映画 窓ぎわのトットちゃんのレビュー・感想・評価
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トットちゃんは小林先生との出会いがあって羽ばたくことができました。自分も誰かの生きる力や支えに少しでもなれるなら良いのですが。
有名すぎて手が出なかった本がいくつもあります。
何度か手を伸ばしてみては、そのつど "今更かなぁ…" と
読む機会を持たなかったタイトルのひとつ。
それがこの「窓ぎわのトットちゃん」 です。
いわさきちひろの表紙イラスト絵も有名です。
今回のアニメ化がいいきっかけでしょ? と自分に
言いきかせ、劇場アニメを観に行ってきました。
(原作本はまだ読んでいません)
◇
鑑賞終了。
この作品を観る上で大事なことがあるかなぁ と。
#色々な場面で心に浮かんだ気持ちが大事。
#浮かんだ気持ちは心に留めておかないと。
#自分の周りにもトットちゃんはいたのかも。
#自分はトモエ学園の側に居たのだろうか…。
観終わって、そんなことを思っています。・_・ハイ
この作品、少しだけ人と違った女の子のお話。
フツーの小学校で持て余されてしまい、ここならばと
訪ねた学校が「トモエ学園」でした。
この学校は鉄道の車両を教室にしているのです。
そこには、トットちゃんにとって大切な人達との
出会いがありました。
・優しく迎え入れた小林先生。
・小児麻痺で右足と左手が不自由な子
・実験の好きな子 etc
家にはバイオリン弾きの父と優しい母もいます。
好奇心旺盛でやや落ち着きの無かった女の子が
自分を認めてくれる人達の中で成長していきます。
と、このようなお話なのですが、時は昭和15年ころ。
日本は戦争へと進んで行きます。
こどもの生活にも次第に陰が落ち始めます…。
◇
主人公トットちゃんこと黒柳徹子さんは今も元気で
ご活躍中なわけですが、現在の、そしてこれまでの色々な
番組司会等で目にしてきた徹子さんに、こんな過去が
あったのかと驚くと同時に、戦争の愚かさを追体験できる
内容となっています。
鑑賞後、やはり原作を読みたくなりまして
ネットで注文をかけました。
届いたら読んでみようと思います。
続編も出ていたのに驚きつつ、こちらも購入。
(今年10月の出版でした。新刊です ・_・)
◇あれこれ(印象に残った場面)
■校庭で水遊び
なにかこう、すごいインパクトのある場面でした ・-・。
気持ち良さそうではありますが、今の時代に同じことを
やったらきっとエライ事になるだろうなぁ… ・_・;
■♪トモエ学園 良い学園♪
いじめっこの暴力に立ち向かったトモエ学園の子たち。
相手が口にする悪口の歌を、逆の良い歌詞にして返すのです。
とても力強く逞しい団結力。痛快な場面でした。
■ひよこ
縁日で売っているヒヨコ。
ひよひよ ととても可愛いです。ですが
あっと言う間に大きくなり、朝から♪コケコッコになるからダメ
…かと思ったら、弱くて育たないから でした。
■15粒の大豆
成長期の小学生にとって、おやつにもなりません…。
食料難というのがやはり戦争の悲惨さの一つです。
仙豆なら一粒で良かったのに…。
◇最後に
この作品の他にも、戦争の時を生きた子供を描いた話はあります。
・この世界の片隅に とか
・火垂るの墓 とか
・裸足のゲン とか
いずれも戦争に翻弄されながら生きる人の話です。
そういった作品の中でこの「トットちゃん」は、現在もご活躍
されている実在の方が主人公ということで、
この子の生きた先は未来繋がっているということを感じながら
読むことが出来るかなぁ などと
そんな事を考えながら本のが届くのを待っております。
☆映画の感想は人さまざまかとは思いますが、このように感じた映画ファンもいるということで。
黒柳徹子はまさにレジェンド
言わずと知れた黒柳徹子のベストセラー「窓ぎわのトットちゃん」の映画アニメ化作品でした。原作の方はまだ自分が子供の頃に出たものでしたが、これまで未読。黒柳徹子の子供の頃の話を小説にした作品で、自由が丘にあった自由な気風の小学校を舞台にした物語であることくらいの知識で観に行きました。予告編を観た感じでは、絵柄も優しい感じで、セリフから受ける印象も極々子供向けの作品であり、普通の小学校では受け入れきれない奔放なトットちゃんこと徹子少女を受け止めてくれた、極めて現代的な学校を巡る話だと思っていました。
しかし実際に観てみると、当初の予想よりもかなり奥深い話でした。昭和8年生まれの黒柳徹子の小学校時代の話であるため、トットちゃんが小学校に入学したのが対米戦争開戦直前の昭和15年。既に対中戦争は10年近くに及んでおり、欧州では第2次世界大戦の火蓋が切って落とされている時期でしたが、東京はまだまだ平和な様子で描かれていました(実際にそうだったのでしょう)。翌16年12月に対米開戦、トットちゃんの父親が「これからは(英語が使えなくなるので)パパ、ママではなく、お父様、お母様と呼ぶように」とトットちゃんに言った場面が出て来ますが、以降戦況が深刻になる毎に東京の街の風景もどんどん変わっていく様子が描かれていました。そして昭和20年の敗戦直前まで描かれて本作は終わりましたが、トットちゃんが通ったトモエ学園小学校も空襲で焼けてしまうという、なんとも悲しい物語でした。
そうした時代状況の描写とともに涙腺を緩ませたのが、トットちゃんと同級生の泰明ちゃんとの交流。小児麻痺で半身の自由が利かない泰明ちゃんを、トットちゃんが木登りさせたり、運動会で二人三脚をしたりと、それまで家に籠って本ばかり読んでいた泰明ちゃんにいろんな体験をさせるトットちゃん。しかし生来の虚弱体質には勝てず、縁日で買ってきたヒヨコのように夭逝してしまう。
子供向け作品だと思って油断していた自分としては、戦争と言う社会状況と併せて、あまりに冷酷な現実をまざまざと見せつける本作に、不意を突かれて動揺するとともに、涙してしまいました。
話は変わりますが、最近観た「ゴジラ-1.0」や「ほかげ」は、終戦直後のどん底の時期を描いた作品でした。焼け野原になった東京の街で、飢餓とか貧困にあえぐ人々の苦悩が見て取れる作品であり、それはそれで辛いものがありました。ただ本作のように平和な日常から、戦争に突入して社会が悪い意味で統制されて行き、さらには空襲を受けて学校や街が焼けてしまうという喪失感は、想像するだに恐ろしくも虚しいものであるということを実感しました。昨年来、ウクライナやパレスチナで戦乱があり、我々も報道を通じて現地の状況を垣間見ていますが、当地の方々の苦労や心痛と言うのは、想像を遥かに上回るものなのだろうと思われました。
そういう意味では、非常に時宜を得た作品だったのではないかと感じたところです。
それにしてこうした体験をした黒柳徹子が現役でテレビに出演し続けているというのは、本当にすごいことだなと思わざるを得ません。そんな訳で、内容の意外性に乾杯ということで、評価は★4.5とします。
普通に佳い映画
あまり大それた期待はせずに鑑賞。
普通に楽しめました。
役所広司は凄すぎる。
雨に唄えば、のオマージュシーンも楽しい。
最も意見が出るだろうプールのシーンも逃げずに誤魔化してもいない。
飽くまでも子供の視点で描かれているから暗さも辛さも説教臭くもない。
この世界の片隅にを思い浮かべる戦中の風俗もとても丁寧。
ただ、幾つものエピソードが尻切れ蜻蛉というか描写が不足している印象。あえて、なのかもしれませんが。尾骶骨とか突然死とか小林先生のその後とか。
良い部分もたくさんあるけれど、色々と不満もある感じ。
でも映画館で観て損したとは感じないからやっぱり佳かった。
やすあきちゃんとの交流が心に残った。
やすあきちゃんは小児麻痺で不自由な体だ。
そのため、いろんな事を我慢してきたんだと思う。夏のプール授業で魚のように泳いだ瞬間、トットちゃんと泥だらけになって、登った木の上で、初めてきれいな景色を観た瞬間。やすあきちゃんは凄く嬉しかったんだと思う。
小林先生は、トットちゃんに君はホントは良い子なんだよと言った。それは彼女に前の学校を退学になったという事実を伏せ、劣等感を持たせず自分に自信を持たせるためだったと思う。
疎開先に向かう列車でトットちゃんは疲れ切った母親から弟の赤ちゃんを抱き受け、君は良い子とささやく。たくましくも優しい女の子に育っていると思った。
意欲的なアニメ表現と演出の数々
文句なしに面白かった!!
ジブリや新海誠、或いは鬼滅の刃といったようなハイコストな作画にあまり頼ることなく、果敢にアニメ表現や演出の数々で勝負している作品。
お行儀の良いストーリーとはいい意味で対照的な、結構攻めた表現を意欲的に採用しており、そこに注目して観るだけでも十二分というくらい価値がある。
比較的裕福な家庭で育った、トットちゃんの綺麗なお洋服と活発な振る舞いが、時代とのギャップを際立たせる強烈なコントラストとして描かれている。この時代のこんな見せ方ってあるのか…。
キャラクターも皆魅力的に描かれており、なにより、子役も含めてちゃんと絵に合わせた声の芝居ができる役者さんを集めているのが素晴らしい。
ストーリーも宮﨑駿の後期作品や新海誠よりはよっぽど面白かったし、似非ジブリっぽいアニメより、こういう作品こそもっと持て囃した方が日本のアニメ業界の将来の為になると思う。
ハイコストな作画や世界観、質感で殴ってくるタイプの作品も嫌いではないのだけど、やはりこういう挑戦的かつバランスのいいアニメーションをちゃんと評価したい。
ほっこり涙活
原作未読。
この世界の片隅に みたいな、ほっこりした絵柄と日常生活の丁寧な描写…
それとは裏腹な戦争の虚しさ、悔しさ。
素敵な作品でした。
どうしても比べてしまうのが…
直近見たアニメーション映画:ウイッシュ
トットちゃんも多様性が題材の1つでもありますが、ウイッシュみたいな押し付けがましい感なくスっと心に入ってきました。
最近見た戦争映画:あの花が咲く丘で君とまた出会えたら
あの花は戦時中なのに危機感ゼロのヒロインが浮きまくり、感動できず消化不良。
トットちゃんで涙活させてもらいました。
ウイッシュやあの花を見ようか迷ってる友人が居たら、それよりトットちゃん見れば十分だよ!!って勧めます(笑)
黒柳徹子さんの大切な思い出
まじで観てよかった
観た人も含め、作品に携わった全ての人たちにとって愛おしいもの
観終わった後は、自分の心の中にある毒が浮き出てくるような感覚になりました。
まず、何というか、全てにおいてすごく丁寧に作られている印象を受けました。
絵本のような描写、子供や大人の表情、汗の浮き出るシャツ、指の末端の色の違い、小児麻痺の子の足の色の違いや動き、汲み取り式便所のシーン、オーケストラの演奏、駅員さん、お葬式の後にトットちゃんが走っていく中でのすれ違う景色との対比、チンドン屋の音が聞こえた瞬間の赤ちゃんの表情、タバコ等々…
そういった細かな作りからだけでも、作品全編を通して、原作や黒柳徹子さんへのリスペクトや愛情を感じられました。
過去にゲームやアニメの実写化で、監督が原作を知らずに作られたものがいくつかありましたが、この映画は制作が決まった直後に、制作に関わる全てのスタッフに「原作をまず読むこと!」とお達しがあったのではと思うほどでした。
また、子供の喜怒哀楽なんかは、本物の子供とジブリのいいところを随分と参考にしたのではとも思いました。(特に泣くシーン)
映画本編では、小児麻痺の子供が出てきますが、どこかの1日テレビのような「障害」で無理矢理感動を作ろうとしているところがないのもよかったです。
あくまで主人公は「トットちゃん」で、そこがまったくブレていなかった。(トットちゃんは見た目では見えにくい障害)
そんな風に、原作を大切にしつつイチから丁寧に愛情を持って作られているので、制作スタッフにとってこの作品はとても愛おしく、我が子のようなものになったのではないでしょうか。
そして、観た側にとっても愛おしくなるものでした。
個人的には、やっぱり校長先生の人間味がすごく良かったです。
黒柳徹子さんにとって、とても大切な人をとても大切に描いていたのではないでしょうか。
校長先生役の役所広司さんもピッタリで、校長先生は「となりのトトロ」のサツキとメイのお父さんに通ずるものがありました。
校長先生は、子供たちが大切にしているものは何か、常に思っているような人でした。
よく「人を大切に」「親を大切に」「友達を大切に」「自分を大切に」と大人は言うけど、実は「いい大人」に見られる為の綺麗な言葉として投げっぱなしになりがちです。(大切にする方法は???)
でも校長先生は投げっぱなしにならず、子供が大切にしているものを大切にされていました。
「人を大切にする」ということは、「人が大切にしているものを大切にすることなんだよ」と、全編を通して見せてくれました。
そして、それをメッセージ性として観た側に押し付けるようなことはまったく感じられなかったことも心地良かったです。
長くなりましたが、この映画は是非とも多くの人に観てもらいたいです。
基本的に、上映期間中に2回以上同じ映画を観に行くことはありませんが、この映画は最低でもあと2回は観に行きたいと思いました。
オススメです!
トットちゃんの束の間の日常と変わってゆく世界
地味さが逆に眩しい
いのち
ちょうど小学生の時に原作を読みました。私は公立の小学校に通学していたので、トモエ学園の電車の教室に憧れていました。また、「海のもの」「山のもの」も原作で知りました。しかし、この歳になってみれば、トモエ学園の自由な校風が一番魅力的ですね。トットちゃんは今だったら、ADHDの診断がされたり、集団から排除されますから。
子供の時はそれなりに楽しかった学校ですが、今になって思えば、優秀な労働者を作る場所でもあったのかな?と思います。誰とでも仲良く、時間を守って、模範回答を暗記する。
とっとちゃんのお父さんも食料よりも自らの精神性を選んで、軍歌は弾きませんでしたよね。会社で鬱っぽくなっている人は、安定した給料より自分の気持ちに正直になった方がいいと思った瞬間です。
原作を読んだのが小学生の時なので覚えていないのですが、こんなに命を尊んだ作品だったのかと、大変驚きました。ラストに向かって、やすあきちゃんの亡くなった命と戦地に行かされる兵隊のこれから亡くなる命が重なりました。兵隊もトモエ学園に象徴される子供達も、全ての国民はこの戦争で死んではいけなかった。やすあきちゃんの様に病気で早く亡くなる子供がいる一方で、300万人の国民がこの戦争で死にました。戦争がなければ死ななくて済んだ子供達や若者達もです。
劇中に出てくる桜も樹々も街の風景も子供達も生命力に溢れてきらきらと輝いていました。だからこそ、勇ましく流れていた軍艦マーチや死を美化していた当時の国家に怒りを覚えずにはいられませんでした。やはり、国家権力は無責任ではないかと。子供や若者を死に追いやる戦争は、過去の日本だけに限らず、世界中で今現在も起こっています。
残る名作になるポテンシャルはあった
トットちゃんの可愛らしさを表現することには成功している本作ですが、ビジュアル、物語の進行、演出のいずれにおいても一貫性を欠いているように感じられます。
序盤部分。ADHDの特徴を持つトットちゃんの豊かな発想力と突飛な言動、そして校長先生の温かい心遣いが原作に忠実に描かれており素晴らしい出来栄えです。トットちゃんは一見してわかりにくい困難を抱えている児童であるため、悪意のない振る舞いでも周囲から誤解されてしまいやすい。だからこそ校長先生は鋭い洞察によって「君は本当は良い子なんだよ」と微笑みかける。この言葉は生涯を通じてトットちゃんの心の支えになります。このパートは本当に素晴らしい
しかし中盤に入り泰明君と反戦描写がメインになるにつれ紋切り型の演出が目立つようになります。泰明君のケア描写にせよ、トモエ学園を差別する軍国主義児童に反撃するシーンにせよ、トットちゃんが善なる少女という「ストーリー上のステロタイプ」を演じているように見えてしまう。泰明君の死に関しては、障害児の死を利用しているという批判が刺さるまであと一歩のレベルです。直接関係がないにも関わらず死因と戦争を接続しようとする演出、そして感動を誘うための過度の強調、どちらも如何なものかと思います
後半。反戦描写がやや作為的です。教養のあるトットちゃんの周囲の大人=反戦思想、対比される一般国民=軍国主義者の差別主義者、という構図に偏ってバランスを欠きます。「軍国主義に染まる日本が怖い」という感想に誘導するために、後者を顔を描かない等の手法で非人間化するのは「子供の視点だから」で言い訳出来る範囲を超えていると思います。トットちゃんの周囲の大人達と一般人の間にある経済・情報両面の格差に自覚的なら、敵対的と受け取られかねない演出プランは採用しなかった筈です。それこそ高畑勲であれば厳しく戒めたのではないでしょうか
また泰明君~軍国主義日本のパートは過剰に演出される一方で、トットちゃんの家族のその後は「明確には語らないが察してください」方式になっており、この辺のバランスも不統一に感じました
(一応フォローすると、中盤以降でも駅員さんの顛末や「尻尾」の話の配置等、優れた部分は結構ある)
画作りについて。背景美術は大変素晴らしいです。キャラデザについても、戦中~戦後の児童漫画のような赤い唇は結構好きなセンスです(ただし子供の顔が歪むシーンだけリアル調になるのはやり過ぎ。デフォルメ絵に口紅を入れたからと言ってリアル調と地続きにはならない)。また数回挟まる幻想演出はシーンごとに画風が変わるのですが、オムニバス的で一貫したものを感じられません。幻想演出を入れたいというプランありきで唐突に感じる場面もままあったと思います(どれもシーン単品で見れば素晴らしいです)
【まとめ】
原作がエッセイであることを考慮すると、作品にストーリー性を与える為に泰明君の準主役化と反戦演出がターゲットにされたのはわかります。しかしその調理があまり上手ではなかった・・・というか実話ベースのエピソードの持つ強度と含蓄に比べて、紋切り型で浅いんですよ。クオリティの落差が大きい。特に反戦描写は原作から逸脱し、児童視点の中立性を損ねてしまっている点で残念です
もっとトットちゃんの個性と子供視点の中立性を大事にしてほしかったかな
面白かった。
ヒヨコと腕相撲の心理描写に涙
原作未読。ヒヨコが出てくる辺りから感動の連続でした。
トットちゃんは、ヒヨコとの突然の別れで生き物の尊さを学びました。実はこれが物語の大きな伏線だったのです。
トットちゃんと小児麻痺の泰明ちゃんが腕相撲する場面があります。トットちゃんは、泰明ちゃんの小児麻痺による踏ん張れない足を見て、わざと負けます。
泰明ちゃんは「ズルするな」と憤り、この場面でも感動しました。皆と遊ばず読書にふけっていた泰明ちゃんの本心が表れた瞬間でした。
泰明ちゃんは、トットちゃんとの特訓の結果、不可能だった木登りができるようになり、障がい者ではなく、他の小学生と同じように対等な立場でトットちゃん達に接してもらいたかったのだと思います。登場人物の心理描写が巧みでした。
一点だけ気になったのが、米英の攻撃のニュースが入る辺りから敵性語である英語は禁止になるのですが、雨降りの中でトットちゃんと泰明ちゃんを怒鳴ったおじさんが「カレーライス」等と書かれた食堂に入っていった場面です。ライスは英語だよなと思ったのですが、公に禁止になったわけではないので、敵性語は使わない風潮があったという解釈にとどめました。
アニメーションや黒柳徹子さんのナレーションも素晴らしい感動作です。
窓ぎわのトットちゃん
昨今話題の戦争を扱った年末映画4連発。太平洋戦争開戦前夜〜戦中を描いたアニメ映画『窓ぎわのトットちゃん』、戦中末期を描いた実写映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』、戦後を描いた実写映画『ゴジラ-1.0』とアニメ映画『鬼太郎誕生ゲゲゲの謎』。やっと全て観ました。
トットちゃん原作小説は昔から知ってはいましたが未読。こんな話だったのか…と色々びっくりしました。
とっても元気で個性的な女の子トットちゃんが見る世界は、とてもキラキラしていてカラフル。楽しみと喜びに溢れた世界が、じわじわとにじり寄ってくる戦争の気配により静かに彩度を失っていく。戦争ものの映画はどれもそういう色合いですが、太平洋戦争が本格化するまでの日本の街(都会)はこんなにもカラフルで活気に溢れていたのかと。昭和前半の日本というと薄暗いイメージしかなかったけど、たしかにあの華やかな明治を経ているんだからずっと灰色なわけじゃないんですよね。
そんなことを思わされつつ観ていました。子どもの目で見た開戦前夜と戦中。子どもたちに二度とこんな思いをさせてはいけない。と同時に、今海の向こうでまさにこのような中で生きている子どもたちを思わずにはいられない。
やはりキャラデザが…
シンエイ動画の子供描写の積み重ねが反映された
シンエイ動画は「ドラえもん」の制作会社で、特に劇場版では子供たちの躍動や芝居に定評がある。本作では、その技術が惜しみなく使われている。
芝居も動きも圧倒的な物量で、物語も昭和回顧的な予告に反して、ADHDやLDの普通の学校になじめない子供たちの教育(実在した「トモエ学園」)の話で、今日の興味に即するものだった。
また、色彩設計も柔らかく、作中当時のの「童画」(たとえば、松本かつぢなど)の線や、血色の良い肌などが採用され、美術はキャラクターに合わせて水彩の手書き(+取り込みごデジタル加筆)が使われている。
戦争の描写が後半でやや主張しすぎるようにも思うが、
洋服などの色彩、子供たちの動き、音楽合わせのイメージシーンなど、2023年に傑出したアニメーション映画であり、子供たちにもオススメだ。
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