あなた凄すぎるよ....
このまま一体どうやって収束していくんだという話ですが、ところどころ入るメンタルを抉りつつ笑わせようとしてくるこの腹黒演出はさすが吉田恵輔監督だなぁと思いました。
「えっ、虎舞竜。」とかお前(カメラマン)やめろ!笑 本当に!!笑
吉田恵輔監督は本当に役者が好きなんだろうなっていうくらい。キャスト全員が素晴らしい演技をしていました。
TV業界、SNSそれぞれの闇にズタボロにされていく夫婦。何故人はこんなにも無責任に人を傷つけられるのだろう。
それでもやっぱり人の優しさを信じてしまうどうしようもない生き物なのです。
そして主人公・沙織里の弟・圭吾を演じた森優作さん。とんでもない方が出てきてしまった。圭吾はいわゆる普通の人なのですが、一度誘拐を経験・そしていじめを経験し精神を病み、いわゆる"普通の人"という範疇から外れてしまう。そんな彼らが普通に生きていくには世の中はとても残酷である。本作ではさらに家族である沙織里からも必要以上に責められてしまう。そんなに責めたら本当に死んでしまうぞ!と怖かったのですが、そんな彼の行動により思わぬ方向へ物語が進むが、やはり上手く進まない。現実は甘くない。ここまで散々リアルを浴びせ続けた上での姉との車のシーン。これは泣くだろ!そして何てタイミングでBlanc("空白ネタ?")音楽かけるんだよ。ホントに沙織里と圭吾と一緒に泣いてるんだか、笑ってるんだかわからない。社会のレールから外れた人を優しく救い上げる演出はいつも大好きだ。
中村倫也演じる記者の砂田、そして主人公の沙織里、彼らは今も美羽を探し続けている。そして戦い続けている。そんな勇気をもらえるラストだった。
映画に起承転結そして話が解決することを求めている方には受け入れられないだろう。観る人を選ぶタイプの映画だ。
私らこの映画で、忘れられないシーン・演技がいくつもある。映画は物語だけじゃないなと思いました。
この感じ、誰かの映画に似てると思ったらダーレン・アロノフスキーだ。「ブラックスワン」、「レスラー」、「ホエール」だ。
彼も役者を追い込み、リアリティある迫真の演技を引き出す監督で、本作でも劇中で記者とカメラマンの前でのインタビューなどで沙織里に多少の演技を求めるシーンがあるのだが、このシーンは娘を失った可哀想な母親を演じる母親を演じる石原さとみという二重構造になっていて、これは相当難しいシーンだったんじゃないかと思う。(公式HPのプロダクションノートでもその困難さを感じました。)結果、芝居っぽさとリアルな感情が折混ざる大変素晴らしいシーンになっていて感動した。
今年ベスト!