「盤上の敵」ナチスに仕掛けたチェスゲーム 梨剥く侍さんの映画レビュー(感想・評価)
盤上の敵
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なぜ最近の邦題は余計な説明的なフレーズを付け足すのだろうか。そもそもナチスにチェスで何か仕掛けたわけでもないし。
ツヴァイクの原作は船上のチェス対決がメインだが、映画は換骨奪胎してその部分を監禁状態の主人公の妄想に改変している。そのことでナチスによるユダヤ人迫害というテーマが重みを増したとも言えるが、一方で期待したチェス映画としての側面は後退した。
主人公がホテルの一室に幽閉されている間、とにかく読む物を渇望するというのはよくわかる。活字中毒を自認する芦田愛菜も、読む物がないと食品成分表ですら読んでしまうと言っていた。私にも少なからずそういう傾向はある。
ブラジルに亡命していたツヴァイクは本原稿を書き上げていくつかの出版社に送った翌日、妻とともに自殺したという。ナチスの魔の手からはとりあえず逃れていたのに、どうして?と思う。
今夏の世界水泳のアーティスティック・スイミングのチームフリーで日本は“チェス”をテーマにしていた。と言っても水着のデザインのほかはよくわからなかったが。何ならフォーメーションでカスパロフ対カルポフの棋譜を再現するとかしても良かったのに。
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