古の王子と3つの花のレビュー・感想・評価
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決断
舞台は古代エジプト、中世フランスのオーベルニュ地方、18世紀のトルコ。3人の王子はそれぞれの時代に自らの手で運命を切り開いていく、短編集
モーションキャプチャーが使用されたとの情報がなかったので、あのスムースな動きはアニメだけで作られたのだろう スピーディに展開が進むことでノンストレスで鑑賞出来る
ストーリー自体は、絵本の様な内容なので、子供の情操教育にはピッタリなのではないだろうか
エジプトの壁画のようなキャラクター、日本の藤城清治の影絵のような幻想性、そして3作目は3D画像での得意な造りは前作と通底している
何よりも今作もそうだが、背景やセット、小物類迄、繊細で丁寧な描かれ方に、尊敬の念を禁じ得ない それだけでも美術的要素がたっぷりである
【仏蘭西を代表するアニメーション監督ミッシェル・オスロが今作で描き出す絵の世界は、エキゾチックで美しい。その独特な人間性肯定の、品性ある世界観は唯一無二と言っても良いと思う。】
ー 冒頭、労働者の前で一人のファッショナブルな男が3つの物語を紡ぎ出す。
どの物語も王子が主役である。
時代は、第1話「ファラオ」は古代エジプト
第2話「美しき野生児」は中世の仏蘭西
第3話「バラの王女と揚げ菓子の王子」は中世のイスタンブールである。
◆感想<Cautin!内容に触れています。>
・第1話「ファラオ」
クシュ王国(現スーダン)のタヌエカマニ王子がエジプトを統一し、黒人初のファラオになる話である。
絶世の美女と言われる摂政の娘と結婚するため、王子は戦わず、英知を持って国々を治めていく。
古代エジプトのフレスコ画の技法を使い、登場人物が横顔で描かれているのも特徴的である。
・第2話「美しき野生児」
冷酷な領主を父に持つ、心優しき少年(王子)が囚われていた男を解放し、彼自身も死刑を父から告げられながら、側近が彼を逃がし、美しき野生児と呼ばれる大人になった少年が圧政を繰り返す父を、囚われていた男(侯爵)と共に懲罰し、王子の娘と結ばれる話。
影絵の様な風合の絵が、好みである。
・第3話「バラの王女と揚げ菓子の王子」
国を放逐された王子が、ある街の揚げ菓子屋に弟子入りし、その街の城に住む姫と揚げ菓子を通して心を通わせ、結ばれる話。
<と書くと、身もふたもないが、これが、ミッシェル・オスロの手に掛かると、観ていても実に楽しい気品とエキゾチックな雰囲気が横溢する美しい作品になるのである。>
<2023年9月3日 刈谷日劇にて鑑賞>
時代の異なる3つの国で起きたお話が描かれます。どの作品も王子と王女の出会いの物語です。
4年前に観た「ディリリとパリの時間旅行」。
その監督の作品と知り、期待していました。
画面を観ているだけで癒されそうな
そんな予感にワクワクしながら鑑賞です。
30分弱のお話が3本。
時代も国もバラバラなのですが、共通するのが
「王子と王女の物語」であること。
お話の間に関連性は無さそうです。
さあ どんなお話が待っているやら。
◇
■1話目 「ファラオ」
エジプトの歴史には詳しく無いのですが
古代エジプトで、上下エジプトを統一して
フェラオとなった男と、その妃となった娘との
出会いから婚姻までのお話です。@-@
影絵のような綺麗な色彩で描かれた
エジプトの壁画のような世界。 そこを
壁画の人物のようなキャラクターが動きます。
(↑ 体は正面、顔はヨコ向き のアレです)
美術的感覚が「ディリリとパリの時間旅行」に
近いように感じました。
すごく絵が綺麗です。・_・満足の出来。
■2話目 「美しき野性児」
民に情けなど無用! と威張る領主。
父に逆らうなど無理 と小心な王子。
一人庭の中でボール遊びをする王子
ある日牢屋の中にボールをいれてしまいます。
「囚人さん ボールを取ってくれませんか」
頼むとボールは返ってきた。
その囚人は父に捕えられたらしいのですが
そのうち、自分の領地に娘がいると知ります。
” 帰りたい ”
” … ”
その囚人の脱獄に協力してしまう王子。
牢番が処刑されそうになり
父に、自分が手を貸したと伝えるのですが
激怒した父、遠く離れた森で王子を処刑するよう
命ずるのでした…。
あぁ なんてこと。
ところが処刑人たちは王子を殺さず、森の中で解放。
ナイフや弓や上着、食料を渡して戻るのでした。
数年後、その森で領主の代官などが乗った馬車が
頻繁に襲われ、宝石や金銀・税金などが奪われるように。
さあ、これはいったい誰の仕業か。(…白々しいなぁ)
このお話の顛末は?
この2話目も絵は綺麗です。
また、セリフの言い回しがなんとも可笑しい。
#父に行為を咎められた際の王子の声 「はい、父上」
#意に反する事態が起きた際の領主の 「うがぁぁぁ」
繰り返される「お約束」が何とも。… ^-^;
※やや重苦しさを感じるストーリーの
雰囲気を和らげていた。そんな気もします。
素朴な疑問なのですが、このの王子自分の父親を
どうするのでしょう。
父に ” やり直して下さい ” と言っているのですが…
1) 出家させる (仏蘭西に出家という概念はあるのか?)
2) 再び領主の座につける (また繰り返しそうな気も…)
3) 町の清掃ボランティアをさせる (うーん無さそう…)
自分が助けた囚人(実は公爵でした)の娘と結婚し
旧領は公爵家の領地として吸収。いずれは
自分が公爵家の後を継ぐ とかでしょうか。…うーん。
※「その後」の考え甲斐があるお話です。はい。
■第3話 「バラの王女と揚げ菓子の王子」
印象に残っているのは、王女付きの女官たちの動き。
城の中を歩くのに、いちいちポーズをとりながら
ゆっくりしたリズムで歩きます。
※ この話ではコミカルな動きが絶妙な可笑しさです。
江戸城内を長袴で歩く武士のよう…もしくは
足を大きく上げながら歩くムカデ競争のような?
また、城内の曲り角や扉の前で、手で行き先を示す
お城の住人たちを観ていたら
「未来少年コナン」の1シーンを思い出しました。
コナンやラオ博士がインダストリアの地下から
フライングマシンで脱出する場面。
地下の住人たちが、無言で行き先を指し示すシーンです。
(この監督さん、日本のアニメを良く観ていそうな
気がしたのですが、どうなのでしょう)
◇あれこれ
■公爵と領主
どちらが立場が上なんでしょう。観ていて
それがとても気になりました。。。
領主にも「王様」もいれば「地方領主」もいるでしょうし。
「王様 > 公爵 > 地方領主」
こんな感じでしょうか …うーん。
■「3つの花」
と、タイトルにあるのですが
観ている最中は、余り「花」を意識しませんでした。
タイトルを後で振り返って「あ、そうなんだ」と。
この作品の原題を確認すると
「Le pharaon, le sauvage et la maitresse roses」
※ぐーぐる先生の翻訳結果は
「ファラオ、野蛮人、そしてピンクの愛人」… ^-^;
うーん。
邦題は苦心の産物かもしれません。
◇最後に
期待した通りに見応えありました。
で、観終えての疑問がわいてきました。
この3つのお話、
今回の上映のために新しく作られたものなのか
それとも
作成年代の違う「王子と王女」の話が3本既にあって
それを今回一本の作品にまとめた物なのか…。 はて。
作画・美術・演出などが
3本とも微妙に違うような気がしたもので。
パンフレットに何か書いているかなぁ。
☆映画の感想は人さまざまかとは思いますが、このように感じた映画ファンもいるということで。
3つのお伽噺
古代エジプト、中世フランス、近世オスマン帝国、それぞれにあった背景やキャラクターデザインで描く3人の王子と、花=お姫様の話。子供から大人まで安心して楽しめる作品だった。
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