「キャラの魅力が今ひとつ」ロード・オブ・ザ・リング ローハンの戦い おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
キャラの魅力が今ひとつ
本作は、名作小説を実写映画化したファンタジー大作「ロード・オブ・ザ・リング」3部作の前日譚を描くということですが、実は原作未読で映画3部作も未鑑賞です。しかし、前日譚を描くということなら、予備知識なしでも理解できるのではないかと思い、公開初日に鑑賞してきました。
ストーリーは、ローハンを治めるヘルム王のもとに現れた、野心を抱く辺境の領主フレカが、息子ウルフの嫁に王の娘ヘラを欲しいと迫るが、これを拒むヘルム王がフレカとの一騎打ちを持ちかけ、ウルフの眼前でフレカを殴り殺してしまい、復讐を誓うウルフは力を蓄えてローハンへの戦いを挑み、ヘルム王を追い詰めていく中で、ローハンの平和を守るべく、ヘラは幼馴染として仲良く育ったウルフと対峙していくというもの。
前日譚ということで、予想どおり予備情報なしでも、ストーリーは問題なく理解できてよかったです。ファンタジー作品にありがちな、主要国と周辺諸国とのパワーバランス、国内の王族まわりの人間関係、独特の設定などに混乱するかと思いきや、このあたりが意外にあっさりしていて助かります。というより、父の敵討ちに執念を燃やす男から国を守るために奮闘する姫の物語という極めてシンプルなストーリーに、ちょっと拍子抜けです。でも、おかげで作品世界に没入しやすかったです。
さて、ここから実写3部作にどのように繋がっていくのか、がぜん興味が湧いてきます。このあとの物語に続くのかもしれませんが、竪琴、花嫁衣装、大鷲、オークの集める指輪、最終盤で登場したガンダルフなど、意味ありげに描かれてはいるものの、その意味をつかみかねるものが多く、ちょっと気になります。時間を見つけて実写3部作も観てみたくなりました。
ただ、気になる点も多く、これが鑑賞後の満足感をやや下げています。まずは肝心のキャラクターです。背景こそ緻密に描かれ、世界観をうまく演出していると感じますが、その中で動くキャラの魅力は今ひとつです。一昔前のキャラデザは背景にマッチしてないし、たまに理解しがたい言動やムダな身振り手振りがあって、どうにも気になってしまいます。そもそもウルフの逆恨みとも思える心情に共感できないのは致命的だし、事態を悪化させているようなヘラの無鉄砲な行動も受け入れにくいです。
また、夜戦や悪天候の中での戦いが多く、見にくかったのももったいないです。他にも、凍てつく砦での籠城戦で、薪も食糧も少ないというのに、みんな薄着で元気に過ごしていたのも気になりましたし、ヘルム王にいたってはもはやラオウです。しかし、これを見れば確かに伝説として語りたくもなるのも頷けます。
吹替版のキャストは、市村正親さん、小芝風花さん、津田健次郎さん、山寺宏一さん、本田貴子さん、中村悠一さん、森川智之さんら。本職声優陣に囲まれる中、市村さんと小芝さんが全く引けを取らない演技で魅せているのがすばらしいです。
矢や象の角に火を灯し、わざわざ視認しやすくしてくれる夜目がきくハズの敵。
そして、娘が凍えるのを心配するノースリーブの王様。
元々の世界観も知らないため、リアリティラインの置きどころが分かりませんでした。