「「高水準な映画で、アーサーの哀しみと絶望を体現した作品だが、前作の予想外の反響に火消し的なアンサーに走ったように見える」」ジョーカー フォリ・ア・ドゥ ミラーズさんの映画レビュー(感想・評価)
「高水準な映画で、アーサーの哀しみと絶望を体現した作品だが、前作の予想外の反響に火消し的なアンサーに走ったように見える」
前作のレビューに未だにいいねを頂けるので、やめようと思ったけどアンサー的な感想になりますが、初日に近い時期に見て、予想よりもダウナーで2億ドルかかった大作なのに、内向的なアート映画感が強くてオヤ?となり賛否が分かれているのも納得の作品。
良かった点は、やはりアーサーを演じるホアキン・フェニックスの全てが凄く印象に残り素晴らしい!これだけで、ご飯三杯はいけます!
MGMの『バンド・ワゴン』やフレンチミュージカルの名作『シェブールの雨傘』など往年の名作ミュージカルの曲や映像オマージュの演出も所々あり映像や音楽も上出来で重い雰囲気からすると一瞬夢心地になる。(そのあとの現実との対比はキツいけど)
このミュージカル部分で不満をあげるとやはり往年の本職ダンサー出身の俳優と比べるとダンスパフォーマンスが弱いと感じる。
このへんは『ラ・ラ・ランド』にも当てはまるけどそんなにつつく点ではないのと、本職のレディー・ガガはパフォーマンスをホアキンと兼ね合いで抑えいるらしいけど
悲惨な刑務所生活と中盤から始まる法廷場面は、ある種の怒りと哀しみ満ちた衝動と行動をした事で現実世界でも多くの模倣犯(日本も)を出してしまった前作(ジョーカーとゆう作品)を裁いている構造にも見えて、監督や製作側の決意なのか?火消しなのか?に迷うのと、何度もみた予告編や出回っているビジュアル写真で例の階段でノリノリなジョーカーとクイーンの姿を、みて今回は2倍は暴れてくれるのだろ!と期待した観客(ワシも)に目覚ませ!とばかりに冷や水をぶっかけてくれる。(ちなみにIMAX上映の入場者プレゼントは階段ノリノリのポスターでした)
ネタバレあり!
前作でジョーカーとして暴動の扇動や悪のカリスマとして多くの人々に支持を集めたアーサーが、自分を信奉する男に殺されるラストもまた自らの起こした事の因果応報を受ける部分で、物語としては非常に理にかなっている。
ハーレイ・“リー”・クインゼル役のレディー・ガガの存在感も良かったが、アーサーが彼女と結ばれる事で、わずかな救いと安堵得てからの絶望感も半端なく辛く、まるで誘惑者メフィスト状態だが、扱いにやや中途半端にも感じる。
自分が見落としているかも知れないが、前作にチラッと存在が提示されたバッドマンことブルース・ウェインの部分はスルーされていて、完全にDC映画との切り離しをされている。(もっともDC作品を製作してるワーナー映画自体が、またも過去の繋がりをリセットすると発表したので…)
全体的に良い面もあり映画としては、ビジュアルも優れており見応えはあるが、報われない男が『時計仕掛けのオレンジ』の様な奔放な暴力の爽快感や絶対悪と化して暴れるのを期待すると、ガッカリだが映画の出来事を超える現実世界の混乱振りを考えると仕方ない部分だと思う。
2019年に前作の『ジョーカー』が公開された後に、あの2021年アメリカ合衆国議会議事堂襲撃事件が起きて間違った観念や方向性をもつカリスマ的トリックスターが、扇動者になる事へのアンサーになっているのだろう。(なんせ民主主義を破壊する選挙否定と扇動や女性レイプで有罪なのに大統領候補になり支持を集めているヤカラがいる国なので、やむ得ないのかな。日本も裏金や脱税しても、のうのうとしてる政治家が、いて変わらんけど😭)
映画でとんでもなくお馬鹿な事や作劇としてのバイオレンスやアクションやちょっとしたお色気などは、映画の作り事として現実とは違う非日常を分けて楽しんでいきたいのに、真似する🎠🦌が後を立たないのはホントに残念です。
ちなみに前回のレビューは以下です。
『ジョーカー』2019年
「全てにおいて悲惨な仕打ちと人生を受けたコメディアン志望の男が、扇動者として悪の道に落ちる。
アーサー(のちのジョーカー)が富裕エリートのやな奴らを、地下鉄内でブッ殺すところは、奇妙な爽快感があり、大富豪のトーマス・ウェイン(バットマンのブルースの父)側もあまり同情出来ないので、貧困層のデモの中でシンボルと化すジョーカーが、悪では無く、今の極端な格差社会に報復を唱える解放者に見える確信犯的な作り。
ホアキン・フェニックスの演技も凄いが、個人的には、舞台となる70年代末風のニューヨークとシカゴを合わせた景観のゴッサムシティを捉えたリアリティーがあり荒廃した雰囲気あるとても美しい撮影が、全編に渡ってともかく素晴らしい。
製作された社会情勢や時代を振り返って語られる傑作誕生だと思う。
もし続編が作られるならブルース・ウェイン役は、製作もしているブラッドリー・クーパーでぜひ。」