「7つの女性の物語(オムニバス)。 それぞれを簡潔にご紹介&レビュー...」私たちの声 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
7つの女性の物語(オムニバス)。 それぞれを簡潔にご紹介&レビュー...
7つの女性の物語(オムニバス)。
それぞれを簡潔にご紹介&レビュー。
1話目「ペプシとキム」 タラジ・P・ヘンソン監督
薬物使用で収監されているキム(ジェニファー・ハドソン)。
更生プログラムに参加しようするが、壮絶な過去から生まれた内面の別人格ペプシとの間で壮絶な葛藤が繰り広げられる・・・
ジェニファー・ハドソンの鬼気迫る演技が見もの。
キムの壮絶な過去も、女性が置かれている状況を端的に表しています。
2話目「無限の思いやり」 キャサリン・ハードウィック監督
コロナ禍の米国LA、感染拡大防止のためホームレス用シェルターとして利用されるホテルの屋上。
他人を寄せ付けない若い女性ホームレス、ヴァルの世話を焼く女医のスーザン(マーシャ・ゲイ・ハーデン)がみたのは、鎧のように十数枚の服を重ね着したヴァルの姿だった・・・
これもまた女性の置かれた状況がよくわかる一編で、女性ホームレスは男性の性対象にされることが多いと聞く。
鎧をまとわなければいけない状況にあるわけで。
3話目「帰郷」 ルシア・プエンソ監督
英国を拠点に活躍する女性建築家のアナ(エヴァ・ロンゴリア)は、妹の葬儀に参列するために故郷のイタリアに帰郷。
妹はシングルマザーで幼い娘がいたのだが、亡妹は彼女をアナに託していた・・・
前2作と雰囲気をかえての伯母・姪の関係を描く。
妙に、諦念したような幼い娘の様子が切ない。
4話目「私の一週間」 呉美保監督
幼いふたりの子どもを育てるシングルマザーのユキ(杏)の毎日は、朝食作りからはじまるワンオペ。
毎日が目が回るような忙しさだったが、日曜日にちょっといいことが・・・
と、日本では見慣れた日常なのだが、世界の中にはいると、ビックリするぐらいの戦場のような雰囲気。
これが日常だという日本、先進国じゃあないかもね。
5話目「声なきサイン」 マリア・ソーレ・トニャッツィ監督
日々の忙しさに娘との約束も忘れていた獣医師のダイアナ(マルゲリータ・ブイ)。
ある夜、終業前に訪れたカップルのうち、女性の方の態度が不自然と感じたダイアナ。
ダイアナがみせられたのは、痣だらけの腕だった・・・
と、DV男の物語。
女性は声をあげられない。
というか、あげられないように男性のほうが仕向けている。
7つのエピソードの中で、もっとも緊張感が高い一編。
6話目「シェアライド」 リーナ・ヤーダヴ監督
インドの物語。美容外科医ディヴィヤ(ジャクリーン・フェルナンデス)は、ある大雨の夜、派手な服を着た女性とタクシーに同乗することになった。
が、しばらくして同乗者がトランスジェンダーだと気づく。
差別的な感情が沸き立ってタクシーを降りたディヴィヤは、別の日、同乗の相手が警察官として働いていることを知り、さらに夜には街角に立っていることを知る・・・
7編の中で唯一トランスジェンダーを扱った一編。
ちょっと物語に浅い部分があり、作品としての出来はいまひとつ。
7話目「アリア」 ルチア・ブルゲローニ&シルヴィア・カロッビオ監督
穴倉のような狭い部屋で暮らすアリアは、無個性な存在。
ある日、部屋の壁に穴が空いて、アリアに自我や個性が目覚め・・・
という台詞のないコンセプチュアルアニメ。
コンセプトだけで、アニメ表現としてはいまひとつ。
7つのエピソードが始まる前にそれぞれ監督・主演の名前が日本語のタイトルで示され、その他のスタッフは巻末にロールアップで示される。
エンドロールは主題歌『Applause』のMVで、これがモノクロデザインでなかなか魅力的なのだが、スタッフロールのために小さな画面に押し込まれてしまったのは残念。
クレジットなどは、製作国それぞれ(イタリア・インド・アメリカ・日本)で別個に製作されたと思われます。
そのため、エンドクレジットの途中で主題歌がおわって無音のクレジットが続きます。
と、興味深いエピソードもあるが、ちょっといまひとつねというエピソードもあり、ここいらあたりはオムニバス映画の宿命といったところ。
ちなみに、平日昼間の観客は中年・初老の男性の方が多かった。
閑忙問わず、女性観客には届いていないのでしょうかしらん。