「動機だらけ。白夜行。」法廷遊戯 movie mammaさんの映画レビュー(感想・評価)
動機だらけ。白夜行。
ロースクールの同級生、清義と美鈴と馨。
でも卒業後無事に司法試験に合格し、
実際の裁判では、
清義は弁護人、美鈴は被告人、馨は被害者となっていた。
ロースクール在学中に司法試験に合格し、在学中は無辜ゲームを主宰していた馨が、卒業後2年して再び最後の無辜ゲームを開くとした日に、馨は殺されてそこには美鈴が返り血を浴びて立っていた。
第一発見者となった清義が、美鈴の弁護人となる。
黙秘を貫く美鈴を清義は、美鈴には動機がないと弁護する。
それどころか、本当は動機だらけやないか!
清義と美鈴は、同じ児童養護施設の出身。
美鈴は施設員から性被害に遭っていて、
清義が施設員を刺し、清義が暴行被害に遭っていた正当防衛という虚偽の主張で無罪となった過去がある。
美鈴は養護施設に来る前に、親不在で何日も放置されたネグレクトの被害に遭っていた。
高校時代には、電車で美玲の痴漢に気付いた清義が犯人を捕まえた際、お金で解決されて味をしめ、大人を痴漢に仕立て上げてお金を得たこともある。
そしてある時、後ろに立った大人を痴漢ということにしようとした時、その大人は警官でかえって捕まりそうになる。駅の階段で「大丈夫やり直せる」と声をかけられた美鈴は、動機を持って階段から警官と落ちようとした。その時同時に、離れて見ていた清義は警官が階段を踏み外すよう引っ張った。
警官はリハビリに励んだが、裁判でも誰も警官を信じなかった。現行の警官でありながら痴漢という社会的に失った信用の大きさはとてつもなく、のちに自死した。その警官こそ、母を亡くし父と2人で生きて来た馨の父親だったのだ。
ロースクール在学中もずっと、馨は父の無念と名誉を晴らすため、復讐計画を練っていた。
清義は美鈴を守るため、
美鈴は清義を守るため、
馨は亡き父を守るため、
司法に参加する。
でも結局、その本当の動機に気が付いたのは、本人達だけ。
ロースクールでも、無辜ゲームの主催者でありながら、清義や美鈴への嫌がらせを首謀していたのは馨だった。
司法を動かせる立場が腐ると、法で裁かれる物達の人生は崩れ去る。
それに人生そのものを左右されてきた者達だからこそ、一個人の人生と暮らしを守るためにこれから奔走できることが沢山あったはずなのに。
司法に携わる者の心構えを考えさせられるとともに、
大人のせいで、人生に影を落とすことになった子供達の苦悩に辛くなる。
北村匠海が出ているからきっと深いだろうと見た作品。あまり表情の大きな変化を見せずとも、悟っているかのような思考力が既に顔立ちに現れている俳優さん。
永瀬廉は何に出ていても、目は憂いを帯びるが、演技は口先が喋っている淡々とした感じ。同世代より不器用が目立つがなかなかに態度は大きく、でももてはやされる不思議な印象。
本作での高校時代はもろに坂道くん。
杉咲花はいつも、ただの理不尽な生い立ち役ではない。
まっすぐ見つめる強く澄んだ瞳を持ちながら、
頭では先回りして考えている役がよく似合う。
馨の父は家族と別のお墓に入れられ、
馨の遺族は、会いに来た清義に馨の父のことを悪く言う。
その時の清義の描写から、あぁ馨は真相を知っていたんだと気がつく。
そこから、清義が罪に苛まれる様子もなく、弁護人として疲弊しているようにしか見えないのは、永瀬廉の演技の問題?一方で、清義が罪悪感に苦しみながらも美鈴を守るために弁護を続ける事を選択する心情がもっと描かれていたとしたら、馨がどこまでも損をする被害者で、清義と美鈴は凶悪な印象になるだろう。
そうはならず「揺れ動く若者」として見られるのは、
永瀬廉と杉咲花の若さと爽やかさがあるから。
白夜行のような展開。
本当は全然違う明るい未来もあったはずの若者3人の失われた未来を思うと、馨のいう、赦すための同罪報復は成立しないと結論が出る。
なら理不尽にはどう戦えば?それが法であって欲しいからこそ、法に怠惰や傲慢や黒い力が影響しないで欲しいのに。
そして、大人が見抜けなかったり誤魔化して、子供に犯罪の成功体験の味を占めさせてしまうことも、子供達の人生を狂わせるから、現行犯で裁かれる重要性がよくわかる。