「単なるラブストーリーと舐めてはいけない」夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
単なるラブストーリーと舐めてはいけない
ノーマーク作品でしたが、たまたま舞台挨拶中継つき上映があり、暇だったので鑑賞してきました。
ストーリーは、周囲に気を遣って本音の言えない女子高生・茜と絵を描くことが好きで自由気ままな同級生・青磁が、互いの生き方に反発しながらも徐々に惹かれあい、距離が縮まっていく中で、本当の思いを打ち明けられるようになり、互いの中にある大切なものを確かめ合っていくというもの。
最初に謝っておきます。高校生のベタなラブストーリーだと舐めていてごめんなさい。もちろんメインはラブストーリーですが、同時に茜の成長の物語でもあり、家族の絆の物語でもあります。それらがうまく溶け合った展開が、実に心地よく爽やかです。
青春ラブストーリーというと、イケメン男子がなぜか地味め女子のことが気になってグイグイ距離を詰めていくという、ありがちな展開が思い浮かびますが、本作の二人は違います。外見ではなく、互いの生き方への憧れやリスペクトから、しだいに惹かれあっていきます。異性というより人として相手を見ている点が、とてもいいです。二人の表情、さまざまな空の描写、屋上を自分色に染め上げるシーンなど、随所に絵画的な美しさも感じます。一方で、恋愛脳に支配されたかのようなイチャイチャシーンは排し、ラストの幕引きは実に鮮やかです。
話の運びも、とてもスムーズでテンポがよく、無駄もないです。冒頭での青磁の大嫌い宣言、義父をお父さんと呼べない茜、屋上への梯子を上る茜を引き上げる青磁、残り時間を意識した青磁の言葉、体育でのサッカー、茜が語る小学生時代の思い出、青磁がいちばんきれいだと感じるもの、一緒に朝焼けを見たいという二人など、丁寧な布石はわかりやすすぎるきらいもありますが、終盤で一気に収束していく過程はとても心地よいです。
主演は、白岩瑠姫くんと久間田琳加さん。白岩くんは初主演にしてはまずまずの演技ですが、それをうまく支えていたのが久間田さんの自然体の演技です。二人のおかげで、作品世界に気持ちよく浸れます。脇を固めるのは、箭内夢菜さん、吉田ウーロン太さん、上杉柊平さん、鶴田真由さんら。
上映後の舞台挨拶中継では、監督やキャストの楽しい話を聞くことができました。中でも、主演の二人が人見知りで、互いに目も合わせられないままクランクインして、最初に撮ったシーンが二人で茜の家に行くシーンだったというのには驚きました。また、屋上シーンが印象的な本作ですが、監督が高いところが怖くて、役者に端に行かないように声をかけ続けていたそうです。あと、白岩くんは、セリフと劇中ダンスを覚えるだけでなく、撮影中に本業の新曲ダンスも同時練習していたそうです。プロの仕事ぶりに頭が下がります。