「【”トットちゃんは本当は、良い子なんだよ。”と校長先生は優しい顔で言った。今作は、軍国主義が蔓延って行く中、校長や自由思想を持つ両親によりトットちゃんが素敵な女性に育っていく様を描いた作品なのである。」映画 窓ぎわのトットちゃん NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”トットちゃんは本当は、良い子なんだよ。”と校長先生は優しい顔で言った。今作は、軍国主義が蔓延って行く中、校長や自由思想を持つ両親によりトットちゃんが素敵な女性に育っていく様を描いた作品なのである。
■第二次世界大戦開戦間際、トモエ学園の小林校長先生の教育方針が素晴しい。それは、子供一人一人の個性を重んじ、尊重し、接する姿勢である。
故に、トモエ学園には劇中描かれている通り、自由な気風が横溢し、生徒たちは活き活きと列車を改造した教室で、自分が遣りたい科目から勉強を始めるのである。
◆感想
・小学一年生で、自由でお転婆過ぎるが故に、転校を促されたトットちゃんが、トモエ学園に来て小林校長先生にイロイロと4時間も話す姿。そして、それを嬉しそうに遮ることなく聞く校長先生の姿。
ー ”傾聴の姿勢”とは良く教育の場で聞く言葉だが、小学一年の女の子の話に4時間付き合う校長先生の姿は素敵だし、トットちゃんの話も面白かったんだろうな。-
・小児麻痺のやすあきちゃんと、トットちゃんの関係の描き方も良い。表に出たがらず、本を読んでいるやすあきちゃんを、外に連れ出し、お気に入りの木に一緒に必死で登る姿。そして、木の上から見た世界に顔をほころばす、やすあきちゃんの表情。
ー 家に帰って、風呂に入っているやすあきちゃんがお母さんに”服を汚しちゃって、ごめんなさい。”と言うも、お母さんは嬉し泣きをしている。多分、初めて服を汚して帰って来た息子の事が嬉しかったのだろう。可なり沁みたシーンである。
■やすあきちゃんとの別れのシーン。
小児麻痺が原因なのか、亡くなってしまったやすあきちゃんの事を校長先生が涙ながらに伝えるシーン。そして、トットちゃんの手元にはやすあきちゃんから借りていた「アンクルトム」の本がある。
このシーンも、非常に沁みた。トットちゃんが、夏祭りの夜店で買って貰ったヒヨコの死。そして、親友だったやすあきちゃんの死。
トットちゃんは棺の中に横たわるやすあきちゃんの顔の傍に、大きな赤い花を手向けるのである。
・トットちゃんのバイオリン弾きのお父さんが、軍歌を弾くことを拒否するシーンや、奥さんの服装を憲兵から指摘された時の毅然とした対応も、トットちゃんの両親が自由思想を持っていた事が分かる。
■戦況は悪化し、東京にも米軍飛行機が次々に飛来し、トモエ学園の子供達も皆、疎開していく。暫しの別れ。
トモエ学園にも、焼夷弾が落ち学園が燃えていく中、小林校長先生が”さあ、今度はどんな学校を作ろうか!”と叫ぶシーンも沁みたなあ。
戦火に屈せずに、教育者としての気概を持ち続ける姿が素晴しいのである。
<今作は、原作を可なり忠実にアニメーション化した作品であるが、そこで描かれる小林校長の”子供一人一人の個性を重んじ、尊重し、接する姿勢”や自由思想を持つ両親の姿や、トットちゃんの親友、やすあきちゃんとの楽しき日々と哀しき別れが、美しく優しい風合の色彩で描かれており、とても心に沁みた作品である。>
コメントありがとうございます。返事無用といわれると書かずにはいられない性分で(笑)。ただの独り言ですので無視してください。
なぜかこのところ先の大戦をモチーフにした作品が続いてますね。偶然かもしれませんが、タモリさんが言ったように新しい戦前をクリエイターの方々も危惧されてのことかもしれません。
戦争を知らない子供たちだからこそ先人たちの貴重な経験から学び取って、同じ過ちを繰り返さないよう心掛けたいものです。