「観た人も含め、作品に携わった全ての人たちにとって愛おしいもの」映画 窓ぎわのトットちゃん ぎんのすけさんの映画レビュー(感想・評価)
観た人も含め、作品に携わった全ての人たちにとって愛おしいもの
観終わった後は、自分の心の中にある毒が浮き出てくるような感覚になりました。
まず、何というか、全てにおいてすごく丁寧に作られている印象を受けました。
絵本のような描写、子供や大人の表情、汗の浮き出るシャツ、指の末端の色の違い、小児麻痺の子の足の色の違いや動き、汲み取り式便所のシーン、オーケストラの演奏、駅員さん、お葬式の後にトットちゃんが走っていく中でのすれ違う景色との対比、チンドン屋の音が聞こえた瞬間の赤ちゃんの表情、タバコ等々…
そういった細かな作りからだけでも、作品全編を通して、原作や黒柳徹子さんへのリスペクトや愛情を感じられました。
過去にゲームやアニメの実写化で、監督が原作を知らずに作られたものがいくつかありましたが、この映画は制作が決まった直後に、制作に関わる全てのスタッフに「原作をまず読むこと!」とお達しがあったのではと思うほどでした。
また、子供の喜怒哀楽なんかは、本物の子供とジブリのいいところを随分と参考にしたのではとも思いました。(特に泣くシーン)
映画本編では、小児麻痺の子供が出てきますが、どこかの1日テレビのような「障害」で無理矢理感動を作ろうとしているところがないのもよかったです。
あくまで主人公は「トットちゃん」で、そこがまったくブレていなかった。(トットちゃんは見た目では見えにくい障害)
そんな風に、原作を大切にしつつイチから丁寧に愛情を持って作られているので、制作スタッフにとってこの作品はとても愛おしく、我が子のようなものになったのではないでしょうか。
そして、観た側にとっても愛おしくなるものでした。
個人的には、やっぱり校長先生の人間味がすごく良かったです。
黒柳徹子さんにとって、とても大切な人をとても大切に描いていたのではないでしょうか。
校長先生役の役所広司さんもピッタリで、校長先生は「となりのトトロ」のサツキとメイのお父さんに通ずるものがありました。
校長先生は、子供たちが大切にしているものは何か、常に思っているような人でした。
よく「人を大切に」「親を大切に」「友達を大切に」「自分を大切に」と大人は言うけど、実は「いい大人」に見られる為の綺麗な言葉として投げっぱなしになりがちです。(大切にする方法は???)
でも校長先生は投げっぱなしにならず、子供が大切にしているものを大切にされていました。
「人を大切にする」ということは、「人が大切にしているものを大切にすることなんだよ」と、全編を通して見せてくれました。
そして、それをメッセージ性として観た側に押し付けるようなことはまったく感じられなかったことも心地良かったです。
長くなりましたが、この映画は是非とも多くの人に観てもらいたいです。
基本的に、上映期間中に2回以上同じ映画を観に行くことはありませんが、この映画は最低でもあと2回は観に行きたいと思いました。
オススメです!