「コヴェナントで戦争がおこる」コヴェナント 約束の救出 おひさまマジックさんの映画レビュー(感想・評価)
コヴェナントで戦争がおこる
米軍によるアフガン撤退はたった2~3年ほど前、感覚的にはつい最近の出来事であり、それによる影響として、マクロ的にはアフガニスタン国内の情勢不安定化や、ミクロでは元兵士たちの心理的打撃(トラウマ)の問題などが起きており、いまだ戦後期の最中といったところだ。
いわゆる、銃身も冷めやらぬタイミングで、この作品を作り上げたガイ・リッチー監督の本気度は想像に難くない。そうまさしく、この映画が描く綱渡りのような命のやりとり、観ているこちらも過呼吸になりそうなほど伝わってくる、ヒリつくような恐ろしさ、こわさ、それらの感覚のリアリティが物凄い。このリアル感が出せるのは現在進行系の出来事ならではか。
エンターテイメントとして捉えるなら、この作品は超一級の面白さ。物語としても、事実は小説より奇なり、を地でいっていて、戦争モノがキライでなければ最高級のハラハラ感を味わえる映画だとおもう。ハードボイルドな絆も、陳腐な友情物語のようにはなっておらず、一筋縄ではない関係性が色付けされ、シブい。
ただ…
事実に基づいている内容がゆえに、文字通り「楽しむ」ことができない。
私はそう感じてしまった。平和な日本の映画館で、のんべんだらりとこの映画を観ていることが段々と辛く感じた。
古い話だが、スタローンがアンチヒーローとともに描いたアフガニスタンは、アメリカの敵の敵は味方という時代だったがゆえに、ともに戦う牧歌的だが勇敢な民族にみえた。今ははたしてどう見えているだろうか。同じように、イスラエルは、パレスチナは、ロシアは、ウクライナは、どう見えているか。
いま各地で起きてしまった戦争は、どれもコヴェナントを巡る、もしくは権力者がそう解釈したことで起きている。このタイトルを付けてきたガイ・リッチーのセンスは絶妙だ(主人公にとっての、ということも伏線)。
折角、平和な民主国家の日本にいるのだから、過去を水に流さず学び、正愚を見分けるアンテナをおろさず、正しいものの見方を持つ有権者でいたいとおもう。
本作品は、願わくば完全フィクションで観たかった。
それを言うのは矛盾だし、贅沢すぎる注文と思えるほど、突き刺さる映画だった。
>いま各地で起きてしまった戦争は、どれもコヴェナントを巡る、もしくは権力者がそう解釈したことで起きている。このタイトルを付けてきたガイ・リッチーのセンスは絶妙だ。
書かれているとおりだと共感しました。イスラエルとパレスチナの戦争は、まさにイギリスの2枚舌の「コヴェナント」で引き起こされたもの・・・。監督のメッセージを感じざるを得ません。