配信開始日 2023年3月31日

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「オモシロい実話をよりオモシロく。」テトリス 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0オモシロい実話をよりオモシロく。

2023年4月30日
PCから投稿

ただゲームの販売権を獲得したいだけなのに、交渉相手が冷戦時代のソ連だったせいでスパイ映画のような攻防に巻き込まれていく……。実話がベースだが、クライマックスのカーチェイスなんかは完全にフィクションで、実際そうだとわかるように8ビット風のCGが混ざってきて虚構感を高めてもいる。映画全体が一種のRPGであり、ハリウッド的映画化のパロディにもなっている。主人公ヘンク・ロジャーズが日本のRPGの先駆者であった功績がほぼ省略されているのも、主人公はどん底から這い上がったほうがいいというハリウッド的作劇に沿うためなのだろう。ソ連崩壊と絡めたKGB周りのエピソードは「だって映画ですから」と言わんばかりでもはや潔い。ただし、どんな業界でも当てはまりそうな、魑魅魍魎が群がる黎明期のカオスはしっかりと映像に落とし込まれていて、荒唐無稽な中に真実が紛れ込んでくる感覚がエキサイティング。日本描写の雑さについては、ご愛嬌と取るか怠慢と取るかは、自分でもちょっと決めかねています。

村山章