「草彅剛さんの新境地」碁盤斬り sumichiyoさんの映画レビュー(感想・評価)
草彅剛さんの新境地
久々の草彅剛さん出演作でした。江戸時代の冤罪をテーマにした作品とのことですが、復讐劇でもありました。
主人公の柳田格之進は真面目で実直。裏を返せば、不器用で要領が悪い。誰でも過ぎたる者はなかなか理解されない。柴田兵庫のようにその精神力を妬む者、萬屋源兵衛のようにその清廉さを慕う者と極端な気がします。それが災いしたのか、格之進は濡れ衣を着せられてしまう。冤罪は偶然なのか必然なのか。
この時代、冤罪は立証できるのだろうか。探偵や科学捜査もなく、状況証拠と証言だけで裁かれるのだろうか。絹は泣く泣く用立てたが、まず認めてしまうしかなかったのか。憲法も刑法もない時代、残念だけど、冤罪は多かった気がしますね。その代わり、仇討ちされるのがお決まりだけど。
格之進演じる草彅さんは昔と変わらないオーラを纏いながらも、昔と対するオーラもにじみ出ていました。娘といる時、碁盤に向かう時、刀を抜いた時、どれも仏のように穏やかだけど、内に鬼を宿すような。優しさが覆っていたドラマの頃と反する厳しさを感じました。これが本来の草彅さんかも。
そんな草彅さんに合わせるように、絹演じる清原果耶さんは時に気丈で、時に純真に格之進を補っていました。絹は気丈で純真過ぎたとも言えますが。
草彅さんと格之進は重なって見えますね。草彅さんは昔から素朴で人が良かったけど、冤罪と言える事件で表舞台から姿を消す。実直であろうとする格之進、それが否定された格之進と重って見えました。それが正されない、正せない時代なら尚更。ラスト、ほんの少し視野を広げ、実直を軟化した格之進が今の草薙さんの気持ちを現したシーンだといいですね。
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