「1978年、伊元首相アルド・モーロ(ファブリツィオ・ジフーニ)が、...」夜の外側 イタリアを震撼させた55日間 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
1978年、伊元首相アルド・モーロ(ファブリツィオ・ジフーニ)が、...
1978年、伊元首相アルド・モーロ(ファブリツィオ・ジフーニ)が、極左武装集団『赤い旅団』に誘拐される。
モーロは、キリスト教民主党(略称:DC)の党首であり、政界のフィクサー。
ローマ教皇パウロ6世(トニ・セルヴィッロ)とも親しい間柄である。
当時の伊政界は混迷を極めており、保守派キリスト教民主党政権与党であるが過半数に満たず、伊共産党と連立で政権を担おうとしていた矢先のことであった・・・
といったところからはじまる物語で、6章仕立てで描いていきます。
章のサブタイトルは数字のみだが、各章に中心となる人物がい、彼(彼女)らの視点で物語が語られます。
第1章はアルド・モーロの視点で、誘拐されるまで。
政情などの背景が描かれます。
第2章は内務大臣コッシーガ(ファウスト・ルッソ・アレジ)、第3章はローマ教皇パウロ6世。
前者は政権の中心人物でかつ事件解決に向けて捜査などの陣頭指揮を執り、後者はキリスト教指導者(かつ政権与党の密接な関係者)としての立場から事件解決に向けての行動を執った。
この第2~3章は、いわば事件の「外側」から描いた部分で、サスペンスドラマで頻繁に描かれる立場といえましょう。
通常のサスペンスドラマとほぼ同様なので、面白いといえば面白いのだけれど、まだるっこしいも言えるかしらん。
ここまでが前編。
つづく後編、第4~5章は、事件の「内側」から描くもので、第4章・犯行グループの女性メンバー・アドリアナ(ダニエーラ・マッラ)
からの視点。
このエピソードが時系列的には最初期からで、シングルマザーが社会変革に燃えてグループに加わるも、徐々にグループ内部の結束が弱まっていく様子などが描かれ、興味深いです。
第5章はモーロの妻エレオノーラ(マルゲリータ・ブイ)。
前半にも少し顔を見せるが、モーロ誘拐後のエピソードなので、被害者家族として憔悴しながらも、気丈夫に振る舞うようすなど、マルゲリータ・ブイをキャスティングしただけのことがあります。
6章は、事件の結末。
ここは特定の視点はなく、いわば監督の視点。
仕掛けが施されており、冒頭、コッシーガほか政府・党の重要人物が病室を訪れるシーンが撮られており、事件の顛末を知っているであろうイタリアの観客は、ある種、疑念のようなものを抱いて観ることになる。
(日本の観客でも、事件の顛末を知っていれば、そうなるのだけれど、わたしは知らなかった(か忘れていた)ので、そうはならなかった)
誘拐事件の結末は・・・
まぁ、事実ベースの映画なので、調べればわかることなので、ここでは省略。
この6章に続くエピローグで、事件後の関係者の実際の映像が用いられているのだけれど、「もし事件の結末が、あれではなかったならば、現在のイタリアは・・・」という監督の思いが込められているように感じました。
5時間40分の超長編ですが、それほど長く感じないのはテレビドラマのような章仕立てにしたことによるでしょうが、同じ時点を繰り返し見せられるので、「ありゃ、またか」と思ってしまうのと、テレビ的なので重厚さが欠けてしまうデメリットもありました。
視点を変えての繰り返し描写を省いての数珠繋ぎ、3時間ぐらいに収まっていればよかったかなぁ、というのが個人的感想です。