ビデオドローム 4K ディレクターズカット版のレビュー・感想・評価
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ピストル
ティザーやポスターに載っているブラウン管からラバーのように伸張するあの形はピストルを掲げている事が観賞で分った程、今作の情報はなるべく入れないようにした 初見では、指差ししてるとばかり思ってて、『テレビを捨て街に出よ』的な、寺山修司臭を感じたのだが(苦笑
エログロが表現として携っているという情報だが、現在のレベルに置き比べるとかなり易しく演出されている 台詞では"四肢切断"等が語られていたが、もっと前に、邦画では残虐時代劇が上映されていたりして、シネフィルな人達からすれば甘い内容だったと思うし、自分もそこまで残虐性は感じないのは、私も、このヴィデオドロームに堕ちてしまっていることの証拠であろう 特にエロ漫画なんか観ていると、こんなレベルではなくトコトン非人間性を追求している作風も多く、あっという間にその世界に取り込まれてしまう 今作の主人公の気持が痛い程理解出来る 監督はその危険性を説いているのか、それとも、デビルマンのラストのように残虐性をトコトン解放する表象を突きつけているのか、兎に角、マグマのような心の叫びを一本の作品に仕上げたという、咆吼を感じてしまったのである 私は"滅びるならば全て灰になってしまえ派"なので、ラストの自死は取って付けたような収拾に些か寂しさを禁じ得ないが、映画的には正解なのかも知れない
つまりは、私は病院に行った方がいいという事を教えてくれた作品である(苦笑
【無茶苦茶グロイ、ぶっ飛びムービー。なんたってD・クローネンバーグ監督だからね。現代のエロ・グロ映像が自由に観れる事により、自己喪失していく人々の姿を予感したのだろうと推測していたと思われる作品。】
■暴力的で過激なポルノを売りとするテレビ局の社長・マックス。
ある日、彼は拷問や殺人シーンなどのサディスティックな映像を果てしなく繰り返す「ヴィデオドローム」という番組の存在を知る。
興味を持ったマックスは、番組の出所を探ろうとする。
◆感想
・マックスの恋人だろうか、ニッキーを演じるデボラ・ハリーとマックスのセックスシーンは今では何でもないが、40年前は可なりショッキングだったのではないかな。
序でに言えば、ニッキーは明らかにマゾヒストであり、映し出される黒い服を着た男達に壁に縛りつけられたビデオを見て”私も出演したい”等と言っている。
・現在では、流石にスナッフフィルムは違法だが、(だが、メキシコなど南米や変態の中では流通しているらしい(除く私))、それに近い映像が氾濫しているのはご存じの通りである。
・「ヴィデオドローム」に嵌ると脳腫瘍になり、幻覚を見る様になるという設定も、現代のスマホ中毒を暗喩しているのではないかな・・。
・ニッキーはいつの間にか”あちら側に逝っており”TVの中で激しく鞭打たれたり、有名な唇のドアップにマックスが呑み込まれそうになるシーンや、ニッキーの腹が開き(あれは、明かにヴァギナである。)そこにビデオを埋めたり、ピストルが出てきたり可なりグロイ。
ー D・クローネンバーグ監督だからね・・。ー
<今作は一度”全米40周年記念”で劇場で観たが、一部腑に落ちないシーンがあり配信で再鑑賞したが、この作品を論理的にレビューできる人は居るのだろうか?
私は、D・クローネンバーグ監督が将来のエロティシズム溢れる映像や殺人映像(勿論、スナッフフィルムではなくスラッシャーホラーである。
(だが、何故にスラッシャーホラーは一定の集客があるのか?)の反乱に呑み込まれ、自己喪失していく人々の姿を描いたのだろうと勝手に推測して、レビューとする。>
想像が楽しい
話だけでは理解しづらいですね。
色々とこうだろうな、と考えながら見るのが楽しい。
こう、訳わからないというよりはなんでこうなるんだ、というところか。
どこまでが妄想で現実なのか。
そんな話しかと思いきや、そういうわけでもなく。
結局ビデオドロームとは何なのか。主人公はどうなってしまったのか。新人間とは何なのか。
SF的に宇宙からやってきた何かなのか、それとも全てあくまで揶揄的表現で、洗脳チックな話なのか。
色々考えて楽しい作品だなと思いました。
本作の持つ先見性
本作が劇場公開されたのが1983年。奇しくも1988年に日本で当時世間を震撼させた女児連続殺人事件が起きている。
犯人の部屋には何千本ものビデオテープがあり、その中にはスナッフフィルムに似せた残酷描写で話題の「ギニーピッグ」のビデオもあった。
犯人が誘拐した被害者の死体を損壊した様から、かような残酷ビデオの影響がなにかと取りざたされて、当時学生仲間で鑑賞会をしたことがある。確かに本物かと見紛うばかりの残酷描写だったが、結構コミカルであっさりした内容で鑑賞後何ら悪影響を受けることもなかった。
しかし、心に闇を持つものが見れば真似しようとするものも出てくるかもしれない。だからこそ残酷描写が含まれた作品などは規制がかかったりするわけだが。
過激な映像ばかりを流して収益を上げている弱小ケーブルテレビの社長マックスは過激な映像作品を追い求めるあまり、ビデオドロームというビデオ作品に心を奪われる。そしていつしかそのビデオ映像のもつ魔力に次第に侵されてゆく。
ビデオドロームと呼ばれるそのビデオが発するシグナルは見る者の脳に腫瘍を生じさせ、その腫瘍が見せる幻覚が実体化し、ついには現実が幻覚に支配されるという。
ビデオドロームに侵されたマックスはそれを悪用して世界を支配しようとする組織に操られ殺人を重ねる。しかし、ビデオドロームの開発者の娘によって正気に返った彼は組織を壊滅させ、自らも命を絶つのだった。
ビデオドロームに毒されて新人類となったマックスにはこうするしか道はなかった。
当時オリジナルビデオの氾濫した時代、これら過激な映像で人の心がどんどん毒されていくのではないかという不安を映像化した、クローネンバーグの先見性あふれた作品だった。
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