「原作の良さを絞り出せてない?」映画 窓ぎわのトットちゃん 泣き虫オヤジさんの映画レビュー(感想・評価)
原作の良さを絞り出せてない?
「窓ぎわのトットちゃん」が昔大ベストセラーだったことは良く知っているが、結局読むこともなく今に至っている。あれだけ売れた本なのだからきっと何か良いのだろうと観る気になった。
【物語】
自分の感じたこと、思ったことをそのまま素直に行動し、口にするおてんばな女の子・トットちゃんは周りの子に迷惑を掛けているという理由で小学校を退学になる。新たに通うことになったトモエ学園は、電車が教室として使われているユニークな学校だった。周囲から困った子と言われて傷ついていたトットちゃんは、自分の話を全て聞いてくれる校長・小林先生と出会う。
どこまでも子供の気持ちに寄り添い、愛情深い小林先生の下、トットちゃんは自分を押し殺す頃なく、同級生と共にのびやかに成長していく。
【感想】
なるほど、黒柳徹子はこんな女の子だったか。
でも、何となく分かる。今でこそ活舌が甚だ怪しいが、若い頃はマシンガンのように早口でしゃべりまくっていた彼女だけに、子供の頃からおしゃべりだったのは、容易に想像がつく。 そして、大人から観るとちょっと迷惑なくらい、元気で自由なトットちゃんは人並外れて感受性が高かったのだと思う。 そんな女の子が、怖れることなくテレビ、芸能の世界に飛び込んで、自分からどんどん発信する大人になっていくことは、全く違和感が無く後の黒柳徹子につながる。賢い子だったに違いない。
その他、本作で感銘を受けるのはやはり小林先生。子供を全く抑えつけることなく、個性を尊重して伸ばしていく。危険なこと以外は「それやっちゃダメ」とは絶対言わない感じ。何より子供を愛している。理想的教育者。今よりはるかに学校は「しつけ」の場として考えられていたであろうこの時代では、おそらくは親達から最初から受け容れられたと思えないが、きっと小林先生は周囲の批判に屈することなくポリシーを貫いたのであろう。
ということで、良いところもあるのだが、面白かったかと言うと、期待したほどではなかった。あれだけのベストセラーなのだから原作はもっと面白いに違いない。そのエッセンスの抽出がイマイチなのではなかろうか。端々に心惹かれるシーンがある一方で、どこか流れが散漫で、最後まで観ても何か欲求不満な感じ。
エピソードをもっと絞って、1つ1つをもう少し深く描いたらもっと良かったのではないか? そんな気がする。