「追いこまれたネズミに噛まれたネコが感じる恐怖」劇場版ブルーロック EPISODE 凪 スモーキー石井さんの映画レビュー(感想・評価)
追いこまれたネズミに噛まれたネコが感じる恐怖
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本作は全国から有望なFWの選手「のみ」閉鎖空間に招聘され、最後の一人になるまで選考が行われるサバイバル合宿で巻き起こる青春群像劇。負けたらサッカー人生そのものが終わるという極限の中、
選手たちは自ら考え、サッカーとは何かという固定観念さえ壊し、各々が多種多様な「エゴイスト」に成長していく物語。
原作の元々の主人公は潔世一という一見すると普通の選手だが、
空間認識能力に長け、「ゴールの匂い」を感じ取る特性を持っている。
幼いころよりサッカーに慣れ親しみ、情熱を捧ぐ熱血漢。
一方、本作の劇場版は主人公を「交代」。
原作の描写を潔のライバルである凪誠一郎が担当する。
彼はずば抜けた身体能力とサッカーセンスがあるにも関わらず、
あらゆることをめんどくさがり、サッカーに情熱を注ぐ連中をどこか乾いた目で見ているという男である。
前半45分はそんな男がサッカーを始めたきっかけ
やこの「ブルーロックプロジェクト」での「彼」の出来事や変化を
描き、
後半45分は原作の主人公潔のチームが満を持して登場。
原作でもターニングポイントである潔率いるチームZと
凪擁する無敗の王者Vチームの試合展開が描かれる。
私は本作の劇場版を見た後に、原作アニメも視聴したのだが、
まったく同じ試合描写を視点を変えることでこんなにも感じる印象が変わるのかと
改めて感嘆した。
ライバルチームから見える主人公チームの
「覚醒」の瞬間がこんなにも怖いものなのかと。
視点(主人公)を変えるだけで、原作で応援していた主人公の佇まいや覚醒が
とても不気味に感じ、もはや「恐怖」だ。
本作は追い込まれたネズミが猫を噛む事象を猫側の視点で
観られるわけだ。
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