劇場公開日 2023年4月7日

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「感情移入すべきは」AIR エア キレンジャーさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5感情移入すべきは

2023年4月9日
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(後半で若干ネタバレします)

マイケル・ジョーダンやバスケにはあまり馴染みがなく、NIKEのシューズにもそれほど愛着がない私の様な人間には、それほど「グッ」とくるお話ではなかった。(つか、そんな私でも知ってるエピソードが多かったし)

ただ、この1984年に思春期真っ盛りを迎えていた私にとっては、OP「Money For Nothing
」からED「Born in the U.S.A」まで、当時の音楽・映画・サブカル満載でワクワク。
そういう映画だった。

開拓者達の覚悟とリスク、そして生まれくる何かを信じる心。
当然彼らの熱意には共感するし、チャレンジ精神も見事。

世界的なアスリートとその功績、「アスリート・ファースト」によって生まれた常識がその後のスポーツ界に与えた影響は計り知れない。

ただ、こういう事は「野暮だ」と承知で言うなら、この話は詰まるところ『駆け引き』と『バクチ』。

ジョーダンは現在では神格化レベルのプレイヤーであり、冗談でも「銭ゲバ母ちゃん大勝利」なんて言っちゃいけないんだろうし。

主人公ソニーも、フリーランスならともかく、一応組織の一員でありながら、周りを巻き込んで無茶苦茶をした割に、ライバル企業が同じ金額を出したことを知って急に意気消沈。勝手すぎるだろ。ここまで来たなら最後までジタバタしてみろよ。

あえてマイケル・ジョーダン本人を極力描かなかったことで、周りの大人達にとっての、より「商品としての彼」しか感じることができなかったというのが率直な印象。

でもこの話が嫌いになれないのは何故だろうとあらためて思い返すと、結局ここで評価されるべきなのは、無茶をするスカウトマンや、息子の価値を1セントでも吊り上げたい母親じゃなく、その身勝手な二人を受け止めたNIKEの上司達や周りのサポートメンバーなんだ。

そう思うと、途端に良い話に思えてくる。

キレンジャー