劇場公開日 2023年8月25日

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「やはり前作を超えられなかったチャイニーズ・テイストの続編」MEG ザ・モンスターズ2 アラカンさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0やはり前作を超えられなかったチャイニーズ・テイストの続編

2023年8月25日
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字幕版を鑑賞。古代の巨大サメ・メガロドンを扱った 2018 年の「MEG ザ・モンスター」の続編である。「モンスターズ」と複数形になっている理由は映画を見れば一目瞭然である。前作同様ハリウッドと 47 の共同制作となっていて、巨額の制作費を出して貰った代わりに脚本や出演者やロケ地が大幅に 47 寄りの作風になっていた。47 に乗っ取られたハリウッド映画という出来である。

前作で生き残ったメンバーはほとんどそのままの役で再出演していたので、各人物の関係性などを知りたければ前作を見ておく必要があるが、特に必須ではない。生き残ったはずなのに出演しなかったメンバーも何人かいた。最も奇妙だったのは、少女役のメイインが出ていたのに母親のスーインが出て来なかったことである。何か契約上のトラブルでもあったのだろうか。代わりに、前作では影も形もなかったメイインの叔父というのが登場した。

前作が結構真面目にサメ映画を作っていた感じだったのに、今作はかなりのおちゃらけ映画になっていた。脚本は前作と同じなのに、監督が交代したせいだろうか。47 趣味が濃厚になっていて、一昔前のカンフー映画のノリである。見たことのない恐竜や巨大タコなども登場していて、メガロドンの比重がかなり低くなっていたのが肩透かしだった。

サメ映画と言えば 1975 年の「ジョーズ」が火をつけて、その後夥しい続編や類似作が作られたが、元祖を超えるものはほとんどなかった。時代的に CG が使えず、機械仕掛けのサメで撮影する必要があった元祖は、サメがなかなか思う通りに動いてくれないので非常に苦労したことから、映画の前半はサメがほとんど姿を表さず、間接的にその存在を表すように工夫して恐ろしさを爆上げするという効果をもたらしたのは、流石にスピルバーグだと思わせられたものである。

1999 年の「ディープ・ブルー」になるとフル CG のサメが使えるようになってリアリティが格段に上がったが、サメの怖さを引き立てる新規性のある物語はなかなか現れず、どんどんサメ映画も下火になっていくのが避けられなかった。そこで登場したのが巨大古代ザメのメガロドンであったが、鯨より大きなサメが相手では元祖のような人間サイズの恐怖は描けず、ただただその暴力的な破壊力の描写に終始してしまった感が拭えない。

今作では、更に頼んでもいない新種の恐竜が登場して「ジュラシック・パーク」寄りの演出が増えていた。サメを見にきたのに、何故こんなものがいっぱい出て来るのかという疎外感を持て余すことになったのは否めない。やはり続編は前作を超えられないという定説は覆すのが難しいようである。1万メートルの深海の水圧を舐めているのでは?としか思えないシーンの数々も、この映画の評価を下げることにしか貢献していなかった。

ジェイソン・ステイサムは「トランスポーター」シリーズのイメージを色濃く持っていて、本シリーズで新境地が開拓できたかというとかなり疑問である。リー・ビンビンの不在を埋めることのできた相手役にも恵まれず、その点でも前作には及んでいなかったように思う。

演出はそもそも雰囲気がシリアスでないので、あまりハラハラドキドキしなかった。人間が襲われる場面も、瞬時しか見せてくれないのに画面が暗いので、誰がやられたのかはっきりしないことにイライラさせられた。エンディングの歌まで前作と同じで 47 感満載だったのには本当に辟易させられた。安易に 47 資本に頼った映画はこうなってしまうという見本のようなものである。
(映像5+脚本2+役者3+音楽3+演出2)×4= 60 点。

アラカン