「熊の暴れっぷりだけでなく、クセのある人間模様も楽しめる」コカイン・ベア tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
熊の暴れっぷりだけでなく、クセのある人間模様も楽しめる
コカインでハイになった熊が暴れまわるだけの映画かと思っていたら、意外と、登場人物達の群像劇が面白かった。
それは、コカインを巡るギャング、警察、そして熊の三つ巴の争奪戦があるからで、熊を凶暴化させるだけでなく、人間のエゴや欲望を顕在化される仕掛けとして、コカインがうまく使われているからだろう。
特に、東屋での三者の攻防にはタランティーノ的な面白さが感じられ、普通だったら、寝入ってしまった熊を射殺して終わりとなる所が、そうとはならない展開も、間が抜けていて嬉しくなる。
もし、こうしたコカインの争奪戦がなかったら、ハイカーや森林警備隊員や不良少年や救助隊員達が熊に殺されるだけで、それはそれで面白いかもしれないが、さぞかし平板な話になっていただろう。
ギャングの1人が指を吹き飛ばされた時の周囲の反応や、熊に猛スピードで追いかけられた救急車がクラッシュするくだりなど、ゴアなのに思わず笑ってしまうようなシーンも存分に楽しめる。
はじめは、恐怖の対象で人間の敵であった熊が、ラストでは、悪を倒す正義のヒーローのようになる展開にも、胸が踊るものがある。
コカインが、あたかもスーパーパワーのエネルギー源のように描かれているところには、いささか眉をひそめざるを得ないが、一回やられた熊が、ターミネーターのように蘇るところなどは、そうなるとは分かっていても拍手をしたくなった。
最後は、生き残って欲しいと思っていた面々がちゃんと生き残って、不思議と爽やかな後味が残るのも、何だか妙に心地良かった。
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