「NIKEの代名詞」AIR エア U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
NIKEの代名詞
ルールを破れば名が残る。
こんな標語があるのかないのか分からないが、使い所によっては金言だとも思う。
NIKEを現在の地位にまで押し上げた者達の話だった。痛快という訳ではないが、結果となる未来に僕達は生きてるので、その神話の内側をみる事が出来る。
ある時期のNIKEの社運をかけたプロジェクト。
エアジョーダンの誕生が無ければ、現在のNIKEは無かったのだろうと思われる。
当事者達の間柄が作品通りなわけもないのだけれど、エンドロールの御本人、特にNIKEの社長の写真を見れば、近いのかもななんて事を思う。
ラストに至り、ロイヤリティの発生を承諾した時の呆気なさといったら…あの社長ならやりかねんとも思うのだ。
その実、その決定の裏には、明確な戦略があるわけでもなく、仲間の意見を全面的に信じるという、信頼感だけがあった。前代未聞でスポーツ界に革新と革命を起こすような決断なのに!
…おそらくMジョーダンが先駆者なのであろう。
彼のスター性は、スポーツを取り巻く業界の構図をも変えてしまう程だった事に驚きを隠せない。
ソニーのジョーダンへ向けてのスピーチが圧巻だった。実際の映像を挟む事で説得力は上がるし、何よりその熱量が途轍もない。
あの熱意を向けられたら絆されもするとは思う。その後の返答を待つソニーのカットも秀逸である。
天命を待つとは事なのだろう。
後半になって俄然盛り上がりを見せる作品だった。
にしても…今期の計上利益を目にしたadidasの担当者は愕然としただろうと思う。
NIKEのシューズの最高売上が300万でエアジョーダンがもたらした売上が16200万…50倍強って。
空前絶後のビジネスチャンスを逃した事になるわけだ。
当時のNIKEに稀有な才能を持ちながらも燻ってた連中がいたとはいえ、天啓とも言うべきタイミングだったのだろうなぁ。
もうNIKEとジョーダンは一連托生なのだろうし、こんなあからさまなWin-Winな関係が実在するなんて…靴のロイヤリティは家族によって大衆に還元され、その事がジョーダンの名声にも繋がり、結果、靴の売上にも貢献する。完全無欠なビジネスモデルに思える。
ノーリスクハイリターンなんて幻想はないと思った。