劇場公開日 2024年8月9日

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「フィクションと史実の融合と峻別、そして夢」夜の外側 イタリアを震撼させた55日間 talismanさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0フィクションと史実の融合と峻別、そして夢

2024年8月26日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

笑える

難しい

まるで知らなかった事件についての映画を見るのは難しい。当時のイタリアの政治の空気、冷戦下の世界、アメリカ合衆国とソビエト連邦の綱引き、NATOの中のイタリアの立ち位置、そしてカトリックに代表されるイタリアにおけるキリスト教の重みが分からないから関連資料を読んだとしてもうまく想像できない。ただ、戦後「西側」諸国の中で共産党が勢いを得ていたおそらく唯一の国がイタリアであることとイタリアは当時すでに死刑を廃止していた。その意味は大きいと思った。死刑を廃止した国で政治家が極左グループに殺されていいのか?生きたいと思う自分は許されないのか?党の人間誰一人信用しない、名前まで挙げて憎いと、穏和に描かれていたモーロに言わせ、「生きて戻った」モーロには「赤い旅団」への感謝の意を述べさせるベロッキオ監督。ベロッキオ監督はタランティーノ監督なんだとも思った。歴史を眺めこうだったらよかったのに、こうならいいのに・・・、想像で映画をたっぷり膨らませて観客に謎かけしながら夢を紡ぐ、映画を知り尽くしている二人。

モーロ夫人のブイ、教皇のセルヴィッロ、モーロのジフーニ、3名の名優がこの映画に華と強いアピール力を与えた。そして政治家達の海千山千の面構え!モーロ夫人は全てわかっていた。その貫禄と政治家達への対応ぶりが堂にいってかっこよかった。

予告編と本編の前編で流れるスペイン語の歌詞付きのリズミカルな曲が不思議な雰囲気を醸し出していた。胡散臭い人が出てきたり、役者は真面目な顔なのになぜか可笑しい場面もあって重いだけでない、耐えられる軽さもある映画だった。時間軸動かしや複数の視点からの描写や語りが好きなせいか上映時間の長さは意外に苦にならなかった。難しいが面白い映画だった。

talisman
Bacchusさんのコメント
2024年8月27日

何も知らないでみるとどういうこと?となる作品でしたよね。
面白いところも結構あったけれど私には少々クドかったです。

Bacchus