「子どもを信じること、向き合うことの大切さ・難しさ」映画 窓ぎわのトットちゃん おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
子どもを信じること、向き合うことの大切さ・難しさ
子どもの頃、母に勧められながらも興味を示せなかった「窓ぎわのトットちゃん」。正直、本作も観ようかやめようか迷っていましたが、予告のやわらかな雰囲気に誘われ、公開初日の高評価に背中を押され、鑑賞してきました。
ストーリーは、小学校に入学したものの落ち着きのなさに手を焼いた学校側から転校を求められたトットちゃんが、自主性を尊重するトモエ学園に転入し、軍靴が響き、銃後の守りを強いられる中においても、小林校長先生の理解や同級生との温かな交流に支えられ、のびのびと成長していく姿を描くというもの。
天真爛漫だけど、他の子とはちょっと違うトットちゃん。“ちょっと違う”というのは個性であるはずなのに、多くの大人は“ちょっと手がかかる”=“困った子”と捉えてしまいます。そして、自分の思い通りにならない子や型にはまらない子に、”困った子”の烙印を押してしまいます。
でも、トモエ学園の園長先生は違います。子ども一人一人の可能性を信じ、よさを見出し、とことん向き合っていきます。子どもを大切するとはこういうことなんだと思い知らされます。ただ、同時にその難しさも伝わってきます。子どもとの丁寧な対話、一人一人の確かな見取り、個に応じた教育カリキュラム、環境整備、全職員での共通理解など、いったいどれほどの手間と時間と費用が必要なのか計り知れません。
しかし、その教育が子どもたちにしっかり根づいていたことは端々から伝わってきます。前の学校ではみんなから疎まれていたトットちゃんをすぐに温かく受け入れ、同級生の泰明ちゃんは会った時から自分が小児麻痺であることをトットちゃんにきちんと伝え、子どもたちそれぞれに取り組みたい学習があり、それが居場所にもなっていて、他校の子の悪口や暴力にも屈することなく、かといってやり返すこともしません。みんなトモエ学園が大好きなのです。
また、トットちゃんの両親も、包容力のある素敵な大人として描かれています。我が子を頭ごなしに叱るようなことは決してしません。大人はとかく先回りして子どもの歩く道からリスクを排除したくなりますが、それでは子どもは失敗を何一つ経験できません。それは、失敗の原因を考える、そこから立ち直る、次に工夫するといった、失敗に付随する経験も奪うことになります。劇中、トットちゃんは、両親が止めるのを押し切って露店で買ってもらったヒヨコが、ほどなく死んでしまうという経験をします。命には限りがあり、慈しみ深いものであり、だから生きている時間が大切なんだと、幼いトットちゃんは肌で感じ取ったのではないでしょうか。もちろん両親は「ほら、ごらん!」などと責めるようなことは決して言わず、「あなたは、何も悪くない」と慰めます。
本作は、そんな園長先生、泰明ちゃんをはじめとする学園の友達、両親に向けて、黒柳徹子さんの感謝の思いを形にしたものだと思います。本当に周囲の人に恵まれて育ったのだと感じます。でも、それは黒柳さん自身が引き寄せたものでもあると思います。ただ素直で正直で思ったことを口にしてるだけで、今風に言えば空気が読めないトットちゃん。その裏表のなさが彼女の魅力でもあります。その魅力に惹かれた人たちが、彼女に寄り添い、輝かせたのです。
人の性格や性質なんて、受け取り方しだいでどうにでも映ります。大切なのは、それを“よさ”として見ること、いわゆるリフレーミングです。個性尊重、多様性の時代と言われながらも、まだまだ画一性を求め、他人に不寛容な風潮はなくならない、そんな現代だからこそ、多くの人に観てもらいたい作品でもあると感じます。
キャストは、大野りりあなちゃん、役所広司さん、杏さん、小栗旬さん、滝沢カレンさんら。声優を起用しないキャスティングは嫌いですが、本作のような自伝的作品では、飾り気のない自然体の台詞回しのほうが合っていたような気もします。特に大野りりあなちゃんが、よく頑張りました。
マサヒロさん、コメントありがとうございます。
そちらのレビューにコメントできなかったので、こちらに返信いたします。
おじゃる丸、いいですよね。どのキャラも愛らしくてほっこりします。サブちゃんの「詠人」も大好きでなんです。でも、私も今年はまだ一度も観ていないので、年末までには観て、ほっこりした気持ちで新年を迎えたいと思います。☺️
映画に関係ありませんが、おじゃる丸大好きです。お世話がかりの丸っこい羽がある虫や、エンマ大王のしゃくとか笑えます。そういえば今年はまだ1回も見てません。映画に関係のない話なので、ご返答はお気遣いなさらぬようお願いします。失礼しました。