ハンガー 飽くなき食への道
配信開始日:2023年4月8日
解説・あらすじ
Netflixで2023年4月8日から配信。
2023年製作/130分/タイ
原題または英題:Hunger
配信:Netflix
配信開始日:2023年4月8日
スタッフ・キャスト
- 監督
- シティシリ・モンコルシリ
- 製作総指揮
- コンデート・ジャトゥランラッサミー
- 原案
- コンデート・ジャトゥランラッサミー
- シティシリ・モンコルシリ
- 脚本
- コンデート・ジャトゥランラッサミー
配信開始日:2023年4月8日
Netflixで2023年4月8日から配信。
2023年製作/130分/タイ
原題または英題:Hunger
配信:Netflix
配信開始日:2023年4月8日
題材からして魅力的。みんな大好き「ごはん」。生理的な欲求を満たすだけではなく、誰かと一緒に食べる、美味しいものを食べる、いろいろなものを食べる、珍しものを食べる。とにかく人間は「食」に様々な価値を見出す生き物。
その「食」に掛けるシェフのアツい情熱と、それを食べる客の貪欲が戦い合う・混ざり合って織りなされる物語。タイの映画だと思うが、映像やストーリーも工夫されていて最初から最後まで楽しめた。
一流シェフであるポールの料理は斬新で見る者のド肝を抜くが食べるシーンがかなりグロテスク。食べる側が貪るように、欲するように喰らいつき、それだけ渇望される料理。部下にも徹底した姿勢で臨み、金を払う客側のモラルは求めない。ラストの対決は違う終わり方が見たかった。オーイがポールを打ち負かすシーンを。食べさせてやるという料理人の姿勢ではなく、食べる人を思って、その人たちが望むものを作り、愛される料理を作る料理人こそ一流なのかな。特別なシェフ、ポールは孤独だった、やはり愛されないと足元すくわれる。オーイはそれがわかったから自分の居場所に戻ったのだろう。
主役オエイは大衆食堂で調理する女性だが、高級ケータリングサービスのシェフ・ポールに見出されて、そこで働くようになる。今の仕事があるのになぜとも思うが、家族が営んできた食堂の後継者として、恐らくは内心忸怩たる思いで働いてきたことがわかる。友だちの多くは企業で働いていて不平は言いながらも充実しているのに、自分はこんなところで何でくすぶっていなければならないのか、そんな思いが誘いに乗った理由だ。
つまり、自分にはもっと価値があるはず、と思って飛び込んだ先で「調理」だけにおさまらない苦闘・苦悩・矛盾に苛まれる話。
エリート達と食事にまつわるイヤ〜な描写はとても社会性があるし、グロテスクでもある。特権階級の傍若無人さは、タイ社会でどこまでリアリティーがあるのかわからないが、いるだろうね程度の現実感はあるし、なにより戯画的で「嫌ら楽しい」表現だ。
主役を演じる女性(タイの名前は聴き馴染みがないので表記しないが)は、市川実日子と吉田羊を混ぜたような面相を持っていて、激しい泣き笑いの演技はしないのに、彼女が何を思っているのかがよくわかる。
ストーリーは、成功をつかむためにどんな努力もいとわないし、それがのちに成功につながる、というものではない。そうだったとしたら、この作品の価値は100分の1ほどになっていただろう。進んでは前のエピソードの反映が示され、また進んでは別のエピソードの影響が本筋に及ぶという、いわゆる伏線回収が何度か行われ、しかも作品全体としてそれらがどれも意味を持つ。
周りの人物の重層的な描かれ方も素晴らしく、オエイは決してただ「努力する人」ではないし、ポールは当然として、次のレストラン経営者も表面上はいい人っぽいけど、なぜ彼女を雇ったかというと「若くて容姿がいい」だったりする辺りが嫌な感じ。
どれだけ仕事に真剣になっても、その仕事の先にある「渇望」が身にするためでなく単なる消費(超絶豪華な消費!)であることを知ってしまったあと、それでも続けるとしたらどんな気持ちで対していけばいいのか。きっとそれが「失う」ことなのだろう。